IDでもっと便利に新規取得

ログイン

この局面の濃厚者接触者探しが極めて不毛な訳

1/23 14:11 配信

東洋経済オンライン

 新型コロナウイルスの対応で保健所は忙しい。かかったと心配する人に検査が必要かどうかの判断をして、必要なら手配する。陽性と確認されると医療機関と入院や治療の調整をしたり、在宅療養をしている患者に定期的に安否の確認をしたりする。中でも職員の大きなストレスになっているのが「積極的疫学調査」だ。

 これは、陽性患者から発熱や味覚がなくなるなどの発症がいつだったかを聞き、それから2週間さかのぼって感染源を探るものだ。発症日の2日前以降に会った人と連絡をとって、「濃厚接触者」の確認をする。濃厚接触者と認定されると、PCR検査で陰性になっても2週間は自宅で経過観察してもらう。

 こうした調査は報道などで知られていて、相手を煩わせたくないと考える人の協力が得られるとは限らない。感染拡大で当事者が増えただけでなく、無症状の人までケアしなければならないため、当事者は膨大になる。

■「賽の河原の石積み」のようなもので、きりがない

 緊急事態宣言が出た1月8日に、神奈川県が「調査対象を絞り、重点化について徹底する」と発表したので、多少話題になったが、実は同県は昨年11月から「重点化」を表明してきた。そもそも、これだけ流行しているのだから、いまさら特定の人がどこで感染したかがわかったところで、賽の河原の石積みのようなもので、きりがない。当事者でさえ感染経路がわからないことが多いのに、たまたまその人の濃厚接触者になった人を探し出す意味がどれだけあるのだろうか。

 この調査のマニュアルである「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領」を作って公表している国立感染症研究所(感染研)も、その無意味さはよくわかっている。実は、昨年5月末時点の要領には、「本稿の位置付け」という項目があり、「クラスター対策が意味を成す段階」について、次のように書いてある。

 「『大規模に患者が発生する前あるいは一定程度より下回った後』の『感染経路が明らかではない患者が散発的に発生しており、一部地域には小規模患者クラスター(集団)が把握されている状態』」

 要するに、感染が広がり始めた時にいち早く「感染の芽」をみつけて丁寧に摘んでいく作業が積極的疫学調査なのだ。いまはもう、その作業が追いつかず、雑草が生い茂っている状態のようなもので、その横で新たにでてきた芽を摘んだところで、雑草がなくならないことは明らかだ。

 要領には、「強力に地域の社会活動を停止させ、強制的にヒト-ヒト感染の経路を絶つ」施策が行われる場合について、こう書いてある。

 「感染経路を大きく絶つ対策が行われているため、個々の芽を摘むクラスター対策は意味をなさない場合がある」

 これは、緊急事態宣言が出ているいまの状況ではないか。そうだとしたら、積極的疫学調査というクラスター対策は「患者発生が一定レベルを下回る段階に落ち着いた時点」(要領)を待って再開するほうが合理的だろう。

■1月8日の改訂で抜け落ちた「本稿の位置づけ」

 ところが、感染研は、首都圏に新型コロナウイルスの緊急事態宣言が発令された翌日の1月8日、この要領を改訂したことをホームページで知らせた。

 その改訂版からは、先述の「本稿の位置付け」の項目がすっぽり抜けた。

 そして「感染経路を大きく絶つ対策」が行われている時には「個々の対応を丁寧に行うクラスター対策は大きな効果を発揮しなくなる場合がある」としながら、「対策の優先度を考慮し、効果的かつ効率的に積極的疫学調査をすることが重要になる場合がある」と、限定条件を入れて逃げを打ちながらも積極的疫学調査をあくまでも続けることが前提の内容ともなっている。

 これはもう、大規模な空襲で都市を焼け野原にする作戦に、竹やりで応戦せよと命じているようなものといえるだろう。

 積極的疫学調査は、感染源を追うことで感染者を早くみつけ、次の感染者を未然に防ぐという流行初期の対応としては多くの専門家が意義を認める古典的な感染症対策だ。筆者もこれを否定するつもりはない。ただし、それはウイルスや細菌を見つけることができて根絶やしにすることができる場合だ。

 新型コロナウイルスは無症状感染者が多く、PCR検査能力が限定的だったこともあり、調査対象が絞られて、とても「積極的」とはいえない中途半端な調査だった。その結果、ウイルスを取り逃がし、流行は2波、3波と、大きくなりながら続いている。

 この濃厚接触者について、実施要領には「必要な感染予防策なしで患者と15分以上の接触があった者」と書かれている。ある保健所職員によると、感染予防策は一般人の場合、「マスク」だ。距離の目安は1メートルとされている。マスク生活が当たり前になったいま、マスクを外して1メートルの距離で人と接するのは、会食の時や家庭が多くなる。

■積極的疫学調査の予算を離さない感染研

 この職員は、感染ルートで、経路不明に次いで家庭や会食の場が多くなるのは当然だと話す。こうした調査結果を根拠にして飲食店に厳しい対策がとられている。食事時に感染しやすいことは否定しないが、果たして、そこまでマスクに信頼を置いた政策を続けてもよいのだろうか。

 ある厚生労働省官僚は「公的PCR検査は積極的疫学調査の予算からお金が出ています。感染研はこれを握って離さない。新型コロナは無症状感染者が多いので、症状がある人が起点になるクラスター対策では制圧できません。中国をはじめ感染を抑え込んだ国は大規模なスクリーニング検査で無症状者をみつけて隔離しています。積極的疫学調査が続く限り、日本は流行と緊急事態宣言を繰り返して疲弊していくでしょう」と指摘している。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:1/23(土) 14:11

東洋経済オンライン

投資信託ランキング

Yahoo!ファイナンスから投資信託の取引が可能に

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング