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「酒飲むと太る」という人に教えたい医学的知識

1/21 17:01 配信

東洋経済オンライン

「アルコールはエンプティーカロリー(空っぽのカロリー)だ」と言って、酒量を気にせず飲む人もいるようです。本当にそうなのでしょうか?  近著に『代謝がすべて』がある内科・循環器科の専門医である池谷敏郎氏が、今回は「アルコールと肥満」の関係について解説します。

前回:泥酔防止に「トマトジュース」が効く医学的根拠

■代謝に必要な栄養素を多く摂ればいいわけではない

 お酒と栄養素に関係する話で、ビタミンB1やナイアシン(ビタミンのひとつ)、タンパク質なども、「お酒を飲むときには摂ったほうがいい」と言われることがあります。

 これらの栄養素は、たしかにアルコールを代謝する過程にかかわりが深いのですが、意識的に補給すればアルコール代謝が高まるのか、肝臓の働きが高まるのかというと、そう単純な話ではないと私は考えています。

 アルコールをアセトアルデヒドにする際、アルコールの量が多いと、アルデヒド脱水素酵素以外の酵素も働きます。

 ビタミンB1は、その補酵素(酵素を助けるもの)として使われます。ナイアシンは、アルコールをアセトアルデヒドに分解するアルコール脱水素酵素、アセトアルデヒドを酢酸に分解するアルデヒド脱水素酵素の補酵素として働きます。タンパク質は、そもそも肝臓の材料となるものであり、また、アルコールの分解にかかわる酵素もタンパク質でできています。

 それぞれたしかに、アルコールの代謝には必要不可欠な栄養素です。ただ、お酒を飲む前後で補給すれば、その分、働きが良くなるのかというと、そういうわけではないでしょう。

 そもそも私たちの体には、ちゃんとストックがあるはずなのです。

 例えるならば、「トイレに入るときにトイレットペーパーをもって入ったほうがいいよ」と言っているのと同じようなものです。トイレでトイレットペーパーは必要だけれど、基本的にトイレには十分に備わっていますよね。持参して入ったところで、トイレットペーパーを2倍使えばトイレで用を足すのが2倍に速くなるわけでもありません(笑)。

 同じように栄養素も、何かの代謝に必要だからといって、必ずしも一緒に摂ったほうがいいとは限りません。また、一緒に摂ったからといって、その代謝が高まるかというと、話は別なのです。

 一方で、ビタミンB1は玉ねぎやニンニク、ニラなどと一緒に食べると吸収が良くなると言われます。玉ねぎ、ニンニク、ニラに共通して含まれるアリシンという成分とビタミンB1が結合すると体内への吸収率が高くなるからです。この場合は、吸収の現場で必要なので、一緒に摂ると有効です。

 何かの吸収に有用だから一緒に摂るという話と、体内での代謝に必要だから一緒に摂るという話は別です。それを混同して、医学的なエビデンスはないものまで、「○○には△△という栄養素が使われるので、一緒に摂ったほうがいい」と言われていることが多いように感じます。

■アルコールの代謝は起きているほうが高まる

 そもそも、アルコールを解毒する肝臓の代謝はコントロールできるものでもないように感じます。必要なときに必要な分だけ働く臓器なので、「これを食べれば肝臓の代謝が高まる」というものはないでしょう。

 肝臓の専門家のなかには、「肝機能を高めるにはタンパク質がいい」とおっしゃる方もいますが、飲酒前後でタンパク質を摂ることでアルコールの分解が早くなったという有力なデータは、今のところ見当たりません。

 もうひとつ付け加えるなら、アルコールの代謝は起きているほうが高まります。睡眠中は、アルコールの分解能力が下がるのです。早く酔いを醒ましたいと思ったら、眠らずに、起きているほうが賢明です。あるいは、起きていられないほど深酒をしてはいけない、とも言えますね。

 寝る前の1杯もおすすめできません。アルコールは睡眠の質を悪くするからです。アルコールが分解されてアセトアルデヒドができると、交感神経が緊張し、目が覚めやすくなります。お酒を飲んでそのまま寝たら、深夜に何度も目が覚めたという経験はありませんか。

 「眠れないから」といってお酒の力を借りて眠りに就こうとする人もいますが、アルコールによってもたらされる睡眠は、生理的な眠りとは異なるものであると言われています。寝酒は薬にはなりません。

 ところで「アルコールはエンプティーカロリー(空っぽのカロリー)だ」と言われることを知っていますか。エンプティーカロリーと言われる理由は、アルコールには体に役立つような栄養素がほとんど含まれておらず、体に蓄えられないからです。

 では「アルコールはエンプティーカロリーだから太らないのか?」「お酒を飲んでも太らないのか?」と聞かれれば、前者の答えは「太らない」ですが、後者の答えは「太らないとは言えない」と、分かれます。

 アルコールは1gあたり7kcalのエネルギーを生みます。糖質とタンパク質は1gあたり4kcal、脂質は1gあたり9kcalなので、糖質やタンパク質よりは多く、脂質よりは少ない量のエネルギー量をもっているということです。

■肝臓はアルコールの代謝を優先的に行う

 アルコールを分解してできるアセトアルデヒドは有害なので、肝臓はアルコールの代謝を優先的に行い、アルコールで摂った分のエネルギーは速やかに使われます。だから、体に蓄えられないエンプティーカロリーとされているのです。

 そのため、アルコールだけであれば太ることはありません。アルコール中毒に陥っている人というのは、やせているイメージがありませんか。そのことからもわかるように、アルコール自体のエネルギーはほとんどがすぐに使われるので、中性脂肪として蓄積されにくいのです。

 ただ、お酒を飲んでも「太らないとは言えない」のは、お酒の種類によっては、糖質が含まれているからです。糖質が含まれているお酒を飲めば、当然、血糖値が上がり「肥満ホルモン」のインスリンが分泌されます。

 糖質が含まれているのはワイン、ビール、日本酒などの醸造酒です。焼酎、ウイスキー、ウォッカ、ジンといった蒸留酒には糖質は含まれていないので、飲んでも血糖値は上がりません。もちろん、甘いジュースなどで割れば血糖値は上がりますが。

 醸造酒に含まれている糖質量は、次のとおりです。

 ・ビール中ジョッキ1杯(400ml)で12gほど
 ・白ワイングラス1杯(125ml)で2.5gほど
 ・日本酒1合(180ml)で6.5gほど(純米酒、吟醸酒の場合)

 
 ごはん1杯(150g)分の糖質量は約55g、食パン1枚(6枚切り・60g)では約27gですから、こうした主食に比べると、「ビール腹」なんて言われて太りやすいイメージのあるビールでさえも、よっぽどの量を飲まない限り、糖質量はそこまで多くはありません。

 飲酒習慣がある人が太りやすいのは、お酒そのものよりも、むしろ一緒にとる食事のほうに原因があります。

 お酒を飲むと、アルコールを分解してできたエネルギーを優先的に使いやすいということは、その分、体内に蓄積されている脂肪や食事で摂った糖質がエネルギー源として使われるのが後回しになるということです。

 それなのにフライドポテトやポテトサラダ、練り物、ピザ、ごはんもの、焼きそば、ラーメンといった糖質の多いメニューを食べれば、そのまま蓄えてしまいやすい。つまり「ビール腹」というよりも、正体は「ポテト腹」や「〆のラーメン腹」なのです。

■糖質の少ないおつまみを選ぶ

 なおかつ、アルコールは肝臓での中性脂肪の合成を促進するという報告もあります。肝臓でアルコールの分解が進むと、それに伴い、中性脂肪の合成が必要以上に高まってしまうのです。

 しかも、アルコールは食欲を高める効果もあります。飲んでいると、つい、つまみをどんどん頼みたくなってしまいませんか。お酒を飲むときには、「脂肪として蓄えられやすい」ことを心して、糖質の少ないメニューを選びましょう。

 こういうときこそ、タンパク質である肉・魚、そして豆とともに、糖の吸収を抑える働きをする水溶性食物繊維が味方になります。水溶性食物繊維が豊富なのは、ネバネバ系の野菜や海藻、大豆、ゴボウなどです。

 ビールのお供によく食べる枝豆も、大豆を未成熟な状態で収穫したものなので、大豆ほどではないとはいえ、タンパク質とともに水溶性食物繊維も含まれています。そういう意味でも、枝豆はビールのよき相棒なのです。

東洋経済オンライン

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最終更新:1/21(木) 17:01

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