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「レクサスIS」登場7年の今、驚くほど激変した訳

1/22 5:51 配信

東洋経済オンライン

 現行モデルのデビューが2013年だから、つまり7年という月日を経ながら、新型レクサス「IS」は従来型から基本骨格を継承する、いわゆるビッグマイナーチェンジというかたちで開発された。

 レクサスのFR(フロントエンジン・後輪駆動)モデルではフラッグシップの「LS」「LC」ともにGA-Lと呼ばれる最新のプラットフォームを使っていることから、新型ISも当然、それを用いてフルモデルチェンジされると考えられていただけに正直、最初は驚いた。世の論調も「セダン不振で台数が出ないから、コストダウンのためにこうなった」というものばかりなのだが、開発陣に話を聞いてみると、意外や理由はそうした後ろ向きのものではなかったようである。

■大きくしない、重くしない、値段を上げない

 レクサス インターナショナルの小林直樹チーフエンジニアによれば新型ISは「サイズを1mmも大きくしない」、「重量を1gも重くしない」、「価格を1円も上げない」というコンセプトで開発に着手したという。そこに込められたのは「そうすることでFRコンパクトスポーツセダンとして光るクルマを作りたい」という思いだ。

 その背景には世界的なセダン不振がある。今や乗用車の主流はSUVで、かつては花形だったセダンには活気が無い。そんな中、惰性でこれまでの延長線上のクルマ作りをしていては、セダンもFRも存続できないのではないかという危機感があったのだという。実際、LSとISの間に位置していたGSは昨夏、販売を終了している。ISだって、いつそうなってもおかしくはない。

 一方で、2020年よりレクサス インターナショナルを率いる立場となった佐藤恒治プレジデントは別の機会に「FRはプレミアムカーブランドの通行手形のようなもので、やめるわけにはいかない」とも話していた。では一体、どうやってISの存在を再び光り輝かせ、セダンの、FRの、存続につなげるのか。それが大きくしない、重くしない、価格を上げないというコンセプトだったのだ。

 冒頭に挙げたGA-Lは、高いポテンシャルを備える一方で、LCやLSといったモデルを念頭に生み出されたことから、そのまま使えば車体は大きく、重くなる。そこで開発陣は、GA-Lを使わずに既存のプラットフォームをベースに理想のFRコンパクトスポーツセダンを作れないかという模索、検討を始めたのだという。

 実はそんな噂は耳に入っていたのだが、正直なところ筆者は実現について難しいのではと考えていた。何しろISの基本骨格は2011年デビューのGSと共通であり、つまりルーツは2003年に登場したゼロ クラウンなのだから。しかしIS開発チームは、シャシーの大幅なアップグレードによって、見事それを可能にしてみせた。

 まず着手したのはタイヤサイズの変更。これによってグリップ力のキャパシティを拡大した。そしてバネ下、つまりタイヤとともに動くサスペンション部品の軽量化だ。重い靴を履いたら走りが鈍くなるのは人間も同じ。タイヤサイズが大きくなった分を、ここで相殺したのである。

■ヨーロッパ車と同じ構造を採用

 新型ISは、その一環としてレクサス車では初めてタイヤの車体への締結にハブボルトを用いている。車体側からスタッドボルトが突き出していて、そこにホイールをはめ込む従来の方法とは異なり、車体側には孔が開いていて、そこにホイールをボルトで締め込むハブボルト式は、実はヨーロッパ車では当たり前。簡単なようで実は生産ラインの刷新も必要な、シャシー技術者にとっては悲願の変化が、ここで実現したのである。

 「ここまでやれば今の時代にレクサスが出すコンパクトスポーツセダンとして、思ったところに行けるんじゃないか。そう確信できて、初めて開発が本格的に動き始めたんです」と、小林チーフエンジニアは振り返る。実際、開発着手はデッドラインの本当にギリギリのところだったそうだ。

 もちろん、方向性は定まっても開発は簡単には進まない。タイヤのグリップ力が高まれば、サスペンションの強度も必要になる。しかも同時に軽量化も求められているのだ。当然、受け側のボディだって剛性を高めたい。けれど重くはしたくないし、車両価格だって上げたくないとなれば、そこにかかるコストをどこかで削らなければならない。

 「それがチーフエンジニアの仕事ですよ。皆が動きやすいように調整する役ですよね」と、小林チーフエンジニアは言う。実際、車両重量は先代に対して、たった10kg増に抑えられている。

 3種類が用意されたパワーユニットも、ハードウェアは不変ながら間違いなく走りの進化に貢献している。とくにハイブリッドの「IS300h」は、従来感じられたクルマとの一体感の無さが解消されて、アクセルを踏めばクルマがスッと前に出るようになった。当たり前のことが、当たり前にできるようになったのだ。

 そこには長年ハイブリッド車を手がけてきたからこその知見が反映されている。不必要なマージンは削り、バッテリーを余さず使い切る。燃費を犠牲とせずにレスポンスを高める。こういった蓄積は一朝一夕にできるものではない。

 デザインにも触れないわけにいかない。狙ったのはコンセプトどおり、FRコンパクトスポーツセダンとしての直球のカッコよさ。タイヤサイズの拡大により全幅はわずかに広がり、それとのバランスで全長も若干伸ばされているが、造形のためだけの余計な拡大は避けられ、その中でワイド&ローのフォルムが形作られている。

■大胆に変化しているのに価格は据え置き

 しかも各部の造形は非常に切れ味がよい。とりわけ世界初という寄絞り構造によって成形された複雑な形状のトランクリッド、レクサス初の突き上げ工法でシャープなキャラクターラインを得たリアフェンダーなどは印象的で、陽光の下で眺める姿はとても切れ味鋭く、美しい。

 結果として新型ISは、ハードウェアは確かにマイナーチェンジなのだが、走らせれば日常域からFRらしい意のまま感が色濃く、いわゆる操る楽しさを濃密に感じさせてくれる。そしてその姿は、理屈抜きのシャープな存在感を発揮している。

 さらに驚くのは……いや、確かにそう宣言されてはいたのだが、これだけ大胆に変化しているにも関わらず、価格が据え置きとされていることだ。端数が均された結果、グレードによっては安くなっているものすらある。

 「価格は上がっていないのに性能はめちゃめちゃ上がって、『やっぱりFRの走りは違うな』とか『カッコいいなFRセダンって』と思ってもらえるものを送り出したいじゃないですか。デザイン、設計、生産技術、製造までワンチームで開発を進めた結果として、こういう形ができたんです」と、小林チーフエンジニアは振り返る。

 確かにプラットフォームの継続使用はコストダウンのためでもあったのだろう。しかし、それがこうしてユーザーに還元されるならば、文句を言う余地など無いはずだ。

 実際、世間の反応は大きく、受注開始後の初期オーダー数は予想以上だという。目新しさよりも本質的な意味でのいい車を信じて送り出す作り手が居て、それを理解し受け止めるユーザーがいる。今回のISのモデルチェンジを見ると、レクサスがしっかり“ブランド”になったなと強く感じさせるのである。

東洋経済オンライン

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最終更新:1/22(金) 11:39

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