時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた事業再生請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売されました。本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。
● マネジャーの仕事は、メンバーを支援することで 前向きなエネルギーを創り出すこと
多くの場合、新たにルールを定めると、必ず知恵を使ってうまい「抜け道」を見出すものがいて、さらにその「抜け道」の抜け方は一瞬にして組織内に広がるものです。
「お前も気が付いたか。これ考えた奴、アホやな。こうやったら簡単にポイントを稼げるのに」
この手の「抜け道」情報は、トップや本部がその「抜け道」に気が付かぬうちに、3日もあれば全マネジャーに拡がります。
マネジャーたちの仕事は、出所がトップの意志なのか、本部による創作なのかもわからない根拠の希薄な運用基準に沿った評価数値を黙って受け入れることではありません。
その数字を部下に与えて「何とかしろ」と無理強いし、達成できなかった部下を「あいつはだめです」と報告するだけの無責任な仕事でもないはずです。
マネジャーの仕事とは、部下に対して今の仕事の意義を説き、現場のメンバーの問題解決を支援することで前向きなエネルギーを創り出すこと。結果的にすべての業務の生産性を高めることです。
● 人は意義を感じることに取り組んでいる時、 幸せホルモンの「オキシトシン」が分泌される
人は、意義を感じることに取り組んでいる時、それがたとえ難易度が高い課題であっても世のため、人やコミュニティ、所属する会社などの組織のためになると腹落ちできる時には、幸せホルモンとも言われる「オキシトシン」が分泌されると言われます。
この状態が、最も生産性が高く、何より本人も幸せを感じる状態なのです。
この意義を感じるための指導を行うのは、マネジャーの役目であり、そのプラットフォームを用意するのは、マネジメントの重要な仕事です。
すでに収益管理や目標管理の徹底などよりも、「イノベーション」の名のもとに、数多くの挑戦を行うほうが結果的に成長性を高め、株価上昇への貢献があることをよく理解しているのがGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)です。
彼らは、人をA、B、C…とレイティングすることを嫌い、挑戦的、前向きな取り組みとその達成を評価する、進化を志向する評価に変化させています。
アジア諸国の台頭による、本当の意味でのグローバル化の実現や、ITハードウェアの飛躍的能力アップによる、ITによるビジネス世界が広がる中、いかに「まだ見えていないもの」に挑戦し、形を見出していくかの勝負の時代に入っています。
ただし、多くの日本企業がよくやってしまう、ただ「KPIなどのスキームを取り入れる」だけではうまくいきません。
その人事制度の下で動くマネジャーがキーとなり、これも、評価研修をやればいいという安易なものではなく、その意義を心底自分たちのものにできているかどうかです。
前向きな挑戦と、そこでの達成を喜びにするエネルギーを生み出す評価のあり方とはどういうものか。企業のトップには、自社はそこに挑戦するのだという想いを抱いていただきたいのです。
《Point》
押し付けられた仕事では、幸せホルモン「オキシトシン」は分泌されない。各層のマネジャーが仕事に大義ある説明、翻訳ができるようにするのがトップを頂点としたマネジメントの役割。
ダイヤモンド・オンライン
最終更新:2/24(水) 6:01
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