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マネジャーを選ぶ時に覚えておくべき、たった1つのこと

2/24 6:01 配信

ダイヤモンド・オンライン

 経営学の大家ヘンリー・ミンツバーグ。『マネジャーの仕事』『戦略サファリ』などのベストセラーでも知られる氏が「これは私にとって12冊目の著書だ。これまで書いた中で一番真剣な本と言えるかもしれない」と述べるのが2月17日に発売となった『これからのマネジャーが大切にすべきこと』である。

 本書は「マネジャーは欠点を見て選べ?」「意思決定とは『考えること』ではない」など、42のストーリーで構成されており、遊び心に富んだ表現で、マネジャーの仕事の本質を鋭く説いている。

 今回はその中のストーリーの一つ、「マネジャーは欠点を見て選べ?」を紹介する。

● 優れたマネジャーとはどのような人物か

 有能なマネジャーやリーダーの条件とは、どのようなものなのか。その条件は、たいてい短いリストの形で示される。たとえば、トロント大学ロットマン経営大学院のEMBA(エグゼクティブMBA)プログラムのパンフレットは、以下のような資質をリストアップしている。

 ・現状を疑う勇気があること。
・過酷な環境で成功できること。
・物事をよくするために協働できること。
・急激に変化する世界で明確な進路を定められること。
・恐れることなく決断できること。

 このような短いリストでは、どうしても抜け落ちる要素がある。たとえば、このリストには、「基本的な知性」や「人の話を聞く力」が含まれていない。しかし、心配は無用だ。それが載っているリストもある。

 そこで私は、手に入るすべてのリストの内容を足し合わせ、さらに自分の好みの要素をいくつか付け加えて、完全版と言えるリストをつくってみた。それが、下記の図である。リストアップされた資質は52個。これらの資質をすべて兼ね備えれば、とてつもなく優秀なマネジャーになれるに違いない。生身の人間にそれが可能だとは思えないが。

● 欠点のないマネジャーはいない

 マネジャーに必要な資質をリストアップするという発想は、社会に蔓延しているリーダーシップ幻想の一つの表れだ。私たちはしばしば、神様でもない一人の人間を高い台座に上がらせて崇拝する(「ルドルフは最高の人材だ! きっと私たちを救ってくれる!」)。そして、状況が暗転すると、手のひらを返したようにあしざまに罵る(「ルドルフのせいで、ひどい目にあった!」)。しかし中には、危うい台座の上に乗ることなく、上に立つ者の責任を果たすマネジャーもいる。その人たちは、どうやって成功できたのか。

 この問いの答えは簡単だ。実は、成功しているマネジャーにも欠点はある。欠点のない人間など、どこにもいないのだから。成功しているマネジャーの場合は、置かれた環境でその欠点が致命的な問題を生んでいないにすぎない。分別のある大人は、互いの欠点を受け入れ、それに対処する方法を見いだすものなのだ。

 致命的な欠陥があるのは、人間離れした資質リストのほうだ。あまりに非現実的だし、そのような資質が救いようもない弊害を生む場合もある。

 たとえば、「恐れることなく決断できること」の重要性に異を唱えるのは難しいと思うかもしれない。しかし、第43代アメリカ大統領のジョージ・W・ブッシュは、恐れることなく決断し、リーダーシップを振るって、アメリカを2003年のイラク戦争に引きずり込んだ(一方、マネジメントはおこなわなかった)。イラク戦争は、ブッシュの「現状を疑う勇気」の産物でもあった(残念ながら、ブッシュは側近たちの悪しき助言は疑わなかった)。

 それに対し、家具製造・販売大手のイケア(IKEA)を創業してマネジメントをおこない、小売業界の歴史に残る目覚ましい成功を収めたイングヴァル・カンプラードは、「急激に変化する世界で明確な進路を定める」までに15年もの年月を要したとされる(正確に言うと、イケアが成功できたのは、家具業界が急激に変化していなかったからだ。同社が業界のあり方を変えたのである)。

● マネジャー選考で覚えておくべきこと

 まったく欠点がない人間はいない。いずれ欠点が明らかになるのなら、早いうちにその欠点がわかったほうがいい。マネジャーの場合は特にそうだ。したがって、マネジャーを選ぶときは、強みと同じぐらい欠点にも注目したほうがいい。

 しかし現実には、長所にばかり注目して人選がおこなわれることが多い。「サリーは人脈づくりの達人だ」「ジョーは壮大なビジョンをもっている」といった具合に、一つの長所だけを理由に選ばれることすらある。前任者が人脈づくりの稚拙さや戦略ビジョンの欠如でつまずいた場合は、とりわけこの傾向が強まる。

 誰かの欠点を知る方法は、2つしかない。その人と結婚するか、その人の下で働くかだ。しかし、マネジャーを選考する人たち――CEOを選ぶ取締役や、自分の部下として働くマネジャーを選ぶ上司(それにしても「上司」「部下」というのはぞっとする言葉だ)――の中に、(結婚まで求めるつもりはないが)その候補者の下で働いた経験がある人がどれだけいるだろう。そんな人はほとんどいない。その結果、上には愛想よく振る舞い、下には威張り散らすような人間がマネジャーに選ばれることが多い。この種の人間は、自信ありげで弁が立ち、「上司」に好印象を与えるのは得意でも、「部下」をマネジメントするときはひどい態度を取る。

 マネジャーを選ぶときは、候補者を最もよく知っている人たちの話を聞くべきだ。とはいっても、その人物の配偶者に話を聞いても役に立たない。現在の配偶者はその人をよく言うに決まっているし、過去の配偶者は悪く言うに決まっている。しかし、候補者にマネジメントされた経験がある人たちの話なら聞けるはずだ。

 私は、マネジメントに「魔法の特効薬」があるとは思わない。それでも、マネジメントのあり方を大きく改善するための処方箋があるとすれば、それは「マネジャーの選考では、候補者にマネジメントされた経験のある人たちの声を聞け」というものだ。この点をじっくり考えてみて欲しい。

 (※この原稿は書籍『これからのマネジャーが大切にすべきこと』の「4.マネジャーは欠点を見て選べ?」の一部を編集して掲載しています)

ヘンリー・ミンツバーグの自己紹介
 私はカナダのモントリオールにあるマギル大学で、マネジメントやそのほかのあれこれを教授している(経営管理学部クレゴーン記念講座教授という肩書きだ)。大学では、マネジャーの成長を助けたり(impm.org)、医療専門家の成長を助けたり(imhl.org)、さまざまな組織のマネジャーたちが組織内で自分を成長させるのを助けたりしている(CoachingOurselves.com)。

 それ以外の時間は、組織の世界から離れて、スケートをしたり、自転車で走ったり、山に登ったり、お気に入りのカヌーを漕いだりしている。
 20の名誉学位とカナダ・オフィサー勲章を授与されていることも付け加えておこう。そのほかの細々とした情報は、私の公式サイトを見てほしい。

 ちなみに、これは私にとって12冊目の著書だ。これまで書いた中で一番真剣な本と言えるかもしれない。目下の私の関心事は、手遅れになる前に、前著『私たちはどこまで資本主義に従うのか』
(邦訳・ダイヤモンド社)に書いた問題について世界の目を覚まさせることだ。 Photo by Aiko Suzuki

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最終更新:2/24(水) 6:01

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