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世界水準の経営を目指して、変わり始めた日本企業

2/24 6:01 配信

ダイヤモンド・オンライン

 ビジネスモデルのイノベーションや組織変革が求められるいま、企業経営の任に当たるのはだれにとっても難しい。実際、方法ははっきりしないし、変革の多くは失敗している。経営者は時節の不運を嘆きたくなるかもしれない。しかし、忘れてはならないのは、どこの国、いつの時代にも「個別の事情や特殊性」はあるということだ。ワールドクラスも、大きな環境変化を経験し、それを乗り越えて、現在がある。では、日本企業の現状はどうか。世界水準の経営に追いつく可能性はあるのだろうか。(マネジメント・コンサルタント 日置圭介)

● 日本企業の“気づき”のきっかけ

 この連載で紹介してきたワールドクラスには、共通する経営の型が見られます。それは、「多様な知を取り入れて世界規模で事業を展開していく以上はこうならざるをえない」という、いわば必然の型です。

 ですから、本気でグローバルで戦うと決めたなら、まずは「ワールドクラスの経営の型」を理解し、自社に実装しなければなりません。その上で、それをどう運営するかには企業ごとにある程度の「幅」があって当然です。

 ワールドクラスは、これまで大きな環境変化を経験し、それを乗り越えて、現在があります。一方、グローバル経営に後れを取るといわれる日本企業ですが、一部に変わり始めている企業があります。

 今回は、その「気づきのきっかけ」を見てみましょう。

● 海外企業の買収が契機となる

 海外企業のM&Aは、日本企業が成長に挑むための1つの手段として定着してきました。日本企業同士のM&Aよりも金額規模の大きな案件が多く、現在では、毎年数百件が成立しています。残念ながら、失敗例も多いのですが、その大きな原因としては、M&A=戦略となっており、本来は戦略を実行するための手段であるはずのM&Aが目的化してしまっていることが挙げられます。

 また、買収した日本企業の側に「これに合わせろ」という世界標準となる確固たる基準がないために、PMI(買収後統合)がうまくできないということもあります。

 PMIには、価値観、マネジメントや業務オペレーションに関するポリシーやプロセス、ITシステムなど、ソフトからハードまで、さまざまなものが含まれます。マネジメントについては、被買収企業という「会社」単位で残すのではなく、買収企業の事業の一つ、または一部として取り込みます。

 スタッフ機能についてはより厳格に、ファイナンスやHR(人事)といった機能軸でレポート・ラインを通す形に組み替えられます。そして、業務オペレーションは、自社のプロセスとシステムを被買収企業に導入するのが一般的です。これがうまくいくかどうかで、M&Aの成否は大きく左右されます。

 このように統合するのがワールドクラスでは当たり前ですが、日本企業が海外企業を買収した場合、「統合しない」という奇妙なケースが少なからず見られます。「自主性を尊重する」などとそれらしく説明するものの、内実は違います。

 買った側の会社よりも買われた(買わせた、と感じる事案もちらほらあります)側の会社のほうが、ポリシー、プロセス、システムなどでグローバル経営に適した土台を備えていることを目の当たりにし、「統合できない」。それにより、グローバル経営が世界水準から大きくずれている事実に否応なく気づかされるのです。

 この期に及んでメンツにこだわるのは賢明ではありません。被買収企業のほうが優れているなら、それを活用するのが合理的です。グローバル・マネジメントのためのインフラや人材などの「経営資産」を取り込み、自社をアップグレードして新たな型へと昇華してしまうのです。筆者らは、これを「ポストPMI」と呼んでいます。

 海外企業の買収を機にグローバル・マネジメントの進化を試みる日本企業の中には、この割り切りのおかげで世界水準のマネジメントを手に入れつつあります。

● ワールドクラス出身者から学ぶ

 2つ目は、ワールドクラスの経験者からの学びです。近年、CEOやCxO、事業部門の責任者といった現経営層や次のCxO候補としてワールドクラスの出身者が招聘され、日本企業の経営に携わるケースが増えています。

 必ずしも外国人人材というわけではなく、ワールドクラスで経験を積んだ日本人人材を迎えるケースが見られます。たとえば、第8回で紹介したNECは、GEやマイクロソフト、コカ・コーラなどの出身者を採用し、グローバル変革の第一歩を踏み出しています。

 ワールドクラスでキャリアを歩んできた人材から見ると、日本企業の経営は、やはり世界標準からかけ離れているようです。「企業としての全体像がわかりにくい」「階層が多い」「やたらと事業部が強い」「コーポレート機能はないのか」「ここまでスタッフが弱いとは……」といった声を少なからず耳にします。また、ITによる情報の把握・共有もままならないため、経営判断をするにも材料がないといったこともあるようです。

 彼らの指摘がグローバル経営の高度化に即効性をもって直結するかどうかはともかく、ワールドクラスの経営との乖離を知ることの意義は大きく、また、改革への一歩につながるはずです。特に、ワールドクラスの本質を知り、なおかつ「洋物かぶれ」していない日本人人材であれば、日本的、日本人的コンテクストを理解したうえで、「自社のよさ」も手掛かりにしながら、経営や組織の問題解決に当たれることでしょう。

 彼らの指摘を受け留め、メンバーが自分事として、「これでは勝てない、それどころか生き残ることも危うい」と危機感を持ちながら、真なる変革へ舵を切る企業も出てきています。偏見を持たずに、彼らの経験や知識、経営技能を受け入れ、生かすための土壌づくりが肝要です。

● 取締役会が変わる

 2013年6月14日に閣議決定された「日本再興戦略」を端緒に、伊藤レポート、スチュワードシップコード、コーポレートガバナンス・コード*1
、そして経済産業省などからの各種実務指針と連なる、日本企業のコーポレート・ガバナンスを洗練させる動きが続いています。2015年6月に適用開始され、その後2018年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードでは経営の監督と執行の分離が大きなテーマの一つとされ、取締役会の機能発揮を求めています。上場企業については独立社外取締役を最低でも2名以上置くこと、また全取締役における独立社外取締役の望ましい割合として3分の1以上という水準を提示しています。 今春に控えているコーポレートガバナンス・コードの改訂や東証が2022年4月1日を目途に進めている市場区分の見直しによって多少是正される部分もありますが、3500社以上*2
ある上場企業のすべてに数値目標を設定することにはたして意味があるのか、そもそも「社外取締役」という名称をいつまで使うのか、自己決裁にならぬよう人数を限定すべきなのは「社内取締役」ではないかなど、実質面への疑問点は残ります。それでも、ワールドクラス同様の取締役会を擁する企業が出てきたことは事実です。 ワールドクラスで経営を実践し、監督と執行の分離をはじめコーポレート・ガバナンスの何たるかをよく知る人材を社外取締役として迎えると、シンプルだけれど経営の本質を突く問いが投げかけられます。それが、CxOとしての役割やコーポレートの機能を進化させなければならないことを認識する機会となり、世界水準の経営に目覚める契機となっています。

 本連載では、日本企業の経営のあり方に変化をもたらし得るコーポレートガバナンス改革に貢献している社外取締役の方へのインタビューも予定していますので、詳しくはそちらをご覧ください。

 ワールドクラスが実践するグローバル経営を修得したとしても、それが企業経営のゴールではもちろんありません。さらにこの先の時代をどう生き抜き、社会に貢献していくかを描いていくスタートポイントに立っただけです。地球環境の問題や資本主義のあり方など、さまざまなアジェンダに対応していくための企業・組織像は、是非日本から打ち出していきたいものです。

 1 日本取引所グループ「コーポレートガバナンス・コード」原則4-8。
2 日本取引所グループ「上場会社数」ではすべて合わせて3712社(2020年6月30日時点)。

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最終更新:2/24(水) 6:01

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