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今のアメリカ株はバブルでなく大崩壊もない

3/5 6:01 配信

東洋経済オンライン

今のアメリカの株式市場はバブルなのか。長期金利の上昇やインフレ期待の上昇が株価の大暴落を招くといった事態が今年起きるのか。世界の債券・金利や債務・クレジット市場に詳しく、長年、バブルの形成・崩壊をウォッチしてきた、みずほ証券の大橋英敏チーフクレジットストラテジストに話を聞いた。

■長期金利の上昇にまだ持続力がない

 ――アメリカの長期金利上昇で先週は株価が動揺しました。

 昨年から、2021年にはアメリカでインフレ期待が高まり、長期金利が上昇し、さらにFRB(連邦準備制度理事会)が利上げに踏み切るのではないかという観測が出てくるのだろうと予想はしていた。しかし、私自身はFRBが利上げするような展開になるとは見ていない。

 そして、まだアメリカの長期金利の上昇にも持続力がない。インフレ関連の指標を見ても、実際のCPI(消費者物価指数)上昇率は1%台半ばと低いし、機関投資家の多くやFRBのパウエル議長も見ている5年先5年物フォワードレート(5年後から5年間のインフレ予想を表す)は2%程度で落ち着いている。BEI(ブレークイーブンインフレ率、物価連動債の価格が示すインフレ率)は跳ねたが、BEIの市場は外国人の参加者が少なく長期保有の機関投資家ばかりなので、売買が少なく少しの売り買いで動きやすい。その後は、BEIも5年先5年物フォワードレートも下がってきた。

 また、短期金利も低い。これが重要だ。つまり誰も利上げが行われるとは予想していない。長期金利の上昇は株のバリュエーションの下落をもたらすが、長期金利が1.2%から1.6%になったぐらいでは、株価は10%ほど下がれば十分でそれ以上のことは起きない。

 ――今のアメリカ株はバブルだという人もいますが、どう見ていますか。

 バブルとは見ていない。バブルだと主張する人がよく引き合いに出すのはいわゆるバフェット指数で、株価の時価総額の合計がアメリカの名目GDP(国内総生産)の何倍買われているか、というものだ。しかし、長く低インフレが続いたので、過去と今とでは金融政策や貨幣の価値が違っている。

 また、アメリカの主要銘柄も昔とは異なる。今の株価を牽引している銘柄は、世界中から富を集めてくるプラットフォームのビジネスだ。アメリカ1国のGDP対比の時価総額が過去よりも現在のほうが高いのでバブルだという主張には、無理がある。

 ただ、今のアメリカの株価がいくつかの条件の下で正当化されているのは事実だ。その条件が崩れたら株価は下がる。

 株価を支える条件とは、第1に金融緩和の継続、第2に財政拡張政策の継続、第3に低いインフレ率、第4に新型コロナは1年以内に収束するということ。この4つはいずれもまだ崩れていない。足元では3つめのインフレが気になるね、という程度だ。

■強い経済、高いインフレ率は長続きはしない

 確かに、アメリカにおいてインフレの芽はいっぱいある。これも主なものは4つ。

 1つ目は、コモディティ価格が上がっていること。これはペントアップ需要への期待に加えて脱炭素・電化をテーマにそれに必要な銅や銀に投機資金が回っているためだ。これが生産者物価に跳ね返っているので、いずれCPIも上がるのではないか、という予想につながる。

 2つ目はアメリカの財政拡張。1.9兆ドルもの巨額支出を決め、1人1400ドルの給付金という前回の2倍のばらまきを実施する。日本人は経験上、財政拡張したって簡単にインフレになるわけではないと思っているけれども、アメリカではなると思っている人も多い。

 3つ目は金融拡張がしばらく続くこと。4つ目はペントアップ需要が膨らむこと。アメリカでは新型コロナの被害が大きく怖がっていたので、ワクチンが普及してアフターコロナとなったら、人々が解放されてものすごく浮かれた経済になるのはまず間違いない。2021年半ばから成長率、インフレ率は高まる。

 しかし、これだけ多くのインフレ要因があっても、かなり強い経済と高いインフレ率が長く続くのかといえば、そうはならない。アフターコロナで潜在成長率が下がるのはほぼ間違いない。アメリカといえども中立金利はコロナ前の2.5~3%といわれていた状態には戻らず、1%台になるとみている。

 なぜなら、DX化が進められるとますますデフレ圧力が働く。例えば、コロナ禍の中での在宅勤務では経費削減効果が明らかになったので、アフターコロナでも在宅勤務は定着するだろう。DX化や環境重視の流れは既存の産業には逆風となる。

 だから、景気が回復しても雇用はなかなか回復しないし、いわゆるインフレ、つまりCPIの前年比が継続的に上昇していくということも考えにくい。そうした状況ではFRBの金融緩和政策も続く。2020年に原油価格が大きく下がったりして発射台が低いので、テクニカルな反動で前年比プラス2.4%とか2.5%の物価上昇率は数四半期続く。そのことはすでにマーケットも織り込んでいる。しかし、インフレ率の上昇は1年ぐらいしか続かないだろう。

 まとめると、株価を押し上げている4つの条件はどれもまだ崩れていないし、条件が崩れそうで株価に実体がないとは思えない。バリュエーションが高いともいわれるが、説明がつかないほどの高さでもない。

 ――そうすると、景気回復のシナリオが実現に向かっている間、まだ実現しない間は、多少の調整はあっても、「落ちてくるナイフ」といわれるような暴落はないということですね。

 そう思う。実際、押し目を皆が狙っている。低金利をはじめとする4つの条件が崩れないと思っているからだ。

 ――では、崩れるのはいつなのか、と考えると? 

 やはり、本当のアフターコロナになってからだと思う。

■ソブリン格下げの復活に要注意

 ――潜在成長率が下がる、IT革命でデフレ圧力がかかるとなると、金融緩和政策は続きそうですね。2022年以降のアフターコロナでは何が株価の暴落を招く要因になりうるでしょうか。

 財政の悪化によるソブリン格下げが考えられる。それでも、基軸通貨国であるアメリカはやはり強いと思われる。先進国であるとすれば、ドイツの首相がメルケルでなくなった後の欧州には注目しておいたほうがいい。

 メルケルが指導力を発揮していた欧州では緊縮財政策を取っていたので、経済成長では弱かった。しかし、EU(欧州連合)の結束は守られた。ポストメルケルの欧州ではコロナ後の復興にお金を使おう、緊縮をやめようということになっている。これは短期的には決して悪いことではなく、景気の回復が期待され、通貨ユーロが強くなってきた。

 しかし一方で、メルケルなき欧州で遠心力が働くと、どうなるか。政治的に左派が強くなって、EUの結束が崩れてくるとまた債務危機が再燃するのではないか。格付け機関は今はコロナ禍であることに忖度してソブリン(国、政府の信用力)の格下げをしないでいる。しかし、格付け機関は実際ははらはらしていると思う。新興国も含めてアフターコロナになれば問題になってくる。

 ――今回のコロナ危機とアフターコロナの株式市場におけるストーリーをまとめていただけますか。

 まず、昨年の3月に株価が下がった理由は何だったかを思い出してください。リーマンショックは金融危機であり、今回は金融危機ではないが、株価の下がり方は似ていた。リーマンショックは金融機関のバランスシートに不良債権が積み上がったという懸念から、皆が金融機関と取引をしたがらなくなり、流動性危機が起きた。

 一方、コロナ危機の去年の3月は金融機関に大きな問題はなかったが、皆がキャッシュに殺到した。戦争が始まるときと同じで現金を手元に確保しておきたい。企業も現金の確保に走った。金もビットコインも国債も売られまくって、過度に価格が下落した。流動性の枯渇という点で、リーマンショックと同じことが起きた。

 コロナで業績の悪化が予想されたから株価が下がったという人もいますが、そうではないでしょう。どれだけ業績が下がるか、そんな織り込みはその時点では誰もできていなかった。株式市場は将来を見ている。極端にいえば、業績だけならいずれは回復するから下がる理由がない。3割も下がったのは流動性が枯渇したからで、一気に株価が戻ったのは中央銀行が素早く流動性をジャブジャブに供給したから。そして、今後もジャブジャブを続けますよと言っている。

■ここからはファンダメンタルズをしっかり見る

 2021年に入ってここから先は、本気でファンダメンタルズを見に行かないといけない。今の業績からすると株価は乖離している。でも、2年後のイメージを見に行ったらどうですか?  乖離はしていない。先にお話しした4つの株高の条件が崩れない。今回の長期金利の上昇もそこを見ている。では、1.2%の長期金利がたかだか1.5~1.6%になるのはインフレになるからですか?  それも、ノーでしょう。それで財政拡張ができなくなりますか?  それもないでしょう。現実に1.9兆ドルを出そうとしている。

 では2年後になったらどうでしょうか。景気が十分に回復していたら、もう財政拡張しなくてよいという話になっているかもしれないし、そうではないかもしれない。財政の懸念はそのときの経済のパフォーマンス次第ということになる。

 つまり、今の今で大きく株価が下がる理由は考えられない。むしろ、通貨の価値が下がっているから、現金で持っていたら負ける。だから下がったら買いが入る。大きな下げがあっても、暴落は一日で終わるみたいな状況だ。ビットコインを買うこともないけれど、株を買っておけばいいんじゃないか、という結論になる。

■FRBはまさかの追加緩和も!? 

 ――では引き続き、4条件と金利は注目ですね。投資家への追加のアドバイスがありますか。

 1つあります。これまで実質金利が水面下で下がっているから株は買いという話だった。名目金利から期待インフレ率を差し引いたものが実質金利なので、名目の長期金利が上がってもインフレ期待がそれ以上に高まると実質金利が下がる。これは景気の順調な回復を反映しているということになる。ところが、ここのところ、インフレ期待が上昇した後、下がってきた。つまり実質金利が少し上昇した。

 ちょっとややこしいのは、長期金利が上がる一方でインフレ期待がそこまで上がらないとなると、実質金利が上がってしまうので、景気にはマイナスになる。実質金利がゼロを超えそうになってきたら、むしろFRBでは追加緩和が必要だという議論が浮上してくる。今の市場ではインフレ期待が高まるから引き締めが早まるんじゃないかという懸念がくすぶっているわけですが、実はインフレ期待があまり上がらず、追加緩和なんじゃないかという話に変わってくる可能性がある。

 そうすると、もっと株価が上がるという話にもなりうる。BEIは先ほどお話ししたように少しミスリードになるので、10年の名目金利に加えて、5年先5年物フォワードの動き、実質金利の動向を見ておくとよいと思います。

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最終更新:3/7(日) 22:56

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