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リビングハウスが家具を売りまくる北欧流の技

3/6 8:01 配信

東洋経済オンライン

モノであふれかえる日本。新たにモノを買ってもらうためには、消費者自身が気づいていない潜在的な需要を掘り起こしていかなければならない。
NHK大阪拠点放送局が制作する「ルソンの壺」は3月7日の最新放送回(関西地域で7時45分~8時25分放送)において「空間演出に勝機あり」をテーマに、家具小売りチェーン「リビングハウス」(設立1942年、大阪府大阪市)と、和歌山発のハードモビリティベンチャー「グラフィット」(設立2017年、和歌山県和歌山市)を取り上げた。そのうち経済ジャーナリストの三神万里子氏と狩野史長アナウンサーによる、リビングハウスの北村甲介社長へのインタビューを、番組本編に収まりきれなかった部分も含めてお送りする。

リビングハウス(LIVING HOUSE)は、家具の町、大阪市西区南堀江に本社を置く老舗。現社長の北村甲介氏は3代目に当たる。家具職人だった初代社長が、工場の軒先でいすやソファの販売を始めたのが創業のきっかけだ。現在は関西に限らず、北は札幌から南は鹿児島まで28店舗を構え、それもイオンモールやららぽーとなどの大型商業施設への出店を得意としている点にも特徴がある。

■低迷する家具市場で売り上げを3倍に伸ばす

 狩野 史長(以下、狩野):日本では1972年に婚姻数が109万組のピークをつけた後、ほぼ右肩下がりに減少し、今は年間60万組を下回っています(総務省調べ)。新築住宅着工戸数も1996年の163万戸がピークで、今や年間100万戸を割り込んでいます(国土交通省調べ)。

 この影響を大きく受けている業態の1つが家具です。家具小売業の商品販売額は1991年に2兆7000億円でしたが、2016年には1兆1000億円と半分以下に下がり、家具小売店は次々と廃業を迫られています(出典:商業統計調査、経済センサス活動調査)。

 三神 万里子(以下、三神):ニトリの躍進と大塚家具の凋落が象徴するように、日本の家具は「高品質で高価格」と「品質がそこそこで低価格」な商品に需要が二極化しています。この間の価格帯の商品を扱う家具メーカーや家具小売店が経営的に不利な時代になっています。

 狩野:にもかかわらず、高価格と低価格の間の空白地帯ともいえる価格帯に照準を絞った商品を展開しているリビングハウスは、10年前と比べて売り上げを3倍に伸ばしています。

 北村 甲介(以下、北村):われわれのビジネスモデルの特徴として、比較的手が届きやすい価格帯の絵画をはじめとするアートから小物まで、家具だけでなく部屋全体をコーディネートして販売しているということがあります。

 服のコーディネート次第でおしゃれ度が上がるように、家具も組み合わせ次第で部屋のおしゃれ度がぐんと上がります。もちろん家具1品1品がおしゃれかどうかも関係ありますが、1品だけよくても仕方がないのです。アート、間接照明などを使い、壁面をいかに生かすかということが重要です。

 例えば部屋を広く見せるためには家具を低くしてしまいがちですが、実はそうではありません。高い面もうまく生かしてコーディネートすることで、部屋が広く見えるのです。

 三神:お客さんにどう訴求するのですか? 

 北村:コーディネート前後の写真を店頭でお見せしています。わかりやすく小物類やラグ、アートなどの重要性をお伝えしています。

■モノ売りではなく“コト売り”

 三神:部屋のコーディネートが好きな人は手間も含めて楽しんでやっているでしょうが、それが苦手な人や忙しい人にはなかなか難しいのが実情です。時間を短縮しながら空間の価値を最大化するモノプラスアルファを売っているのですね。

 北村:われわれは、モノ売りではなく“コト売り”と言っています。お客様は、おしゃれなテーブルやソファそのものが欲しいのではなく、「家の中をおしゃれにして、快適にしたい」という目的を持っています。家具やインテリアはあくまでもツール。丁寧なヒアリングを通じて、お客様の理想とする部屋のイメージ像と、われわれが提案するイメージ像を合致させる提案を提供します。

 三神:こうしたビジネスモデルの構築には、北村社長が家業を継ぐ前に、北欧系の家具メーカーに勤め、購入したお客様の元に訪問を重ねた経験が生きているそうですね。

 北村:私は2トントラックを運転して、家具の配送と組み立ての仕事をお客様のご自宅で行う業務に従事していました。2年間で約1000軒の家を訪問したことが私のキャリアのスタートです。

 家具という商品の特長として、お客様が商品をお店で購入したときではなく、自宅に届いたタイミングが喜びのピークになります。配送の仕事はその瞬間に立ち会えます。その点でとてもやりがいのある仕事だと感じました。

 三神:欧州の現地視察も出張ベースでなさったとのことですが、日本との違いは? 

 北村:一般家庭でも、日本で言えばモデルルームのようなお部屋ばかりでした。1品1品がおしゃれというよりも、全体の調和や色使いのコーディネートがきっちりされている家が多い。所狭しとオブジェや花瓶、アートなどが飾られてあるんです。

 一方、日本の家の壁は真っ白。アートや小物などを飾っているご家庭は少ない印象があります。私はそこに日本と大きな違いを感じ、これはビジネスチャンスだと思いました。

 三神:日本では、壁に飾る絵画は高価だったり、壁に傷がつくのを気にしたりしますね。小物をたくさん置くと散らかると考え、茶室の文化背景もあってミニマリズムに走る傾向もあります。

 北村:欧州の一般家庭に飾られている絵画は高価ではなく、リーズナブルなものが多く、その日の気分によって飾る絵画を変えるような人も多いです。欧州の人たちは家族と過ごす時間が人生におけるいちばんの優先順位であり、生活の中心が家。北欧は日照時間が短く、家で過ごす時間が長いという事情もあります。そのため、インテリア文化が栄え、快適な家づくりをするのです。

 日本人には家で過ごす時間が短いという民族性がありますが、新型コロナウイルスによって家で過ごす時間が増え、家の中のことに興味を持つ人が増えてきているのを感じています。これから大きな転換点になっていくと考えています。

■“需要創造型”の戦略

 狩野:リビングハウスは全国に28店舗を展開していますが、このうちおよそ7割が大型商業施設内の出店ですね。

 北村:買い替えや買い足し需要を創造する“需要創造型”の戦略をとっています。ロードサイド型の店舗は、ネットなどで調べてから来店される目的性の高い方が多いですが、商業施設では、家具の購入予定がない人でもふらっとお店に入っていただけるチャンスがあります。

 お店に入った際に「すてきな空間だな」と感じてもらい「うちのソファ、そういえばワインこぼして買い替えたいと思っていたな」というように思ってもらって、販売につなげていくスタイルです。

 三神:自社で商品開発もされているそうですね。もともとメーカーという強みもありそうです。

 北村:お客様のニーズが多い場合、その声を反映した新製品を開発します。例えば体型が違うご夫婦から「旦那さんは深いソファを所望しているけど、奥さんには深すぎて足が着かない」という声を聞いた際は、使用する人の体形に合うように背もたれを調整できるソファを作りました。

■ネットで店舗を見て回れる“バーチャル店舗”

 狩野:コロナウイルスの影響はありましたか。

 北村:緊急事態宣言が発令された昨年4~5月はリアル店舗を営業できなかったこともあり、前年同月比でみて売り上げが60%ほど落ちました。そこで、360度カメラを使って店内を撮影して、インターネットで店舗を見て回れるシステム、バーチャル店舗を導入しました。

 三神:小売業ではネット販売の重要性も増しています。現在、リビングハウスのリアルとネットの売り上げ比率は? 

 北村:リアルが約9割、ネットが約1割といった感じです。コロナ禍以前のネット販売は全体の0.5%ほどでしたが、コロナ後は2倍になりました。さらにネット販売が増えてくるとみています。

 三神:家具の場合、低価格帯な商品ならば、実物を見なくても座り心地や手触りなどを妥協してネットで買えますが、高額な商品ならばリアル店舗に行って実物を確かめたいというニーズがどうしてもあるのではないかと思います。

 北村:ネットとリアル店を組み合わせた接客も可能ですし、一度、購入してもらえば、われわれの製品の品質を理解してもらえます。その信用があれば、ネットでの追加購入は比較的していただきやすいと考えます。

 三神:低価格帯の商品を武器にする家具小売りチェーンでは、店舗を展示場のような空間にして、在庫を置かずに倉庫から直接配送し、組み立ては顧客自身が行うという販売手法が多くなりました。

 北村:われわれもお客様への配送は外部の会社に委託しているため、コーディネートを提案したスタッフが、自分が提案したモノがどうなったかを確認できませんでした。ところが、ネットを活用することで、スタッフが提案した家具や小物類などのコーディネートがお客様の部屋で実際にどうなったかを確認できるようになり、答え合わせのほか追加の提案もできるようになりました。

 三神:家具店は天井が高く敷地も広いため、自宅とは空間があまりに違います。選ぶ側から見ても、自宅の空間内にいながらPCの画面上に色やデザインを映し、アドバイスを得ながら商品を選ぶことは実は合理的なのかもしれません。

■地方とのつながりを築く

 狩野:今後の展望は? 

 北村:ネット接客に需要があると確信したので、今後は地方を攻めていきたいと考えています。ハウスメーカーや地場の工務店とタッグを組んで、その地域のモデルハウスや家具インテリアのコーディネートをさせていただきたいと考えています。

 三神:家具店やインテリア店さんがハウスメーカーや工務店などとコラボレーションするのは珍しいことなのでしょうか? 

 北村:都市部ではありますが、地方ではあまり例がないですね。今、地方にお住まいのお客様もインターネットで、都会の情報やおしゃれなインテリアの情報はいくらでも得られますが、実際は、自宅の近くにそうした商品を売っているお店がないのが実情です。そこが狙い目です。

 三神:その地域の特性に合った住宅を工務店さんがモデルハウスにされるので、独自に店舗をつくるよりもつくりやすいかもしれないですね。店舗という空間に対する追加投資が不要なまま、工務店側にも家具店側にも顧客にもメリットがある、新しいモデルです。

 北村:はい。その地域の特性やニーズを聞いて、自社の製品やスキルを使っておしゃれなモデルハウスをつくらせていただく。地方在住の方に向けて“コト”を売るというコーディネート提案を親身にさせていただきたいです。

 (構成:二宮 未央/ライター、コラムニスト)

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最終更新:3/19(金) 15:26

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