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広瀬アリス「すずの姉」というレッテルの大誤解

3/6 13:01 配信

東洋経済オンライン

 ネット上に「このドラマを見た夫が優しくなった」「ウチの妻が『その気持ちわかるな~』と妙に共感して見ている」という声が上がるなど既婚男女の話題となっている「知ってるワイフ」(フジテレビ系)。そんな声を生み出しているのは、ヒロインの澪を演じる広瀬アリスさんの熱演です。

 「知ってるワイフ」は、妻・澪のモンスター化に悩まされた剣崎元春(大倉忠義)が、あるきっかけで過去にタイムスリップ。妻を学生時代に好意を寄せていた江川沙也佳(瀧本美織)に入れ替えて人生をやり直そうとするが……という筋書きのファンタジー作。荒唐無稽な設定と思いきや、ネット上には「多くの夫婦に当てはまる物語」「夫婦の本質を突いている」などとリアリティを感じる人の声が続出しています。

 広瀬アリスさんは、まずすべてのはじまりとなる家事・育児・パートに励むモンスター妻を演じ、次に、元春がタイムスリップした世界や回想シーンで初恋にときめく女子高生・女子大生を演じ、さらに、元春が現代に戻ってきてからは同じ銀行で生き生きと働くキャリアウーマンを演じています。すごいのは広瀬アリスさんが、澪という女性の3パターンを同時に演じていること。「夫婦はパートナー次第で1人の人間をこれほど変えてしまう」ことを視聴者に感じさせる難しい役なのです。

■1人の女性を繊細に演じ分ける

 では、どれくらい難しい役なのか?  相手役の元春はタイムスリップ前後もすべて同じ人生を生きていてキャラクターも変わっていないため、澪ほど難役とは言いづらいところがあります。また、今期ドラマの中では「天国と地獄~サイコな2人~」(TBS系)の綾瀬はるかさんがサイコパス男性と入れ替わる熱血刑事の役で称賛を集めていますが、実は「真逆のことをすればいい」「表情や仕草などで魅了しやすい」というシンプルな役であり、1人の女性を繊細に演じ分ける澪のほうが難しいでしょう。

 そんな熱演を受けて、「広瀬アリス、“オールラウンダー”として見せつける実力 ブレイク続き『すずの姉』イメージから脱却」というORICON NEWSの記事が配信され、Yahoo! トピックスにピックアップされたことで、多くの人々の目にふれました。

 しかし、広瀬アリスさんの足取りをたどっていくと、実は「『すずの姉』イメージからの脱却」は明らかにミスリード。「すずの姉」というフレーズは今回に限らずこれまで何度か報じられていますが、少なくとも業界内やファンの間では「いやいや、それは違うだろう」という声が多いのです。

■15歳での大抜擢と学園ドラマ総なめ

 広瀬アリスさんは1994年生まれで現在26歳。2009年に「ミスセブンティーン」のグランプリに輝き、『Seventeen』専属モデルになりました。ちなみに妹の広瀬すずさんは2012年に「ミスセブンティーン」のグランプリに輝きましたが、モデルとしてはアリスさんが先行して活動し、人気を得ていたのです。

 2008年に映画「死にぞこないの青」などで女優デビュー。2010年には昼ドラマ「明日の光をつかめ」(東海テレビ・フジテレビ系)で15歳にして史上最年少主演を務め、当時は快挙として「あの子は誰?」と話題を集めました。

 翌2011年に月9ドラマ「大切なことはすべて君が教えてくれた」(フジテレビ系)、2012年に金曜ドラマ「黒の女教師」(TBS系)、2013年に「35歳の高校生」(日本テレビ系)と、各芸能事務所のスター候補が集う各局の学園ドラマに出演。2014年の日曜劇場「ルーズヴェルト・ゲーム」(TBS系)ではOL、ドラマ24「玉川区役所 OF THE DEAD」(テレビ東京系)では区役所員のヒロインと、10代で早くも社会人役にステップアップしました。

 さらに2015年には「妄想彼女」(フジテレビ系)で主演、「釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助~」(テレビ東京系)でヒロイン、2017年には朝ドラ「わろてんか」(NHK)で事実上の女優2番手、2018年には「探偵が早すぎる」(読売テレビ・日本テレビ系)の主演と「ハラスメントゲーム」(テレビ東京系)のヒロイン。

 2019年には再び月9ドラマ「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」(フジテレビ系)、2020年には「七人の秘書」(テレビ朝日系)。さらにこの間、20作超の映画に出演するなど、ずっとトップシーンで活躍し続けてきたのです。

 一方、広瀬すずさんは2013年の「幽かな彼女」(関西テレビ・フジテレビ系)で女優デビューし、初主演は2015年の「学校のカイダン」(日本テレビ系)でした。デビューも初主演も広瀬アリスさんのほうが約5年も早く、それ以外でもバラエティやCM、さらに「全国高等学校サッカー選手権」の応援マネージャーを広瀬アリスさんが第89回大会(2010~2011年)、広瀬すずさんが第93回大会(2014~2015年)を務めたことも含め、「姉の背中を妹が追う」という形が続いていたのです。

 しかも広瀬アリスさんは休みなくトップシーンで活躍し続けているうえに、演じるキャラクターの幅も広いため、少なくとも業界内では「すずの姉」というイメージはありませんでした。CM出演こそ広瀬すずさんのほうが多いですが、ドラマやバラエティの出演数は広瀬アリスさんのほうが多いなど、露出数全体では姉が上位。姉妹での出演時に「妹のバーター」などと書くメディアもありましたが、「『すずの姉』だから起用した」というプロデューサーはほぼおらず、「『すずの姉』だから出演作を見る」という視聴者もかなり少ないでしょう。

 「すずの姉」は一部のメディアが勝手に作り出したイメージにすぎず、それに他のメディアが乗る形で繰り返し報じられたため、一定以上の印象がついてしまっただけなのです。

 そして広瀬アリスさん自身も、そんなムードに反発するのではなく、まるで受け入れたかのような明るい姿を見せ、極度の漫画好きや、愛犬「ぱーぷー」と「ぷーぴー」への溺愛を熱く語るなどのリップサービスを続けてきました。文句を言わず、妹とはキャラクターの異なる「すずの姉」という役割をしっかり務めていたのです。

■広瀬姉妹のスポークスマンとして機能

 2015年6月、広瀬すずさんはゲスト出演した「VS嵐」「とんねるずのみなさんのおかげでした」(ともにフジテレビ系)での発言に批判が殺到。メディアも「失言」報道を繰り返したため、ツイッター上で謝罪する事態に追い込まれてしまいました。

 妹がそんな逆境に立たされているとき、広瀬アリスさんは何をしていたのか。一緒に謝るのではなく、むしろ矢面に立つようにメディア出演を続けていました。そこで姉妹のほほえましいエピソードを楽しそうに語るなど、妹のイメージ回復をサポートする形を採っていたのです。

 今思えば、あのころの広瀬アリスさんは広瀬姉妹のスポークスマンのようであり、メディアと世間の人々に2人の日常を伝えることで親近感を抱かせていました。ここでは「すずの姉」を自覚した振る舞いで姉妹の存在感を保ち、現在の活躍につなげたと言えるかもしれません。

 また、今月3日、広瀬アリスさんはツイッターに、彼女の人柄を表す象徴的なフレーズをつづっていました。あるフォロワーから「(エゴサーチをよくするという広瀬アリスさんに)嫌なこと書かれてたら落ち込まない? ?」と尋ねられて、「全然かなぁ。私の悪いところを見つけるために私が出てる番組をちゃんとチェックしたり私の名前をわざわざエゴサしたり私のアカウント観に来たり私の悪口言うためにわざわざアカウント作ったりしてさ。私のことがもう気になって仕方ないんだなーって思う(嬉し泣きの絵文字)」と返していたのです。

■比べたがる人々をスルーできる境地に

 ある番組では、「仕事では明るく振る舞えるけど、1人になると涙が止まらないときがある」と話していたことから、すべてが本音ではなく、そう思わざるをえないところがあるのかもしれません。

 ただそれでも、「すずの姉」というレッテルを貼る人々への対応と同じように、懐の深さを見せていることは間違いないでしょう。そんな懐の深さを持つ広瀬アリスさんだからこそ、「知ってるワイフ」で2児を育てるモンスター妻、女子高生や女子大生、キャリアウーマンのそれぞれに寄り添った演技ができるのです。

 たとえば、元春に向けた鬼の形相や怒鳴り声はワンオペに苦しむ既婚女性たち、目を輝かせて好きな人を追いかける姿は恋する未婚女性たちからの共感を集めていますが、これはさまざまな女性の気持ちを代弁できる懐の深さを持った女優だからでしょう。

 広瀬姉妹はツイッター上でも仲良くコメントを交わしていますが、「広瀬アリスさんがボケて、広瀬すずさんがツッコミを入れる」というケースも多く、フォロワーたちを楽しませています。どちらも、それぞれの姉と妹というだけの振る舞いであり、すでに2人は比べて勝ち負けや優劣をつけたがる人々の声をスルーできる境地に入っているのではないでしょうか。

東洋経済オンライン

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最終更新:3/6(土) 13:01

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