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コロナワクチンを訝る人に知ってほしい大問題

1/27 11:01 配信

東洋経済オンライン

 新型コロナウイルス感染症対策として期待が集まっているワクチン。昨年12月8日にイギリスで接種が始まったのに続いて、12月14日にはアメリカ、12月27日には欧州連合(EU)がそれぞれ接種を開始した。主要な報道を見ると、1月25日時点で世界50以上の国・地域で接種が開始されている。

 日本では、2月下旬までにまず医療関係者を対象に接種を開始する方針だ。ワクチン接種を推し進める担当大臣に決まった河野太郎規制改革担当大臣は1月22日、総理官邸のホームページにワクチン情報の専用ページを設け、専用のツイッターアカウントを立ち上げることを表明した。

 12月2日の国会で改正された予防接種法によって、新型コロナウイルスワクチンは「臨時接種」という位置づけとなり、接種費用は国の負担となる。また、健康被害に対する救済も国が持つ。と同時に、国民のワクチン接種が努力義務(ただし罰則はない)となった。

 こうしたワクチンの施策の動向が報道される一方で、接種の是非やワクチンの安全性を問う記事も少なくない。

■「なぜワクチンが必要なのかをわかってもらいたい」

 日本感染症学会ワクチン委員会の委員の1人で、国立病院機構東京病院感染症科部長の永井英明さん(呼吸器内科医)は、

 「なぜワクチンが必要なのか。その大前提を多くの人にわかってもらいたい。そうでないと、マイナス面ばかりに目がいってしまい、結局、『周りには打ってもらいたいけれど、自分は打たない』ということになってしまいかねない」

 と不安を拭えずにいる。

 そこで改めてワクチン接種の重要性について考えてみたい。

 まず、永井さんがいう「大前提」についてだが、今の世の中、日本を含め世界各国では「ワクチンで予防できる病気はすべて予防接種で防ぐ」という方針を打ち出している。

 例えば、日本では現在、予防接種法の定期接種として公費で受けられるものに、急性灰白髄炎(ポリオ)、B型肝炎、結核(BCG)、麻疹(はしか)、風疹、水痘(水ぼうそう)、季節性インフルエンザ(高齢者)などがある。ワクチンがなかった1950年前後と現代を比べると、ポリオは年間に数百人~1000人いた死亡者数が0人に、麻疹も同数千~2万人いた死亡者数が10~20人に激減している。これこそ予防接種の効果によるものだ。

 「ワクチンの最大のメリットは、感染を予防できること。あるいは感染が原因による病気の重症化や後遺症の発生、死亡を防げること、です。さらに多くの人が予防接種を受けることで集団免疫ができ、新たな感染者を減らせるのもメリットです」(永井さん)

 代表的なのが天然痘だ。世界レベルで予防接種を実施した結果、新たに天然痘に感染する人がゼロに。1980年5月にはWHO(世界保健機関)が世界根絶宣言した。

 では、新型コロナウイルス感染症のワクチンの有効性はどうなのか。

 これについては、ファイザー社とビオンテック社のワクチン(BNT162b2)が95.0%、モデルナ社(mRNA-1273)が94.5%、アストラゼネカ社のワクチン(ChAdOx1)が標準容量で70.4%となっている。一般的な季節性インフルエンザウイルスのワクチンの有効率が50~60%くらいなので、それに比べればかなり高いといえよう。

 ただ、「この9割という有効率は誤解しやすいので、注意が必要です」と永井さん。接種した人の9割が発症しないという意味ではないという。

 臨床試験では、本物のワクチンと偽薬(プラセボ)を医師も被験者もわからない状態で接種するという二重盲検試験を実施している。その結果、偽薬を打った人は1000人中100人感染症を発症したとすると、本物のワクチンを打った人は10人しか発症しなかった。これが9割の有効性の意味で、1000人接種したら900人が発症しなかったわけではない。

 「要するに、例えば、何もしなければ発症率(感染率ではない)が10%だったのが、ワクチンを打つことで1%に減らせたということです」(永井さん)

■健康被害にはどれほど注意が必要か

 一方、われわれがこうしたメリット以上に気になるのはリスク、つまり健康被害だろう。

 実は、ワクチン接種後に起こる望ましくない出来事は、すべて「有害事象」といい、そのなかに「副反応」が含まれることをご存じだろうか。

 有害事象にはワクチンを打った後に偶然、起こった症状や病気も含まれる。予防接種では、接種後に生じたすべての望ましくない出来事を有害事象としていったん吸い上げ、そこから、ワクチン接種と因果関係があるものだけを副反応としている。有害事象イコール副反応ではないので、注意が必要だ。

 例えば、接種後に心筋梗塞が生じたという事例が、1例だけ起こったとする。だが、“ワクチン接種後に心筋梗塞”という事象だけでは、この心筋梗塞が副反応かそうでないのかわからない。この人が心筋梗塞を起こしたのが“たまたま接種後だった”という可能性もあるからだ。

 「この方と同じ年齢やバックグラウンドの人たちがどれくらい心筋梗塞を起こすリスクがあるのか、そういったことを統計学的に調べて、有意差を検証しなければ、何ともいえないのです」(永井さん)

 日本感染症学会ワクチン委員会が12月下旬に出した「COVID-19ワクチンに関する提言」でも、「接種後にみられた有害事象がすべてワクチンによるものとは限りません。対照群と比べて接種群で統計学的に有意に高い頻度で有害事象が見られた場合に、ワクチンによる副反応の可能性が高くなります」と述べている。

 では、どういうものを副反応というのか。永井さんが解説する。

 「まず、ワクチン接種をした場所で痛みが出たとか、腫れたとか、そういう局所の反応は明らかに因果関係があるわけで、対照群と比べて多ければ副反応と考えられます。また、打った後に熱が出たり、だるくなったりするのも、副反応の可能性は高いです。ただ、こうした反応が一定数起こるのは、ワクチン接種では避けられません」

■製薬企業の臨床データから見た有害事象

 ちなみに、新型コロナウイルス感染症のワクチンの開発に関わる製薬企業が明らかにした臨床試験データでは、臨床試験の有害事象(2回目接種後)の頻度は次のとおりだ。

 ・ファイザー社のワクチン(BNT162b2)/痛み78%(対照群は12%)、発熱(38℃以上)16%(0%)、倦怠感59%(23%)(16~55歳までのデータ)

 ・モデルナ社のワクチン(mRNA-1273)/痛み90.1(18.8%)、発熱17.4%(0.4%)、倦怠感67.6(24.5%)(18~64歳のデータ)

 アレルギーについては臨床試験のタイミングでは報告がなかったが、ファイザー社のワクチンで、接種後にアナフィラキシーという深刻なアレルギー反応を起こしている。アメリカのCDC(疾病対策センター)によると、10日間・約190万回の接種で、21件のアナフィラキシーが報告されている。

 「このケースのほとんどで、過去にアナフィラキシーを起こしていました。ですので、こういった人たちには接種を勧められません。ただ、こうしたアレルギー反応も新型コロナウイルス感染症のワクチンに限らず、一定の割合で起こります」(永井さん)

 例えば季節性インフルエンザワクチンでは、2018‐19年シーズンの予防接種では約5251万回の接種があったが、このうち9例がアナフィラキシーと認められている(厚生労働省の医薬品・医療機器等安全性情報)。

 ここまで有効性と副反応についてみてきたが、ワクチン接種では、健康な人が病気にかかることを予防する効果というベネフィットと、副反応というリスクを比較することになる。そこが、すでに病気にかかっている人が、薬や手術でベネフィットを受ける治療とは大きく意味合いが異なる。当然だが、これまで承認されているワクチンはすべて、ベネフィットがリスクを上回るものだ。

 さらに、そのベネフィットとリスクの関係も、接種する対象者によって変わる。

 例えば、新型コロナウイルス感染症では高齢者で高率に重症化し、死亡率が上がる。そのため予防接種におけるベネフィットが大きい。対して、重症化しないといわれる若年者では、ワクチンを打つベネフィットは高齢者ほど大きくない。

■若年層でも後遺症を防ぐために

 ただ、これはある側面を見た場合だ。永井さんが続ける。

 「ワクチン接種のベネフィットには、社会的な感染を防止して、病気の蔓延を防ぐということもあります。それが冒頭の大原則にも通じるところになります。ただそれが個人のベネフィットに必ずしもつながらないところがあり、そこはもっと啓発活動が必要でしょう。新型コロナウイルス感染症では若年者でも後遺症に苦しむことがあるので、予防接種の意義があるという啓発も必要です。そこは男性への風疹ワクチン接種の事例が似ているかもしれません」

 風疹に関しては、妊娠初期にかかった妊婦の子どもに先天的な心疾患や難聴、白内障などが生じる風疹症候群という問題がある。そのため個人の発症を防ぐためだけでなく、妊婦への感染を防ぎ、生まれてくる子どもを守るために、国は予防接種を受けていない40~50代の男性への抗体検査と予防接種を呼びかけている。新型コロナウイルス感染症では、それと同じ、あるいはそれよりもっと強いメッセージが必要だという。

 永井さんは予防接種政策を進めるには、コミュニケーションが重要という。

 「予防接種では、医師と被接種者と双方向のコミュニケーションが大事で、医師は受ける方の質問、疑問に的確に答える必要がありますし、副反応の対応法もお互いに理解していなければなりません。それにはとにかく偏りのない情報公開が必要。国はもとより、製薬企業の関係者も一体となって、正確な情報を発信してほしい」

東洋経済オンライン

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最終更新:1/28(木) 17:41

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