IDでもっと便利に新規取得

ログイン

レクサスLS「初期型の不評」克服した熟成の中身

2/28 10:01 配信

東洋経済オンライン

 レクサスのフラッグシップセダン「LS」。運転を楽しむためのドライバーズカーであり、時に後席の同乗者を送り届けるショーファードリブンとしての役割も担う。言い換えれば、ドライバーの運転操作を素直に反映する躍動的な走りと、極限まで滑らかで車両挙動を安定させた静かな走りの両立がLSには求められている。

 現在のLSは2017年10月に登場した5代目で、2020年11月には大幅なマイナーチェンジが行われた。LSの数え方と車名には導入時期や地域によって差が設けられ、北米や欧州では初代からレクサス「LS」だったが、日本では同じボディ構造でバッジ違いの右ハンドル車を長らくトヨタブランドの上級セダン「セルシオ」として販売していた経緯がある。

 日本では2005年にレクサスブランドが立ち上がり、翌2006年に通算4代目となるLSが国内向けの初代レクサスLSとして導入された。同時にセルシオは整理され、国内市場では「クラウン」の上位モデルであった4代目「クラウン・マジェスタ」がセルシオのポジションにつく。

■静粛性・乗り心地、乗り味、電動化・自動化の3層

 「初代LSこそレクサスの原点」とは、レクサスインターナショナル チーフエンジニアにして現LSの開発主査である武藤康史氏の言葉だ。氏は続けて「レクサスでは中長期ビジョンを次の3層構造で目指しています。根底にレクサスDNAとして大切に育んできた高い静粛性と優れた乗り心地の継承があり、中段にレクサス独自の乗り味の確立。そして最上位に電動化と自動化がきます」。

 1989年に誕生した初代「LS400」は国内ではセルシオとして販売された。その圧倒的な静粛性と同乗者の身体がぶれない滑らかな乗り心地には、当時、世界中の自動車メーカーが驚いた。また居住性だけでなく、空力性能や動力性能も高かったことから、欧州、北米の自動車メーカーではLSを何台も購入し3万点以上にも及ぶパーツすべてを分解するなど徹底した解析を行った。

 2017年に登場した現行LSも高い静粛性と優れた乗り心地を目指した。しかし、開発は困難を極めた。採用したGA-Lプラットフォームは生まれたばかりの大器であること、組み合わせたランフラットタイヤとの整合性を保つことが難しかったことなどから、乗り心地はかためで上下動が大きく、とても滑らかとは言いがたかった。

 なかでも「LS500h」(ハイブリッドモデル)のAWD(4輪駆動モデル)は、大きな凹みや段差を通過する際に体感するシートからの突き上げが強く、後席では衝撃音も大きめでクルマ酔いを誘発……。レクサスが大切にしてきた滑らかな走行性能の継承はそう簡単ではなかったのだ。

 要となるハイブリッドシステムは、レクサスのフラッグシップクーペ「LC」(2017年3月発売)から導入された「マルチステージハイブリッド」である。マルチステージハイブリッドとは、トヨタの誇るハイブリッドシステム「THS-II」に4速分の有段変速ギヤを組み合わせたトランスミッションで、体感加速とエンジン回転の連携を強めた新世代ユニットのことだ。現在はクラウンの3.5Lハイブリッドモデルにも搭載されている。

 一般的にハイブリッドカーは二次電池(バッテリー)に十分な電力の蓄えがあり、なおかつ低負荷での走行領域では、内燃機関であるエンジンを停止させ電動モーターの駆動力だけで走行する。そしてバッテリーのSOC(State of Charge=充電状態)が低下したり、アクセルペダルを踏み込むなど走行負荷が高まったりするとエンジンが自動的に始動して、電動モーターと内燃機関のハイブリッド走行となる。

 LS500hでは電動モーター単独での走行からハイブリッド走行となる際にエンジン始動が遅れるタイムラグ現象があった。具体的にはドライバーが深くアクセルを踏み込んでもすぐにエンジンが始動せず、欲しい加速力が得られるまでに時間を要していたのだ。

 さらにエンジン始動時の回転数が2500回転程度と高めであることから静粛性も欠いていた。この現象は、日常走行で多用するゆっくりアクセルペダルを踏み込む状況になればなるほど、欠点として顔を出していた。

■乗り心地と走行性能、静粛性を向上

 2017年、当時のLS開発主査であった旭利夫氏は筆者のインタビューに対して、「後席での乗り心地に改良の余地があることはわれわれも把握しています。しばらく時間をください。ハイブリッドモデルのタイムラグについては持ち帰り、開発チームと確認走行を行います」と語ってくれた。

 そして2019年秋、筆者は取材現場で旭主査と再会した。旭主査は開口一番、「ご指摘の乗り心地とハイブリッドシステムの制御方法について大幅に改善しましたが、お試しいただけましたか!」と満面の笑みをこぼしていた。それもそのはず、登場から2年弱の間にLSは搭載技術を継続的に昇華させ、レクサス独自の乗り味に近づいていた。

 2018年夏、サスペンションのうちダンパーの内部構造を見直して乗り心地を改善。ダンパー内のオイルをスムースに流して摺動性を高め、路面からの突き上げを大きく減少させた。

 また、ハイブリッドシステムではエンジン制御方法を変更して静粛性を向上させ、制振材の追加で振動も抑制。同時に変速制御も改めてドライバーのアクセルペダル操作に対して自然な加速力が得られるようにした。さらに2019年秋には、ハイブリッドシステムの電動モータアシスト量を増やして走行性能と静粛性を再び向上させている。

 旭主査は当初から、「ハイブリッドシステムにはまだゆとりがあるので地道な進化を継続し、レクサス独自の乗り味を目指します」と語っていた。初期型の現行LSユーザーは複雑な気持ちになるかもしれないが、こうして時間をかけながら最新技術のさらなる改善を行い、一歩ずつ確実に登ってきた。

 このようにLSは、レクサスDNAである高い静粛性と優れた乗り心地を大切にしながら、上位にくるレクサス独自の乗り味を技術の熟成、つまり昇華させるという手段で追い求めてきた。では最上位にあたる電動化と自動化はこの先どうなるのか? 

 まず電動化は、電気自動車であるレクサス「UX300e」が先陣を切った。2020年春に中国市場、そして同年10月には日本市場にも2020年度分の限定販売135台として市販化された。2022年には新たな電気自動車の導入も公表されている。

 2020年12月には電動化パワートレーンとして新たなハイブリッドモデルやプラグインハイブリッドモデルの展開も示され、これによると2023年末までにグローバル市場に対して9車種の導入があるという。

■ホンダ「レジェンド」に続いて自動化レベル3へ

 自動化はどうか?  2020年11月の現行モデル発売にあわせて、2021年内には高度運転支援技術「Advanced Drive」として、自動化レベル3に準じた技術搭載車が発売される。

 自動化レベル3については2020年11月にホンダのフラッグシップセダン「レジェンド」がレベル3搭載車として型式認定を取得、2020年度内に発売するとしているが、LSはこれに続く形だ。

 レクサスの自動化レベル3技術は、トヨタブランドとして燃料電池車「MIRAI」への搭載も決定している。これはLSとMIRAIが同じGA-Lプラットフォームを使用していることも大きく関係する。

 過熱する脱ガソリンのムーブメント以降、各国の自動車メーカーはこぞって電動化を口する。一方、ここ5年ほど熱気を帯びていた自動化に対してはやや足踏み傾向のように思える。そうしたなかレクサスが採った3層構造の中長期ビジョンはバランス感覚に優れたものだ。

 電動化と自動化を同じ土俵で捉え、技術開発と市販化を進めることは容易ではないが、自動化システムが要求する電力は増加傾向にあることから、車両のさらなる電動化は自動化にとっても不可欠である。LSはその牽引役となる。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:3/4(木) 11:31

東洋経済オンライン

投資信託ランキング

Yahoo!ファイナンスから投資信託の取引が可能に

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング