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「エコでサステナ」イタリアの新デパートの全貌~イタリアフード界巨人「Eataly」がプロデュース

1/23 14:01 配信

東洋経済オンライン

 2020年12月9日、北イタリアのトリノにオープンした「Green Pea(グリーンピー)」。地球のように丸くてグリーン、という名前が象徴するのは、建物も扱う商品も、環境への負荷を極力抑えたものだけで構成され、グリーンでクリーンなライフスタイルを提案する総合デパートだ。世界に例のない試みとして、注目を浴びている。

■イータリーがグリーンビジネスにも着手

 構想10年、2年の工事期間を経てGreen Peaをオープンしたのは、イタリアの伝統的で上質な食材に特化して販売するセレクトショップチェーン「Eataly(イータリー)」。2007年にトリノに1号店をオープンして以来、今や世界14カ国に43店舗を構える、イタリアフード界の巨人となった。

 その巨人が、「衣・食・住」の食以外の分野とグリーンビジネスに触手を伸ばした背景に、さらなる事業拡大を狙うと同時に、深刻な環境問題が世界を覆うなか、今のままの消費社会を続けていては手遅れになるという危機感、そして大企業としての社会に果たすべき義務感が見える。

 掲げたスローガンにそのことは的確に現れている。「From Duty to Beauty(義務から美へ)」。地球を取り巻く環境問題は、ごく一部の環境問題に敏感な人たちが努力するだけではもはや改善できないほど深刻化している。だからグリーンに興味を持ち、グリーンな商品を身につけることは、義務ではなくてカッコいいことだ、とすべての人々に訴える。

 ファッション界ではすでに何年も前から毛皮はNOで、動物や環境を犠牲にしないアニマルフリー素材に人気が集まってきていることを、もっと広い範囲で応用しようというものだ。

 Green Peaがオープン前の記者会見で挙げた、深刻な環境問題の例のいくつかを以下に記す。

(1)世界で起きた自然大災害:1999年には19件、2019年には1515件
(2)現在、海洋プラスティックの量は1億6500万トン、2050年には海の魚1トンにつき3トン

(3)過去5年間で、世界中の海面が毎年平均4ミリ上昇している
(4)20世紀の100年の間に、過去2000万年に比べて大気中の二酸化酸素濃度が45%増加した
 そして世界の科学者の90%が、地球温暖化はエマージェンシー(緊急)事項と認めていると強調している。

■「バイオリンの森」の倒木を再利用

 総面積1万5000平方メートル、5階建てのGreen Peaの建物は、無機質な鉄骨の上から木材が張り巡らされたデザイン。その木材はイタリア北東部の森から運んできたものだそうだ。

 そのベッルーノの森は別名「バイオリンの森」などとも呼ばれ、ストラディバリウスを始めとする世界最高峰のバイオリン製作に最適なアカモミが伐採されることで知られていた。

 だが2018年10月に起こった巨大嵐で4万1491ヘクタールにも及ぶ森林の木々が倒れ、地元経済に大損害を与えた。なかには樹齢200年にもなる名木もあったという。その倒木をトリノへ運び、建物の外観に利用した。環境に負荷をかけない、資源を再利用する、耐久性がある。グリーンビジネスを語るうえでのキーワードをすべて体現した建築プロジェクトとなった。

 一方、建物内のフローリング材も、ピエモンテ州の過疎の村などから、打ち捨てられた建物の木材を再利用した。新品の木材よりも深みがあり、高級感のあるフローリングに仕上がっている。

 館内に入ると、まずエントランス付近に「ミュージアム」と称するスペースがあり、いくつものモニターに世界のさまざまな環境問題を語るビデオが流されている。ターゲットは主に子どもと若い世代。将来の地球の行方を担う人たちに、現在人類が抱える問題を深く認識してもらうのと同時に、将来の顧客教育も兼ねる一挙両得的な戦略だ。

 そしてFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)が最新型電気自動車を展示販売し、テレコム・イタリアは再生品のスマートフォンを販売する。自宅のエネルギー消費をよりクリーンで環境負荷の低いタイプに変更するためのコンサルカウンターや、石油溶剤を使わないクリーニング店もある。

 1階(日本でいう2階)はインテリアフロアで、イタリアンデザインの美しい家具やシステムキッチンも、すべてエコサステイナブルな製品ばかり。歩く振動が床材に伝わることでエネルギーを生み出す発電システムや、塗料自体が空気を浄化するものなどが実際にフロア内で使われ、紹介されている。

 高級品ばかりでは庶民は環境問題対策に参加できませんね、と質問すると、Green Pea CEOのフランチェスコ・ファリネッティ氏は「ここで扱うシステムキッチンは家電(冷蔵庫、オーブンなど)込みで3000ユーロ(約38万円)から、上は天井知らずの高級品まで選択の幅は広い」と答えた。

 その価格設定が万民向けかどうかは別としても、これからの時代で生きていくうえのヒントや参考になって、とても興味深い。

■コロナ後の新しい世界に向けた消費スタイルを提案

 2階はファッションフロア。もともと環境問題に積極的な「パタゴニア」「ティンバーランド」のほかに、イタリア最高級カシミアブランドの「ドルモア」、トリノ生まれの「ボルボネーゼ」など高級ブランドも並ぶ。みんな何かしらが「エコ」で「サステイナブル」な商品作りをしている企業ばかりだ。海洋プラスチックを集めて洋服、バッグ、靴に作り替えるスペインのブランド「エコアルフ」もある。

 「ビューティー」をテーマにうたう3階は「ブルネロ・クチネリ」「エルメネジルド・ゼニア」「ヘルノ」といったイタリアが誇る高級ブティックが一角に並ぶ一方で、自分の肌に合った化粧品を作ってくれるコーナーや、環境問題、自然がテーマのブックショップ、レストラン、バールという構成だ。

 全館内で使用されるエネルギーは当然、最新型の地熱発電や太陽光電力、地下から吸い上げる水力などを利用し、極力環境に負荷をかけない最先端のシステムを導入している。ここへきて買い物をするかどうかは別としても、環境問題への意識を高め、エコサステイナビリティーについての新しい情報を得る。コロナ後の新しい世界に向けた消費スタイルについて考えるには、最適な場所の1つであることは間違いない。

 1月11日にはスペインのマドリッドがノルウェーのように氷で覆われている、というニュースが流れた。雪が降るのはとてもまれなため除雪設備が脆弱で、車は全面ストップし復旧に2週間かかるという。

 一方で地中海を挟んだ反対側のギリシャは30度を超える暑さで、コロナ下にもかかわらず海水浴をして涼を取る人たちの映像も。明らかに異常気象だ。手遅れになる前に、すべての人類が今一度、環境問題について考えてみるべきときなのではないだろうか。

東洋経済オンライン

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最終更新:1/23(土) 14:01

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