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「刀」の森岡氏が男性化粧品会社を支援する理由

3/6 6:31 配信

東洋経済オンライン

日本を代表するマーケティング支援会社である「刀」が、いよいよ「さらなる成長のステージ」に向けて動き出した。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを再建後、2017年に刀を設立した森岡毅氏は、2020年には大和証券グループ本社と資本業務提携。マーケティングのみならず、直接出資もしながら企業の成長を支援する形を整えた。そして今回は世界展開を見据えたベンチャー企業に資本参加、マーケティング支援を行うという。引き続き森岡毅CEOにその真意を聞く。

前編「日本の企業はブランドの本質を知らなさすぎる」

■日本発の「世界一の化粧品ブランド」をともに創る

――刀は今回、男性向けスキンケア化粧品の企画・販売を行う「バルクオム」(野口卓也社長、2017年設立、バルクオムは直訳すれば「バルク(BULK)」が“容器の中身”、「オム(HOMME)」は“男性”の意)に出資しました。なぜ化粧品分野で、それも男性だったのでしょうか。

 もともとはバルクオムの経営陣からお声がけをいただいたのがきっかけです。刀としては「通常のマーケティングコンサルティングサービス」「資本参加も含めたマーケティング支援」という2つの選択肢がありました。

 バルクオムの多くの方と意見交換をさせていただいた結果、最終的に資本参加の形をとることにしたのです。資本参加の理由は2つあります。

 第1の理由は、バルクオムという企業や、この化粧品事業に大きな可能性を感じ、この企業を大きくすることが、日本のためになると考えたからです。

 同社の経営陣は、「世界一になれるビジネスは何か」、という観点から男性用スキンケア商品のジャンルに進出、本気で「世界ナンバーワンのブランドを創る」と信じて戦っています。

 実は、「日本発の世界ナンバーワンブランド」は、それほど多くありません。少なくとも化粧品の世界では見当たりません。しかも、経営陣から「最初から世界展開を視野に入れて、若い世代を中心とする男性のスキンケアに着眼した」とお聞きしたとき、とても大きな可能性を感じたのです。

 世界一のブランドを作ろうとしたら、最初から世界制覇を念頭においたブランドの設計が必要になります。

 たとえばA、B、C、Dという4つの国があるとしましょう。この4つの国における消費者の「本能、欲求のレベル」は、実はほとんど同じなのです。もちろん、その本能や欲求を満たす方法は、各国の文化の違いによって差異が生じるのですが、根幹にある価値はほぼ同じです。これを最初から理解して「ブランド設計」をできるかどうかで、世界制覇の戦略を描けるかどうかが決まります。

 日本企業の場合、このケースで行くと、ほとんどが「それぞれの国に受け入れられそうな4つの異なる戦略」を描こうとします。最初から設計が間違っているのです。そのため、一つ一つの国を攻略するのに時間がかかりすぎ、失敗に終わるという現実があります。

 しかし、バルクオムは最初から世界制覇を狙ってブランド展開をしようとしています。たとえば世界の多くの人がシャネルというブランドへの憧れによってフランスという国に興味を持つ、あるいはフェラーリというブランド好きが高じてイタリアが大好きになるように、バルクオムを通じて世界中の人々が日本に興味を持つようになったら、それは日本のためにとても良いことだと考えたのです。

■戦略投資家として「世界一ブランド」を実現

 もうひとつの理由は、刀がこれまで培ってきたブランドの設計能力に関するノウハウを存分に発揮できると考えたからです。

 先述のように、世界を制覇できるかどうかはブランドの設計能力で決まります。企業の成長ステージでは、売上高でみると50億円、100億円、300億円、500億円、1000億円など多くの段階で壁にぶつかりますが、こうした成長の壁を乗り越えられるようにするには、結局「ブランドと組織をどう設計するか」に集約されます。今、刀には約50名の社員がいますが、そのなかには世界中で化粧品を売ってきた人間が大勢います。そのノウハウが、きっとバルクオムが世界ナンバーワンブランドになるうえで役立つと思ったのです。

 何よりも、刀には「バルクオムと同じ夢を追いかけたい。そのためにいろいろな形で応援したい」という想いが強くありました。夢をともに実現するために、今回は資本参加という形でパートナーシップを結びました。バルクオムはベンチャー企業ですし、今は私たちの決して安くはないフィー(報酬)を払い続けられるようなステージにはありません。その意味でも、資本参加という方法が最良の選択だと思っています。

 ――よく「ベンチャーキャピタルには金はあるけどノウハウがない」、一方でコンサルタントも「戦略は描くものの、どう実現するかとなると心許ない」と言われます。

 これは私自身が刀というベンチャーを起業した経験からも思うことなのですが、日本のベンチャービジネスにとって「何が根源的に足りていないのか」というと、お金ではありません。

 お金の出し手はいくらでもいるのですが、肝心の「ビジネスを成功に導くためのノウハウの出し手」が圧倒的に足りていないのです。

 起業した人たちは皆、明日どうなるかも分からない状況のなかで、本当にヒリヒリした危機感を持って経営をしています。だからこそ、本当に困った局面にぶつかった時、一緒に解決方法を考えてくれる人を求めているのです。

 最近は、注目されているビジネスで成功して、数十億円、数百億円のお金を手にしたような人が「エンジェル」を名乗って、ベンチャー企業に出資したりするケースをよく目にします。

■価値を継続的に生み出すためのノウハウと資金を支援

 確かに、それだけのお金を手にした才覚は凄いのかも知れません。しかし事業を継続させ、長期的に企業を成長させていく能力やノウハウを本当に持っているのかどうか、よくわからない人も少なくありません。まさに自称エンジェルです。

 しかし「お金だけ出して、出資先の企業の上場という『出口』だけを待つ、というのでは、結局、自分が儲けることしか考えていないのも同然ですし、そう簡単にうまくいきません。応援するというのは、そのベンチャー企業が価値を生み出せるように応援する。そのために自分たちが持っているノウハウ、能力をすべて移植する。こうして会社が成長したら、結果的に儲かることもあるでしょう。でも、儲けることが目的なのではなく、あくまでも結果です。

 事業を興し、続けていくうえで大事なのは「価値を生み出すことへの強い想い」です。その想いに人が集まるのです。価値を生み出すための強い想いがあり、それを実現させたいという気持ちが多くのアイデアを生み出します。

 そのノウハウを本気で提供していきたいというのが、今の私たち刀の想いです。本当に日本のためになる、未来のためになる事業を、ノウハウと資金の両面で応援していきたい。ベンチャービジネスは、良い時もあれば悪い時もあります。そのいずれの時にも、ブレることなく、哲学に則って、自ら掲げた「日本をマーケティングとエンターテイメントで元気にしたい」という大義に、どこまで近づけるか。そこを理解して、ノウハウと資金の両面で応援できる主体になりたいと思います。

 (取材協力:鈴木雅光)

前編「日本の企業はブランドの本質を知らなさすぎる」

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最終更新:3/21(日) 15:57

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