IDでもっと便利に新規取得

ログイン

「国内ラリー」がいまいち盛り上がらない理由

1/23 7:01 配信

東洋経済オンライン

 2020年シーズンのモータースポーツは、新型コロナウイルスに大きな影響を受けた。国内の主なレースは、4~7月のシーズン前半戦が軒並み中止となり、8~9月になってようやく開幕戦を開催。例年11月に行われる最終戦は、12月に実施された。

 「SUPER GT」や「SUPER FORMULA」といったレースでは、入場者数を減らして開催された。無観客レースを避けられたのは、サーキットというクローズドな場所で行うため。チケット販売をコントロールすれば、万が一、開催時にコロナ感染者が発生しても、連絡がつきやすいからだ。

 一方でラリーは、一般公道を閉鎖して行われるオープンな競技だ。

 開会式や表彰式、観戦のためのギャラリーコーナーなどは入場者数のコントロールも可能だが、ラリーはクローズドな場所だけで行われるわけではない。

 スペシャルステージ(SS)と呼ばれるタイムを争う競技区間のほかに、リエゾンと呼ばれる一般公道を交通ルールに従って移動する時間もある。リエゾン区間は一般公道なので、ラリー車が移動するときでも、観戦者を制限するわけにはいかない。そこが、ほかのモータースポーツとの最大の違いだ。

■全10戦が全4戦になった2020年シーズン

 全日本ラリー選手権(以下:全日本ラリー)の2020年シーズンは、全10戦の予定が4戦まで縮小して開催された。

 例年、開幕戦として行われる「ラリーオブ嬬恋」は、2月ということもあり、コロナはまだそれほど猛威を奮っておらず、開催できると思われた。

 しかし、2019年の台風被害により競技で使う道路の損傷が激しく、開催が見送られた。それからコロナが蔓延しはじめると、延期や中止という様相が、ラリー界全体を襲うようになっていった。

 全日本ラリーに限らず、ラリー競技は日本の各地で開催される。コロナの感染者が確認されていない、あるいは感染者が少数である地域も存在していた。しかし、全国からラリー関係者が集まることを考えると、延期や中止はやむをえない判断だろう。

 国内ラリーだけでなく、世界のラリーで活躍し、PCWRC(プロダクションカー世界ラリー選手権)でチャンピオン獲得経験もある、アライモータースポーツの新井敏弘選手にシーズンを振り返ってもらった。

 「コロナの影響で『やらないほうがいい』と判断したオーガナイザーは多い。参加者だけでなく、競技を仕切る関係者、競技の安全を確保するオフィシャル、そのほかメディア関係者なども含めれば、相当な人数が一堂に会することになる。開催地の人からすれば、こんなときに多くの人が地域に入るのは望ましくないと考えるのは当然だろう」(新井敏弘選手)

 ラリーは、地域密着型のモータースポーツだ。主催するオーガナイザーは、地元に精通したラリーチームやJAF公認クラブが担う。その地元に精通したチームやクラブが「ここでの開催は難しい」と判断すれば、開催はできない。そのことが2020年シーズンに多く作用したといえる。また、競技者として新井敏弘選手はこう話す。

 「モチベーションを保つのに苦労した。実質的な開幕となった新城ラリーから次のラリーまで、4カ月もあいたことで集中力も切れる。次のラリーがターマック(舗装路)なのかグラベル(砂利)なのか、開催場所が二転三転したためクルマの準備もできないし、テストもできなかった」

 そんな状況の中で、全日本ラリーは4戦を終えて2020年シーズンを終了。前出の新井敏弘選手の息子でもある新井大輝選手が、全日本ラリー史上最年少でチャンピオンに輝いた。

 そんな、新井大輝選手も「開催数が少ないため、ドライバーポイントの差も少なく、常に全力で戦わなければ勝てない状況。ほんの少しミスしただけでも順位が落ちていく、常に緊張したシーズンだった」と、例年とは違う難しさを語ってくれた。

■「群サイ」イベントを開催する理由

 新井親子が所属するアライモータースポーツでは、シーズン中のあいている時期や、冬のオフシーズンに自社イベントを開催している。2021年1月4日には「2021群サイ走り初め」を開催した。

 タイトルにある「群サイ」とは、群馬県にある「群馬サイクルスポーツセンター」のこと。名前からわかる通り、もともと自転車で山岳路などを走るために作られた施設だ。

 コースレイアウトや舗装路の様子が日本の峠道に似ていることから、最近ではモータースポーツの会場として使われることも多く、峠アタックイベントや自動車メーカーの試乗会に使われることもある。

 今回のイベントは、雪の峠道という一般的にも走るのが難しい道路状況を走ることで、運転技術を身につけてほしいという趣旨で行われたものだ。

 日向では雪が溶けてシャーベット状になっていたり日陰では凍結していたりと、目まぐるしく路面コンディションが変化していく路面を感じながら、「少しでも運転技術を学び、運転が楽しいと思ってほしい。ここで走れる技術がつけば、一般道は楽に運転ができると思う」と、講師を務めた新井大輝選手は言う。

 今回の参加は15人程度で、初めて雪道を走る人も多く、雪道経験者でも「雪の群サイは初めて」という人ばかりだった。そのため、最初はコースを覚えるのはもちろん、雪道に慣れていくことから始める。

 慣れていくに従って速度を上げていく人も多いが、少しでも油断をすると雪壁に突入してしまう。スタックしたり車両に損傷を負ってしまったりした参加者もいたが、それもわかったうえで参加するイベントだ。修理は自己責任。これはあらゆるモータースポーツでの決まりごとだ。

 新井大輝選手は、「危険を伴うので最大限の注意を払う必要はあるが、少し上のドライビングを知ることで、『その先を知りたい』『見たい』と思ってくれることが大事。ラリーの見学も若い人が増えている。いきなりラリーに参加するのは大変だが、少しでも興味を持ってもらえたら」と話してくれた。また、新井敏弘選手は、「競技者として、少しでも競技人口が増えてほしいと思う」と語る。

 このイベントの前日、アライモータースポーツでは、ラリーチームとしての合宿をこの群サイで行っていた。例年、合宿は北海道で行うが、コロナの影響を考慮して群馬を行ったそうだ。この合宿では、今シーズンのラリーに向けての練習だけでなく、競技を目指す若者の育成も行っている。

■国内ラリーが抱える大きな課題

 このように、ラリーチームがファンや将来のドライバーを育てる活動をする背景には、国内ラリーならではの事情がある。新井敏弘選手は、今の国内ラリーが抱える課題を次のように話してくれた。

 「競技に参加するには、とにかくお金がかかる。特にトップクラスで戦うには大きなお金が必要となる。これでは新しい人が、おいそれと競技に入ってこられない。シリーズを通して冠スポンサーがつくことも大事だし、レギュレーションの見直しやクラスの見直しなども必要だと思う。ヨーロッパのラリー文化のように、地域の協力をえたり冠スポンサーがついたりとは、すぐにはならないだろうが、そういう方向に持っていく必要はある」(新井敏弘選手)

■ラリー車は一瞬で通りすぎてしまう

 新井大輝選手はラリーをより身近に楽しむために、ヨーロッパ事情を教えてくれた。

 「ヨーロッパでは、ラリー開催中にインターネットやラジオで常にタイムや順位の情報がえられる。コースサイドで観戦していても、情報がすぐに手に入る。テレビ中継は難しくても、スタートやゴールでドライバーの声を発信するだけで、ドライバーがどういう気持ちで走ってきたのかを知ることができる。そういった情報の発信も重要だと思う」(新井大輝選手)

 ラリーは、サーキットを周回するレース競技とは異なり、目の前をクルマが過ぎたらもう同じクルマの姿は見られない。せっかく苦労して現場に行っても、一瞬で過ぎ去ってしまうのだ。そこで新井大輝選手はこう提案する。

 「観客をいかに飽きさせないか。コースサイドにいてずっと待っていても、一瞬で通り過ぎてしまう。それでは観戦者は楽しめない。また、セレモニアルスタートやゴールも、もっと一般の人に見てもらえる場所で行うことで、ラリーに触れられる機会を増やせる。せっかく街中で開催しているのだから、その土地のよさをアピールするような場所でセレモニーを行うことも重要だと思う」(新井大輝選手)

 筆者も、ラリー取材を通じて会場にいなくても楽しめるような仕組み作りが必要だと感じている。すでにラリー車の位置情報をインターネットで確認できるシステムやYouTubeでの動画配信も始まっているが、それだけでなく、さらに充実した情報発信が重要だと思う。

 そのためには、オーガナイザーやラリーを統括するJRCAが、大型スポンサーを獲得し、資金をえる必要もあるだろう。ラリーファンが増え、競技者が増え、ラリー界が盛り上がる。そんな流れが大切だ。WRC(世界ラリー選手権)の日本ラウンドも予定されている中で、全日本ラリーの発展を見守りたい。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:1/23(土) 7:01

東洋経済オンライン

投資信託ランキング

Yahoo!ファイナンスから投資信託の取引が可能に

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング