IDでもっと便利に新規取得

ログイン

詰まったりしないのか?マンション全戸「トイレ一斉使用」で何が起きるか

1/23 15:31 配信

東洋経済オンライン

生きている限り、私たちは毎日何度もトイレへ向かう。流して終了。しかし、ちょっと考えてみると、知らないことだらけです。流したものはどこへ?  どうやって処理?  そのために誰が、どんな苦労を?  いつのまに日本は「トイレ最先進国」に?  ジャーナリストの神舘和典氏と文藝春秋の前副社長で編集者の西川清史氏が、あらゆる疑問を徹底取材したルポ、『うんちの行方』から抜粋・再構成して紹介します。

 TOTOの東京オフィスで取材を終えた帰り道、まわりのマンションを眺めながら、共著者の西川さんが妙なことを言い出した。

 「あの高層マンションのすべての部屋で一斉に排泄して水を流したら、どうなるかな?  低層階のトイレからウンチが噴出するんじゃなかろうか?」

 「全フロアのトイレで同時にするなんて起こりませんよ」

 「うん、現実的には起きないかもしれない。でも、マンションの住民集会で日時を決めていっせいに流しましょう、と決議して実践したら、下の階であふれるんじゃないかな?」

 「なんでそんなバカバカしいことを住民集会で決めなくちゃならないんですか。そもそもそうならないように設計されているんじゃないですか」

 「知りたい!」

 「誰に聞きにいくんですか?  いやがられますよ」

 「どうしても知りたい!」

■一斉に流したら下の階であふれる? ? 

 そういうと、西川さんは必死になって取材先を探し始めた。その情熱はちょっとよくわからない。

 その翌週、東京都心にある不動産会社を訪ねた。その名を聞けば誰でも知っている有名な分譲マンションを全国的に手掛ける大手不動産会社だ。取材は西川さんがセッティングした。

 対応してくれたのは、商品企画室室長。こんなくだらないことを室長にお聞きしてもいいものかどうかひるんだ。

 「あのー、唐突におうかがいしますが、高層マンションの全戸のトイレを一斉に流したら、下層階であふれるでしょうか?  理屈で考えると絶対に配管が詰まって、下層階で噴出するんじゃないかと思うんですが、どうなんでしょうか?」

 西川さんが質問する。率直すぎるほど率直である。よほど知りたかったのだろう。

 すると、室長も率直に答えた。「もし全層で同時に水洗したら、下であふれます。100%噴き出します。いきなり排泄物が飛び出すことはないと思いますが、落ちてくるものに押されて、空気は間違いなく噴きます」

 「えー!」こちら2人はそろって声を上げてしまった。あふれたらすごいなあ、と期待しながらも、それでも、よもやあふれることなどないだろうと思って取材にやってきたのだ。ところが、室長はこともなげに「あふれる」と言うではないか。

 「規模にもよりますが、マンションの縦配管は直径10センチメートル、横引き配管は20センチメートル程度です。設計上は、同じタイミングでトイレが流されるのは、諸説あるものの、15層で1つと考えることが通例となっています。もし15層のうち、2層以上の水洗が重なったらあふれることになります」

 ごまかさずにきっぱりと答える室長の、なんと格好いいことか。

■同じ時間帯にトイレが重なる可能性も

 日本人の生活のサイクルは、朝起きて、食事をして、仕事や学校へ出かける前にトイレに行くのがスタンダードだ。ということは、同じ時間帯に排泄が重なるのではないだろうか。

 「確かに、朝トイレに行く人は多いでしょう。でも、心配はいりません。水洗トイレのタンクの中に5リットル水が入っていたとして、その5リットル全部が一瞬で流れるわけではないからです。水洗の流水ピークは1.5~2秒。このタイミングが重ならなければ大丈夫です。もちろん、ピークが重なる可能性はゼロではありません。でも、いまのところ通常の生活の中で排泄物が噴出したという話は聞いたことはないですね」

 室長は表情も変えずに話す。「設計上は2層以上の排泄のピークが重なるとあふれますが、実際には3層が重なっても問題は起きていないようです。あくまでも結果ですけれど。私たちがマンションでテストをするのは、建ったばかりの、入居前のタイミングになります。配管内はきれいな状況で、何の障害もありません。だから、設計通りに水は流れます」

 竣工すると、配管内の環境は変わる。「人が入居すれば、配管内は汚れますよね。すると、水は汚れに妨げられて少しおだやかに流れるようになります。ご参考までに付け足すと、バスタブの排水はまったく心配ありません。6~7分かけてゆっくりと流していくからです」

 では、便秘症の人の何日もかけて硬くなった大きなウンチが配管に詰まることはないのだろうか。わざわざ大手不動産会社にまでやってきて聞くことか、と思わないでもないが、知りたい。

 室長は、この質問にもズバリ答えてくれた。「現状、つまったという話は聞いたことがありません。それも、やはり、竣工前にテストをくり返します。どんなテストかというと、上層階のトイレからおしぼりタオルを流します。それを下で受け取れれば問題はありません。TOTOさんでも、LIXILさんでも、日本のメーカーのトイレはすぐれているので、タオルくらいは問題なく流してしまいます。ただし、これははっきりと申し上げますが、トイレには排泄物以外は流してはいけません」

■配管はつまったりあふれたりしない

 配管内を排泄物は下へ流れ、臭いは屋上へ向かう。「マンションの屋上へ上がると、キノコのような傘をかぶせた通気口があります。傘で蓋をしてはいるものの、近づくと、きつい臭いを感じるはずです」

 これは、トイレの配管の空気の取り入れ口なのだそうだ。配管に空気を取り入れないと、水が下に落ちていかないのだという。

 結論としては、ビルやマンションのトイレの配管はつまったり、あふれたりはしない。ただし、それはあふれないように設計されているからではなく、あくまでも確率に委ねた結果論だ。くれぐれも全住民一斉に流さないでいただきたい。

 (文:神舘 和典、西川清史)

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:1/23(土) 15:31

東洋経済オンライン

投資信託ランキング

Yahoo!ファイナンスから投資信託の取引が可能に

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング