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韓国‟感染"ホラー「Sweet Home」が必見なワケ~「愛の不時着」でお馴染みスタジオドラゴン製作

1/22 16:01 配信

東洋経済オンライン

Netflix、Amazon プライム・ビデオ、Huluなど、気づけば世の中にあふれているネット動画配信サービス。時流に乗って利用してみたいけれど、「何を見たらいいかわからない」「配信のオリジナル番組は本当に面白いの?」という読者も多いのではないでしょうか。本記事ではそんな迷える読者のために、テレビ業界に詳しい長谷川朋子氏が「今見るべきネット動画」とその魅力を解説します。

■ロマンス系韓国ドラマで注目された俳優を起用

 2020年に日本でブームが再来した韓国ドラマ。いまだNetflixの「今日の総合TOP10(日本)」には『愛の不時着』をはじめ韓国作品群が上位を占め、勢いが止まる様子はありません。

 その理由を考えると、演技のうまい美男美女の次世代スターが次から次へと発掘されていることが大きいのではないかと思うのです。それもまた戦略的に。世界のNetflix会員2200万世帯が再生したホラー系SFサスペンス『Sweet Home -俺と世界の絶望-』の主人公ヒョンスに起用されたソン・ガンもそのひとりです。

 『Sweet Home』はある種のパンデミックが突如発生する2020年夏の韓国のアパートが舞台。リアルの世界でも新型コロナウイルスが蔓延し始めた歴史に残る年をあえて設定し、不穏な予感を漂わせます。

 でも、ドラマの中で起こるパンデミックはウイルス系でもゾンビでもありません。ゆがんだ人間の欲望がさまざまな形のモンスターに変異するというもの。人が持つ物悲しい感情に焦点を当てたところが哲学的であり、その先にある韓国得意の人間ドラマを想像させます。ただし、残念なのは既視感のあるモンスターのキャラクターデザイン。ホラー作品であれば、こだわるべき“不気味さ”に欠けています。

 それでも見進めてしまう魅力は配役にあるのです。マスを狙うエンターテインメント作品であることを意識している配役なのです。主人公であり、家族を失った引きこもりの高校生チャ・ヒョンスを演じるソン・ガンはNetflixオリジナルのロマンス系『恋するアプリ Love Alarm』でソノ役を演じて、その笑顔に虜になったファンが多いと評判です。次世代スター感たっぷりの端正な顔立ちで、なおかつ演技もお上手。たとえ、ホラーが苦手な人も『Sweet Home』では孤独を抱える役柄のソン・ガン見たさに引き込まれるはずです。

 ソン・ガンだけが、ファン集めを一手に引き受けているわけではありません。ドラマ『ホテルデルーナ ~月明かりの恋人~』で注目を集めた若手俳優イ・ドヒョンの起用もあります。アパートの住人を引っ張る冷徹なリーダー、イ・ウンヒョク役を好演しています。

 ソン・ガンとイ・ドヒョンのこの2人は、インスタグラム上で話題になった世界のエンターテイメント作品ランキングの最新結果にも貢献しているのです。アメリカ・テレビ業界誌大手のWorldScreenがスイスのテレビ調査会社The WITの協力により、ソーシャルメディアで話題を集めた番組を毎月報告している「Social Wit List - December 2020」において、『Sweet Home』が世界8位に食い込みました。世界の新作を対象に、欧米の話題作が並ぶなか、なかなかの健闘ぶり。

 ソン・ガンの430万人フォロワー数(インスタグラム、2020年12月集計)とイ・ドヒョンの230万人フォロワー数(同)が牽引力となっていることも報告されています。

■見る人を飽きさせない「配役の妙」

 ロマンス系でキラリと光っていた新人女優たちの役の振り方も絶妙です。コ・ミンシ(『恋するアプリ』)はイ・ドヒョンの妹設定で危なげな雰囲気を持つ美少女イ・ウンユ役、パク・ギュヨン(『サイコだけど大丈夫』)は女子ウケするガールクラッシュなユン・ジス役で新境地を拓いています。

 俳優ばかりでなく、日本でもリメイクされたドラマ『ボイス ~112の奇跡~』で迫力のある演技が印象的だった個性派俳優のイ・ジヌクは、顔にやけどの跡があるヤクザ風のピョン・サンウクを演じています。プライベートでは女優チェ・ジウの元恋人というゴシップもあり、知る人ぞ知る俳優です。

 次から次へとキャラが立つ演技の上手な役者陣が子役に至るまで登場し、サバイバルするアパート内で人間関係が構築される過程も飽きさせません。

 そして、モンスターパンデミックの謎も少しずつ解き明かされていくのですが、そのカギを握る人物としてソ・イギョンに扮するアクション女優のイ・シヨンの活躍も目立ちます。モンスターとの対峙シーンはSFホラーの金字塔『エイリアン』のリプリー(シガニー・ウィーバー)と一瞬見間違えるほど。精神的にも体力的にも強い女性キャラクターは男女共に人気を得る欠かせない役柄です。そんな重要な役どころに、幅広い年齢層から支持を集めやすいアラフォーのイ・シヨンを据えるところも配役の妙なのです。

■泣く子も黙る「スタジオドラゴン」作品

 『Sweet Home』が本流を行く手堅さは制作背景からも感じることです。原作はNAVERウェブトゥーンで英語・日本語・フランス語・スペイン語・中国語など9カ国言語でサービス展開され、世界累積閲覧回数12億再生を記録する人気作。なお、ウェブトゥーンとは縦スクロールで読めるウェブ漫画のことで、「スマホでサクサク読みやすい」と日本をはじめ海外にも広まっている韓国発のもの。世界で渡り合える“ストーリー産業”を生み出そうと、政策によって促進されていった韓国IP活用の本丸です。

 その戦略どおりにウェブトゥーン原作のドラマが増えています。日本では『愛の不時着』と人気を二分したドラマ『梨泰院クラス』もウェブトゥーン原作です。今回の『Sweet Home』のような地上波ドラマでは成立しにくいグロテスクな表現の多い作品も世界配信でIP活用できるため、新作ウェブトゥーンが続々と生み出されているわけです。

 イ・ウンボクを監督に迎え入れていることからも本気度がうかがえます。『ミスター・サンシャイン』『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』『太陽の末裔 Love Under The Sun』といったヒットメーカーとチームを組んでいます。この作品群を挙げただけでも宣伝効果は十分ですが、プロダクション名を聞けば、さらに納得。泣く子も黙るスタジオドラゴンです。

 韓国大手財閥のCJグループの傘下で資金力もあり、『愛の不時着』をはじめNetflixとのタッグによって世界的にも知名度も上げています。オープニングにプロダクション名がバーンとドヤ顔で入る作品の1つです。それを見て、「面白そうだと思ったら、やっぱりこれスタジオドラゴンなのね」と、通なNetflixユーザーがドヤ顔で返す好循環を生み出していそうです。

 そんなスタジオドラゴン作品ファンによってか、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツ、カタール、UAE、インドなどの多くの国で『Sweet Home』が支持されています。

 幅広い地域で結果を残す韓国発のNetflixオリジナルドラマや映画が多いことから、Netflixはさらに韓国コンテンツの投資額を増やそうと、韓国ソウル近郊に位置する京畿道の坡州市と漣川郡に2つのプロダクション施設を設立することをこのほど発表しました。

 2015年から2020年までの5年間だけで韓国で製作されたNetflix作品数は80本以上に上ります。ドラマ1話平均の製作費1億円は当たり前と言われ、総投資額は7億ドル(日本円で約728億円)という圧倒的な数字。これを上回る勢いで、投資拡大を進めていくというのです。スタジオ増強で製作環境も向上し、正の連鎖まっしぐらです。

 ロマンス系ばかりでなく、ホラーにまで韓国イケメンと美女をそろえて、ストーリーにアジアらしい味わいを重ねる『Sweet Home』はそんな韓国の好調ぶりがわかる作品でもあるのです。未発表ゆえにシーズン2をにおわせるラストのシーンにはもどかしくなりますが、世界ヒット級のアジアエンターテインメントを確立させようとしている強(したた)かさを確認するだけでも十分に価値があります。

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最終更新:1/22(金) 16:01

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