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HSBCストラテジストが語る市場予測と投資戦略

1/23 4:51 配信

東洋経済オンライン

アメリカではバイデン新政権がスタートした。株価は高値が続き、アメリカの長期金利が1%台に乗せるなど、市場は景気回復への期待を高めている。一方、足元ではイギリスやアメリカ、中国やインドなどでワクチン接種が始まったものの新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。先行きの世界経済、金融市場の見通しについて、HSBCグローバル・アセット・マネジメントのグローバル・チーフ・ストラテジストであるジョー・リトル氏に聞いた。

 ――世界経済を俯瞰すると2021年はどのような見通しですか。

 回復の年だが、ペースは地域によって異なる。中国は堅調であり、アメリカも牽引役になる。中国やニュージーランド、台湾はすでに新型コロナ感染拡大前の水準にGDP(国内総生産)が戻っている。ファンダメンタルズが強固なアジア、すなわち日本、韓国、シンガポールとアメリカは回復に向かっている。新興国は回復が鈍く、欧州は昨年の7~9月の回復の後、10~12月期に二番底を付けた。ただ、ワクチンの普及を前提に2021年後半にはこうした回復の遅れた国々のキャッチアップも進んでいく。

■バブルではないが、リターンはフラット化する

 ――金融市場をどうみていますか。

 2020年は金融緩和によって金利が引き下げられ、全体的にリスクが下がり割引率が低下した。そのため、国債や金など安全資産のパフォーマンスはよく、株式やコモディティのリターンも高かった。今の株高はバブルだという意見もあるが、私はそうは思わない。

 2021年も金融政策は緩和的な状況が続く。さらに、アメリカでは民主党が下院だけでなく上院でも過半数を獲得したため、バイデン政権の財政刺激策は通りやすくなった。また、財務長官に就任する予定のイエレン氏が指名承認公聴会で、ハト派的な姿勢を示したため、バイデン政権の政策実現性への懸念は大幅に低下したとみている。

 イエレン氏はバイデン新大統領の1.9兆ドル(約200兆円)の救済措置をサポートすることを表明し、かつ、税制改革(法人税率の引き上げを含む)は優先項目ではなく、景気回復に重点を置くとの考えを示した。1.9兆ドルはコロナ対策や家計・中小企業の支援策で、バイデン氏は長期的にはインフラ投資を掲げている。イエレン氏は50年債の発行の可能性を検討するとも発表し、このインフラへの支出拡大も支持するとした。

 つまり、不確実性がなくなってきて投資環境はよく、今年も安定したリターンが得られるだろう。ただ、株式は割高になってきていることは確かだ。グローバルな世界株式の中期的なリターンはインフレの影響を除き配当を加味したうえで4.5%程度と予想している。低くはないが、昨年のように2桁はなく、リターンのカーブはフラット化しつつある。

 ――注目しているポイントは? 

 投資家にとってはドル安傾向が続くことが重要だ。FRB(米連邦準備制度理事会)のゼロ金利政策と資産購入は継続されるとみている。一部に資産購入規模の縮小を予想する向きがあるが、私はそうするとはみていない。

 イエレン氏は、「アメリカは競争上の優位を獲得するためのドル安は目指さない」と明言したが、ハト派路線のFRBの金融政策、財政赤字拡大、ワクチン接種の実施による世界経済の回復、政治的不透明感の後退からすると、先行きはややドル安とする予想が理にかなっているだろう。

 ただ、すでにかなりドルは安くなったので、さらに大きくドル安が進むわけではない。ボラティリティは抑えられる。ゆるやかなドル安によって、新興国の通貨が強くなり、アジアの債券や新興国の債券に妙味があり、海外の株式に追い風になる。

■インフレ圧力や、長期金利の上昇は限定的

 ――バイデン大統領の財政大盤振る舞いで予想外に上振れするリスクはないか。市場ではインフレ期待(10年物ブレークイーブン・レート)も2%に乗せており、長期金利も1%を超えた。長期金利の上昇は続くか。

 まず、そもそも需給ギャップが非常に大きい中での財政出動なので、インフレ圧力はさほど高まらないとみている。コロナ前の3.5%の失業率でもインフレ圧力に乏しかった。確かに、経済回復を織り込んでインフレ期待は上昇しているが、デフレ期待から脱却した程度だ。ここから先、長期金利がもっと上昇していくとはみていない。

 また、財政支出はしやすくなったものの、依然として議会からの制約に直面する可能性は高い。上院で法案を可決するためには賛成60票が必要で、民主党の保守派議員のみならず一部の共和党議員からの支持が必要なため、大盤振る舞いをする余地はないと考えている。

 そもそもバイデン大統領自身が中道だ。民主党内にはMMT(現代貨幣理論)を振りかざして、財政の健全化など気にせずにじゃんじゃんお金を出せという左派の人たちがいるが、バイデン氏はそうではなく、債務の積み上がりの問題にも一定の配慮はするだろう。

 ――金融市場にとってのリスクで留意すべきものは?  中国はバブル潰しを少しずつ進めると思うが、チャイナショックのような政策のミスがありうるか。

 中国は他国よりもいち早く景気回復のサイクルに入っているため、金融政策でも相対的にはタカ派になるだろう。財政刺激策も縮小するとみている。新興国やアジアの債券に投資妙味があると思っているが、中国が引き締めすぎるとマイナスの影響が出るので要注意だ。ただ、中国もリスクは認識しており、引き締めすぎるということはおそらくないだろう。中国人民銀行はFRBやECB(欧州中央銀行)、日本銀行とは異なり、金融の安定化にフォーカスした政策を実施するというのが妥当な見方だと思う。

■今年はなるべく雇用をつなぎ止める政策が必要

 ――リーマンショック後にはアメリカの雇用の回復に非常に時間がかかり、潜在成長率の低下、長期停滞が問題視された。今回のショックは経済構造からくるものではなかったが、テレワークの進展などで業種によって回復の度合いが異なる。昨年12月時点のアメリカの失業率は6.7%だが、雇用の傷が長期化しないか。

 重要な問題だ。回復がインクルーシブ(包摂的)になるか、気にして注視している。不況下で失業率が大きく上昇した後、失業率は1%ポイントずつゆっくりと下がっていくというのが通常なので、今回もコロナ前の3.5%に戻るには時間がかかると思う。

 コロナによって人々の働き方や移動の仕方も大きく変化したが、今後もそれが続く可能性はある。セクターによってインパクトが異なり、外食産業などは恒久的なダメージを受けている可能性がある。しかし、リセッションの後に、構造転換があって異なる職種に人々が移っていくことはよくあることだ。バイデン政権は中長期の投資としては、インフラ投資、建設投資などを考えているようだが、本当は教育、再訓練のための投資が重要だと思う。

 ただ、その議論は時期尚早で、今年はできるだけ、解雇や離職を招かないように、雇用をつなぎ止めておくための支援策が欠かせない。その意味ではアメリカよりも、景気の二番底リスクのある欧州のほうが心配だ。回復が遅れると、雇用を維持できない企業が増えてくる。

東洋経済オンライン

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最終更新:1/23(土) 4:51

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