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菅首相が悪夢のシナリオ回避にすべき事は何か

1/22 13:01 配信

東洋経済オンライン

 アメリカでついにジョー・バイデン新政権が誕生した。年初の議会での承認プロセスにおいて、大統領だったドナルド・トランプ氏がデモを呼びかけた結果、一部の支持者が暴徒化して5人の死者が出るという惨事を経ての政権移行となった。

 前代未聞の政治情勢の混乱がなお続くとともに、ツイッター社がトランプ氏のアカウント永久凍結を決定するなど、SNSと政治との関わりについて大きな課題が改めて浮かび上がった。

■バイデン新政権の最重要課題とは? 

 トランプ前大統領は、減税と経済成長率底上げを重視する政策を実現した。また中国の脅威に対して外交・経済安全保障政策を強化するなど一定の成果を残した。だが民主主義のプロセスを危うくするという、政治家にとって大きな汚点を残した。

 議論の是非は分かれるものの、SNSから事実上締めだされ、トランプ前大統領の政治的武器は失われた。共和党議員への大手企業からの献金行動にも影響しており、共存関係にあった共和党との関係が変われば、トランプ家の政治的な基盤は完全に失われるだろう。

 共和党はトランプ家と一定の距離を保ちながらの共存を模索すると見られ、バイデン政権が引き継ぐ2回目の弾劾裁判でも有罪にならない、と筆者は現時点で想定している。だが共和党議員の判断次第(共和党から17人が造反なら有罪の可能性)では、トランプ前大統領の政治生命が完全に絶たれ、これをきっかけにアメリカの政治社会情勢がより不安定化する可能性がある。

 政治情勢は混沌としているが、株式市場にとって重要なことは、今後バイデン政権が繰り出す経済政策である。バイデン政権の政策姿勢はトランプ政権と真逆の部分が多いが、新型コロナ克服と経済正常化が最重要課題であり、これを後押しする政策対応には重なる部分がある。

 1月14日にバイデン氏が発表したアメリカ救済法は、予算規模が1.9兆ドル(GDP比約9%)と大規模である。昨年末の9000億ドルの財政政策に追加して、トランプ前大統領が主張していた家計への現金給付を大人1人当たり2000ドルに増やすプランが含まれている。家計への現金給付は少なくとも3000億ドル規模になり、ワクチン接種によって回復する見込みのアメリカ経済の復調を盤石にするだろう。

 バイデン政権のいわゆるハネムーン期間において、このアメリカ救済法の半分程度つまり1兆ドル規模の財政出動が、3月までに議会で可決すると筆者は予想している。トランプ前大統領の最後の蛮行で共和党議員の政治的立ち位置が難しくなる中で、バイデン政権が共和党上院議員の一部の賛成を得たうえで、スピード重視で可決されると見込む。

 また、バイデン政権は一部の共和党議員との調整を試みると同時に、民主党のいわゆるプログレッシブ勢力(進歩派)の要求に対する政治的対応を迫られるだろう。同勢力が重視する、増税による所得分配強化、ハイテク企業や金融業など勝ち組への規制強化、が早期に実現することが2021年のアメリカ経済にとって最大のリスクであろう。

■菅内閣支持率低下でも、野党支持は伸びず

 だがこのリスクへの懸念が金融市場で強まるのは、コロナの克服と経済正常化が進むとみられる2022年以降ではないか。少なくとも2021年内は、経済正常化が最優先される穏健な政策が続くとみられ、最高値更新が続くアメリカの株式市場が大幅な下落に見舞われるリスクは低い、と筆者は現時点で考えている。

 一方、日本では1月18日に通常国会が始まった。菅義偉首相は施政方針演説において、新型コロナ感染防止を最優先させる姿勢を明確にした。感染拡大を受けて、政権に対する批判が増えて支持率が低下している。

 10月までの総選挙を控える日本の政治情勢は、バイデン政権1年目のアメリカより不確実性が高いかもしれない。日本のメディア報道を読むと、「菅首相では総選挙に挑むのが難しい」との雰囲気が自民党内で醸成されつつあるかのようにみえる。

 ただ、内閣支持率は低下しているが、自民党支持率を合わせてみれば、政権交代につながるほどの状況ではない。実際、批判するパフォーマンスだけが目立つ野党への国民の支持率はほとんど上昇していない。

 また自民党の中でも、菅首相に代わるリーダーとして総選挙の顔になる有望な人材は、ほとんど存在していないと筆者には見える。主義主張が不明確、かつコロナ増税導入などの緊縮的な経済政策に共感する自民党のリーダーが仮に台頭すれば、新型コロナの問題が益々悪化すると多くの国民は懸念するのではないか。

 今からでも新型コロナへの対応をしっかり行えば、菅首相が政権を保つことは可能と筆者は見ている。具体的には、新型コロナ抑制と経済正常化の双方を実現させるのが大前提だ。新型コロナ患者に対応する医療体制を拡充して、他国の情勢を見ながらも着実にワクチン接種を実現することが必要だろう。

一方で、前回の「2021年も米国株が日本株より上昇しそうな理由」でも述べたように、新型コロナ対応の病床は昨年5月時点対比で大きく減っていると報じられている。米欧に比べて圧倒的に人口対比で感染者が少ないにもかかわらず、日本で医療機関が対応できないことが、日本経済正常化の最大の制約の一つになっている。

 医療機関などへの財政支援金は、昨年の補正予算において2兆円規模以上で予算措置が行われたが、これがコロナ治療体制の拡充につながる十分な規模で執行されなかったのだろう。安倍政権の判断で予算措置は行われても、(1)危機に備えた政治判断が行われず、(2)無責任な官僚組織の不作為で歳出が抑制された、と推察される。

■医療機関への大規模な財政出動が必須

 大規模な財政政策を発動して、民間を含めた医療機関の受け入れ能力を高めることは、有力な政策対応になるだろう。菅首相はこうした見解を持つ著名な民間医師と1月16日に面談したが、遅きに失したとはいえ、この提言が取り入れられれば、医療拡充政策が実現すると見ている。

 また、緊急事態宣言発出に伴い、1月15日に飲食店などへの協力金として予備費から約7400億円の支出が閣議決定された。だが、筆者の試算では、緊急事態宣言が1カ月続くと最低でも1兆円程度個人消費が減少する。協力金支給によってある程度の経済損失は相殺されるが、現状のままでは経済的な損失がより大きく、日本経済は1~3月期に再びマイナス成長に陥り、失業率はさらに上昇するだろう。

 この程度の財政支出は、先述したアメリカのバイデン政権と比べると、極めて小規模にとどまっていると評価できる。ただ、2020年度内向けに5兆円以上の予備費が計上されており、財政政策を大規模かつ大胆に行使する余地はある。民間部門への所得補償政策を徹底することが「「コロナ対応」に失敗し、さらにはオリンピック実現も困難になる」という菅首相にとって悪夢のシナリオを避けるために必要だと筆者は考えている。

東洋経済オンライン

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最終更新:1/22(金) 14:21

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