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テレビの「飲食企業推し」が目に余る切実な訳

2/28 12:01 配信

東洋経済オンライン

 このところテレビ番組を見て、「また飲食チェーンや食品会社の商品を特集しているのか」「あれっ? このピザチェーンの売り上げランキング、先週見なかったっけ」などと感じたことはないでしょうか。

 実際、ゴールデン帯で飲食企業や、その商品をフィーチャーしたバラエティが増え、なかには「これは広告番組?」と思わせるものも少なくないのです。以下、今年に入ってからゴールデン帯で放送された主なものをテレビ局ごとに挙げていきましょう。

■「ランキング」にこだわるテレビ朝日

 「日本人の3割しか知らないこと くりぃむしちゅーのハナタカ優越館」(テレビ朝日系)は、2月25日にミツカン・鍋つゆ、エスビー食品・チューブ調味料、S&B・スパイス&ハーブ、マクドナルド・ハンバーガー、ピザーラ・ピザの売り上げランキング。2月18日にカルビー・スナック、ニチレイ・冷凍食品の売り上げランキング。2月4日に丸美屋・ふりかけ、キユーピー・ドレッシング、ファミリーマート・おむすびの売り上げランキング。1月28日に日清・カップヌードル、やおきん・うまい棒、ハーゲンダッツ・アイスクリームの売り上げランキングを紹介しました。

 「林修の今でしょ! 講座」(テレビ朝日系)は、2月9日にかどや・純正ごま油、日清・アマニ油、AJINOMOTO・アマニブレンド油、BOSCO・エキストラバージンオリーブオイルなどの効用やレシピなどを紹介。1月26日にファミリーマート・大麦入りおむすび、ローソン・ブランパンシリーズ、両コンビニのさまざまなサラダなどを紹介。1月12日にミツカン・金のつぶ たれたっぷり! たまご醤油たれ、スシロー・めかぶ長芋納豆軍艦などを紹介しました。

 「ザワつく! 金曜日」(テレビ朝日系)は、2月12日に「あの人気商品が大変身!」で明治・スーパーカップ超バニラ、湖池屋・カラムーチョ、東ハト・ハーベストのアレンジなどを紹介しました。

 テレビ朝日は、長年「お願い! ランキング」という深夜番組で飲食企業の商品を扱い続けているうえに、各社が一堂に会する「お菓子総選挙」「アイス総選挙」、飲食チェーンの全メニューを紹介する「お試しかっ! 帰れま10」などもあり、ランキング企画が得意なテレビ局です。

 「この差って何ですか?」(TBS系)は、2月16日に「ピザハット、昔と今の差」「日清・カップヌードル、エースコック・わかめラーメン、日清・どん兵衛、日清・U.F.O.、まるか食品・ペヤング、昔と今の差」「亀田製菓・ハッピーターン、明治・きのこの山、森永・ハイチュウ、昔と今の差」。2月9日に「モスバーガー、ガスト、昔と今の差」。1月26日に「天丼てんや、昔と今の差」。1月12日に「吉野家と松屋、牛丼の差」を放送しました。

 「教えてもらう前と後」(TBS系)は、2月16日に「ほっかほっか亭、オリジン弁当、ほっともっと、のり弁を比較」「崎陽軒・美味すぎるシュウマイの秘密」。1月19日に「インスタント麺厳選BEST5(サッポロ一番、辛ラーメン、中華三昧など)を放送しました。

 「ジョブチューン」(TBS系)は、2月27日に「オリジン弁当vs超一流料理人」。2月13日に「夢庵vs超一流和食料理人」「市販パスタソースを使った超一流イタリアンシェフ アレンジバトル」。1月1日に「セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンvs超一流料理人」を放送しました。

■「マツコの知らない世界」「アイ・アム・冒険少年」も

 「マツコの知らない世界」(TBS系)は、2月2日に「立ち食いそばの世界」で富士そば、ゆで太郎、小諸そば。1月19日に「おうちカレーの世界」でエスビー食品・ゴールデンカレーとフォンドボーディナーカレー、江崎グリコ・プレミアム熟カレー、ハウス食品・ジャワカレーなど。1月12日に「おうちあったかグルメの世界」で各社のインスタント袋麺、レトルトハンバーグ、レトルト麻婆豆腐などを紹介しました。

 「坂上&指原のつぶれない店」(TBS系)は、2月21日にシャトレーゼの新ブランドと新商品開発、成城石井の生産者救済に伴う新商品開発。14日に大阪王将のブランド戦略や冷凍餃子を紹介しました。

 「アイ・アム・冒険少年」(TBS系)は、2月22日に「自分たちが獲った魚で、磯丸水産の全メニュー104品を再現」を放送しました。

 TBSは近年、最も飲食企業をフィーチャーしたバラエティの多いテレビ局。一流料理人のガチンコ審査でショーアップした「ジョブチューン」、ドキュメント要素を採り入れた「坂上&指原のつぶれない店」など、エンタメ化させたものが目立ちます。

 「ウワサのお客さま」(フジテレビ系)は、2月5日にドン・キホーテ、赤から。1月22日にびっくりドンキー。1月8日に肉のハナマサ、ラ・ムー、海鮮三崎港、カレーハウスCoCo壱番屋などを紹介しました。

 「所JAPAN」(関西テレビ・フジテレビ系)は、2月22日に日清フーズ・マ・マー早ゆでスパゲティ、グリコ・プリッツの改良。2月15日に伊藤園・お~いお茶などの改良を放送しました。

 「林修のニッポンドリル」(フジテレビ系)は、2月3日に日清食品の「インスタント麺売り上げ番付」や、ちょい足しアレンジを紹介しました。

 「超逆境クイズバトル!! 99人の壁」(フジテレビ系)は、1月16日に「吉野家、丸亀製麺、餃子の王将…社員集結」を放送しました。

■飲食と笑いの間で揺れるフジテレビ

 フジテレビは、「ウワサのお客さま」がほぼ飲食企業をフィーチャーする番組になっているほか、異なるジャンルだった「林修のニッポンドリル」「99人の壁」などもテコ入れ策として飲食企業のテーマを導入しはじめるなど、変化の兆しが見られます。テレビ朝日やTBSのレベルまで増やしていくのか、それとも本来の強みであったお笑い系の番組を増やしていくのか。分岐点に立っているのかもしれません。

 また、レギュラー放送されている番組だけでなく特番でも、2月19日の「快答! 50面SHOW」(TBS系)は、ピザーラのピザ、カルビーのスナック、東京ディズニーランドのフードメニュー、セブン-イレブンのスイーツランキングを当てるクイズを放送しました。

 2月11日の「忌憚ナク蔵の満足度調査」(テレビ朝日系)も、モスバーガーのファミリー満足度ランキング、まるか食品・ペヤング大盛りシリーズ満足度ランキングを放送しました。

 このところ宅配ピザチェーンのランキングなど短期間で企画がかぶっているものもあり、過剰供給のムードが漂いはじめています。また、ジャンル全体を掘り下げる企画で、個別の企業や商品をフィーチャーする構成ならいいのですが、最初からタイアップ番組のように単独企業や単独商品を扱っているものも少なくありません。「2時間ほぼ1企業の特集」という放送回もあるなど、「どこまでが番組の企画で、どこまでがCMなのかわからない」という視聴者も少なくないでしょう。

 飲食企業の企画が増えた理由としてやはり大きいのは、コロナ禍の影響。ステイホームが推奨された昨春から、自宅で料理するうえでの食料品や、居住エリアにありデリバリーも可能なチェーン店を扱うバラエティが増えていました。そのことはピザーラ、ピザハット、ドミノピザの3大デリバリーピザチェーンが各局のバラエティで扱われていることが証明しています。いわゆる巣ごもり需要であり、視聴者サービスの意味合いが大きいのは間違いありません。

 ただ、これほど増えているのは、理由が1つだけではないから。非常事態宣言によってロケがしづらくなり、批判が集まりやすくなっていることに、バラエティのスタッフは頭を痛めています。その点、飲食企業をベースにした企画は、ロケが最小限で済むほか、批判を受けるリスクが少ないなど安心安全。さらに、内容の大半が既存ネタのため、情報が入手しやすく、取材対応にも慣れているなど、「企画構成と事前手配がスムーズ」という制作上のメリットがあります。

 そして、もう1つ大きな影響を及ぼしているのは、昨春に行われた視聴率調査のリニューアル。年齢、性別、人数などの詳細がわかる個人視聴率が全国的に導入されたことで、民放各局はスポンサーの求める10~40代に向けた番組制作を一気に進めました。なかでも重視されているのがファミリー層であり、だから客層と一致し、分母も大きい飲食チェーンの特集が劇的に増えているのです。

■日テレとテレ東にはあまり見られない企画

 前述した番組は、テレビ朝日、TBS、フジテレビの3局に集中していました。独自路線をゆくテレビ東京はさておき、日本テレビのバラエティが飲食企業の企画に頼ることはほとんどないのです。それはなぜでしょうか? 

 日本テレビは2010年代から他局に先がけて10~40代に向けた番組制作をしていたこと、これまで飲食企業の企画に頼らず結果を出し続けてきたことなどから、「コロナ禍だから」といって急に採り上げる必要性はないのでしょう。

 一方、日本テレビを追いかける3局は、これまで世帯視聴率を獲得しやすい中高年層向けの番組を量産してきたため、視聴率調査のリニューアルによって大幅な方針変換を求められることになりました。「レギュラー番組の中でファミリー層を狙える企画は何か?」と考えたとき、真っ先に挙げられるのが飲食企業の企画だったのです。

 ただ、上記に挙げた番組が「狙い通りに10~40代(ファミリー層)の個人視聴率を獲れているか」と言えば微妙。もともと飲食企業の企画は、平日の日中や週末に放送される情報番組でも連日放送されていて、テレビをよく見ている人ほど「朝から夜まで飲食のネタばかり」という印象があるものです。もしこのまま民放3局が「右にならえ」の姿勢で飲食企業の企画を続けたら、近いうちに視聴者から飽きられかねません。

 また、バラエティにおける飲食企業の企画は、「広告収入減を食い止めるための既存スポンサー接待」。あるいは、「スポンサー再開拓の意味合いもある」という話もよく聞きます。つまり、飲食企業の企画はビジネス戦略上でも重要なものですが、これほど頻繁に扱ってしまうと、かえって出稿は増えず、広告効果も薄れてしまうのが難しいところ。3局は各番組の制作だけでなく、これまで以上に編成や営業との連携を深めて戦略を練り直したほうがいいでしょう。

■本当に飲食企業の企画をやりたいのか

 制作現場の人々としても、「本当に飲食企業の企画をやりたいか?」と聞かれたら素直にうなずけないのではないでしょうか。「ロケが思うようにできない」「会社から『ファミリー層を狙え』と言われるから」「営業をサポートするために」「ステイホームの時期だから」。特にバラエティがやりたくてテレビ業界に入った人ほど、今はこれらのエクスキューズをもとに飲食企業の企画を選んでいるだけでしょう。

 そういう人が今後も初志を忘れ、飲食企業の企画を続けていたらテレビ業界の未来は暗いと言わざるをえません。もともと「バラエティ」は、さまざまな企画を楽しめるジャンルであり、ひいてはテレビ最大の武器であったはずの多様性を確保するためにも、現在のような過剰供給は望ましくないでしょう。

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最終更新:2/28(日) 12:01

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