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「慎重なる楽観」で意外に脆弱じゃない株式市場

3/4 6:31 配信

東洋経済オンライン

先週はアメリカの中長期金利の上昇、インフレ懸念からFRB(連邦準備制度理事会)が引き締めに転じるのではないかとの連想も生じて、株価が動揺した。足元の株高はバブルであり、崩壊するのではないかとの警戒感が市場にはある。GCIアセット・マネジメントの創業CEO・山内英貴氏に、個人投資家へのアドバイスを聞いた。山内氏は長年運用に携わり、その経験からリーマンショックを予見した。GCIはヘッジファンド運用会社で、個人投資家向けにエンダウメント(大学財団)型の投資戦略を活用した公募投信も展開している。

 ――投資家としては経済、市場の先行きをどう見たらよいのか。

 まずは、長い目で見た経済において、堅固なトレンドと、前提条件が変われば変わるトレンドとを見極めておきたい。

■グローバル化は堅固なトレンド

 1990年代から続く「グローバル化」は堅固なトレンドだ。コロナ禍や米中対立で変わったといわれるが、それは人の移動やモノの移動などが制約を受けたハードの面であり、サービスや情報といったソフトの面でのグローバル化は変わらない。

 その背景として、この20~30年を見ると、あらゆるものが流動化している。その原因を分解してみると、ひとつはDX化。今の在宅勤務に象徴されるように人が移動しなくても、技術・知恵・ノウハウの共有が可能になった。それによってイノベーションも加速している。もうひとつはモノからサービスへのシフト。だから、モノのグローバル化はある程度まで来ているとしても、まだサービスが伸びる。未来には暗い絵は描いていない。

 もうひとつ、「グリーン・テクノロジー」も堅固なトレンド。中国、イスラエル、北欧が最先端を走っているので、注視しておきたい。ただ、その背景となっている気候変動の問題はなかなか解決に向かわないので、それが予想できない変動をもたらすリスクがある。

 一方、前提条件次第で簡単に変わる可能性のあるものは2つ。

 第1が資産価格の上昇だ。リーマンショックの後、リスク資産価格の上昇と国債価格の上昇が併存するという状態が続いてきた。古典的な経済理論では説明のつかない現象だ。この状態は世界中の中央銀行が「結託」して作り出している。さらにコロナ禍で財政も出動している。こうした状況は特殊なので、過去の経験からどこかでほころびが生じて崩れるリスクは小さくない。これをうまくソフトランディングさせられるのかが課題だ。

 第2に注目すべきは、アメリカのドルが基軸通貨としての地位を維持できるかという問題だ。この40年間でドル金利は20%超からゼロまで来た。その間、基軸通貨はドルのみで、金準備もない。世界の経済は米ドルと米国債への信認で成り立っている。かつてのプラザ合意のときのようにアメリカの双子の赤字など持続可能性が不安視され、ドルへの信認が揺らぐことはありうる。

 ただし、先回りして言うと、今の法定通貨としての中国人民元がこれに取って代わることはないとみている。グローバルな信認を得られないからだ。一方、主要中央銀行が取り組みを本格化し始めたデジタル通貨はありうるのでないか。そこは規制のさじ加減もあるが、将来ドルへの一極集中が変わる可能性はある。

■2021年に株価大暴落のリスクは小さい

 ――先週は長期金利の上昇から市場が動揺しました。今お話のあったトレンドが変わる、株式市場が大崩れするといったことは今年、起きるのでしょうか。

 「今」を考えると、そうしたリスクは小さいとみている。2021年の年頭に当たってキーワードは「慎重なる楽観」と考えた。基本的には昨年3月のように大きく下がる心配はないと思っている。2016年のほうがむしろ「中国は大丈夫か」と心配していた。

 第1に金利とインフレの行方だが、まず、総掛かりでコロナ対応に当たっている中央銀行が現状で引き締めに転じて株価暴落の引き金を引くようなことは、考えられない。また、長らく続いた国債の強気相場は終わったと見ているが、それでは一転してどんどん長期金利が上昇していって金融市場が混乱するような事態になるかといえば、そうはならない。仮にそうしたリスクが顕在化するとしたら、各国中銀と政府はコロナ禍対応が水泡に帰することのないよう、阻止に動くだろう。

 コロナの感染が収束するなり集団免疫ができるなりして人々が解放されると、これまでの反動から経済活動が爆発的に活発化することも予想される。100年前のRoaring Twenties(狂騒の1920年代)のような状況だ。そうすると、需給が引き締まって経済の活況とインフレ圧力が顕在化することはありうる。ただ、インフレが続いて、これまでのデフレ的な、ディスインフレ的な世界から明確にトレンド転換していくのかといえば、それはないと思っている。ソフトなグローバル化が進む中で、技術革新によるデフレ圧力は依然として残るからだ。

 また、今の株高はいつ終わってもおかしくないと、多くの機関投資家も個人投資家も警戒していて、ヘッジの相談が多い。つまり市場が強気一色ではなく、相応に慎重なので、意外に脆弱ではないという気もしている。

■財政拡張はボラティリティを高める要因

 第2に先ほど述べたドルや米国債、いわば基軸通貨・ドルへの信認が崩れるかという問題だが、これも、当面はないと考えている。第3には新型コロナが収まるのかどうかという問題がある。これは何とも予想できないが、どちらかというと、収束するなり集団免疫ができて人々の日常が解放されると、大きなペントアップディマンドが出てくるというプラスの反動が予想される。

 第4に米中摩擦だが、バイデン政権も引き続き、人権をはじめとする問題で中国に厳しい態度で臨むということだが、トランプ政権に比べると貿易や気候変動の問題ではもう少し現実的に考えるのだとすると短期的にはここもさほど大きなリスクにはなってこない。

 最後は、グローバルに財政を拡張しているので、財政を懸念して長期金利が上がるリスクはある。債券市場が引き金を引くリスクは小さくない。だが、これも短期的に顕在化する話ではないと見ている。ただし、市場のボラティリティを高める大きな要因となることは間違いないと思う。

 ――長い目で見たドルの信認というお話がありましたが、ドル相場はどうなっていくと思いますか。

 今までもそうだったが、アメリカの当局は「強いドルが国益」と言いながら、緩やかなドル安を容認していくという形だと思う。これは基軸通貨国の特権だ。円の場合は円安が続くとどんどん貧乏になってしまうが、アメリカはドル安が続いてもファンディングできる。逆に、ドル高にすると、対外債務を抱えた新興国が持たなくなって、かつてのアジア通貨危機のようなことが起きるので、安定的なドル安がよい。この数年間はうまくいっていたと思う。

 ――今、ESG投資、SDGsの掛け声のもとで、これに関連した投資ファンドや投信の組成も盛んです。これはある種のバブルを作っていく可能性はないですか。

 それよりもまず、それぞれの企業が本業の中でESGに取り組んでいくというのが本来の趣旨で、株主や債権者が事業体を誘導していくというのは容易ではない。総論では誰も反対できないが、各論に入っていく段階では、例えば定量的評価など具体的な落とし込みが簡単ではない。また、枠組み自体が何らかの投資制約になると、長期的に投資リターンを悪化させることにもなる。

■投資を継続しながらリスクの分散も考える

 ――個人投資家へのアドバイスは? 

 いつも言っていることだが、資産運用は何よりも継続が大事で、許容可能な範囲でリスクはとり続けるべきということ。一方で長期の株式投資では、昨年3月のような大きな下げも常にありうるのだから、継続のためには分散が欠かせない。あらゆる資産の価格上昇が続いてきたので、当社の場合は、ショートポジションや保険の活用などオルタナティブ投資を積極的に活用していく。

 リーマンショック以降の10年を分析すると、米国株に積み立て投資しておけばよかったという結果で、パッシブ運用圧勝だった。ただ、もっと長い時間軸でみると、この10年間は特殊な期間だったともいえる。これからも継続するかどうかはわからない。ここから先はK字型回復とも言われるように構造的な変革が進むので、全体のパイが成長することをリターンの源泉とするインデックス型のパッシブ運用に対して、アクティブ運用が復権するのではないかと考えている。ただし、その中でも巧拙で差が広がるのではないか。

東洋経済オンライン

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最終更新:3/4(木) 7:12

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