IDでもっと便利に新規取得

ログイン

北朝鮮「第8回党大会」は歴史に残らない大会

1/22 7:01 配信

東洋経済オンライン

■核・ミサイル開発に目新しさなし

 ――1週間続けられた党大会で、金正恩委員長は5回ほど報告や演説を行いました。どのような点が重要だったのでしょうか。

 実は、今回の党大会では重要なことがあまり見えません。もちろん、世界の北朝鮮ウォッチャーにとっては、軍事・核問題を重視する傾向が強い。でも、今回の党大会ではこの分野で目新しい内容はありませんでした。金委員長が述べたような核やミサイル開発を今後も継続する意思が強いということは、まったく新しいことではありません。北朝鮮が今後も、同じような軍事路線を続けることは以前からわかっていることです。

 ――経済制裁解除にとってネックになっている「核開発の放棄」もありませんね。

 北朝鮮の立場に近い韓国の進歩派(革新派、左派)の中でも、「北朝鮮が核を放棄する」という人が最近は減ってきています。今回の党大会でも、北朝鮮は核を放棄する意志がないことを再確認しました。でも、このことはニュースとして伝えるほどの価値はないですね。

 ――とはいえ、金委員長はミサイル開発や先端・戦略兵器という言葉をつかって軍事面で具体的なことを言いましたね。これは異例なのではありませんか。

 「韓国がF35戦闘機を購入した」といった感じに北朝鮮が韓国を非難しましたが、これは少し意味がある発言です。北朝鮮は当然、米韓関係や日韓関係を破壊しようと努力しています。北朝鮮の長期的な目的は、韓国を東アジアで孤立させ、同時に韓国が最先端の兵器などの装備を入手できないようにすることです。これは北朝鮮にとって、とても合理的な政策です。

 今回、この点で韓国を批判したので驚きました。北朝鮮は感情的な怒りを持っているようです。最先端兵器の購入が不満なのでしょう。これこそ、北朝鮮にとって大問題だと考えているのではないでしょうか。

 ――党大会の内容を見ると、軍事面より経済分野に関する言及がはるかに多かったのですが、実は北朝鮮にとって大問題は経済なのでしょうか。

 そうです。最重要課題は経済ですね。党大会での経済関連の発表を聞いて、少し残念に思いました。北朝鮮の指導部は、2012年から始めた市場経済に近づくような経済改革を中止、あるいは後退させようとしているからです。北朝鮮当局は経済について口を開くと、「一心団結、党事業の強化、自力更生」といった何の内容もなく、役にも立たない古いスローガンをオウムのように繰り返しました。

 「経済管理部門で実験を行っていく」という言及もあったので、北朝鮮における経済改革の可能性が完全に消えたわけではありません。まだ少し残っているでしょう。しかし、現段階で北朝鮮指導部は経済改革を中止し、旧式の中央計画経済をある程度復活させる希望があるのは確実ですね。これはよいニュースではありません。

 ――今回、金委員長が「総書記」に推戴されました。

 とても奇妙なことです。金委員長が総書記に就任するということは、「永遠の総書記」として祭り上げた父親をわざわざ下げる行為です。正直に言えば、金委員長がなぜこうしたのかを説明することが難しいですね。もしかしたら、金委員長は父親に対してどこかイライラした、不満があるのかもしれません。

■「総書記」就任は父親への不満の表れ? 

 ――父親にどういった不満があるのでしょうか。

 そう思えるようなことを金委員長はしています。例えば2019年10月、彼は日本海側の景勝地・金剛山観光地区を訪問した際、「先任者たちの誤った政策」と批判したことがありました。しかも「他人に依存しようとした先任者たちの依存政策が極めて誤ったものであった」とまで述べました。ここで言う「他人」は韓国のことです。

 さらに、1月1日に発表してきた「新年の辞」を分析すれば、年を追うごとに金日成と金正日に関する分量が減少してきています。2020年、21年は新年の辞を発表しませんでしたが、それまで先代=金正日についての言及がほとんどありません。今回の党大会でも、金正日時代の代表的な政治路線であった「先軍政治」について触れず、金正恩個人の思想と思われる「人民大衆第一主義」が多く使われています。

 さらには、金正日の死亡直後の2011年12月に本格的に権力を世襲してからは、父親との関係の代わりに、祖父・金日成との関係を強調してきました。

 ――ただ、党大会期間中には「金日成・金正日主義」という言葉が多用されています。

 権力が世襲される国家において、現在の指導者が先代の指導者に対して尊敬の念を十分に示さないのは非常に危険です。金委員長は、父親の名誉を少し破壊しただけです。今の北朝鮮において金正日を格下げするという運動が起こる可能性はありません。

 また、金委員長は世襲政治の下では、ソ連のようにスターリンを格下げしたフルシチョフのような人になることはできず、そうなるつもりもないでしょう。しかし、金正日が「永遠の総書記」となってまだ8年も経っていません。総書記を名乗るのは、とてもよくない選択です。ただ、間接的、暗示的な批判が今後もありうるかもしれません。この点に注目する必要があります。

 ――党大会直後に、国会に当たる最高人民会議も行われました。これから北朝鮮は変わるでしょうか。

 今回の党大会で言えば、これは歴史の記録に残らないというのが、私の結論です。今後、北朝鮮の経済改革が中止、あるいは後退し、それが長期化する状況になったとしたら、未来の歴史学者は第8回党大会に注目するようになるでしょう。

 北朝鮮が経済改革を完全に中止して、例えば2039年に体制が崩壊したとすれば、未来の歴史学者は「北朝鮮崩壊のカウントダウンが始まった事件は2021年の第8回党大会だった」と記録することになるでしょう。

 結局、第8回党大会は騒々しい割には中身がなく、費用だけがかかった大会だったのです。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:1/22(金) 7:36

東洋経済オンライン

投資信託ランキング

Yahoo!ファイナンスから投資信託の取引が可能に

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング