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「赤い電車」と言えば名鉄、愛知ご当地鉄道事情 多種多様な電車と複雑な路線網のクセがすごい

1/19 5:51 配信

東洋経済オンライン

 日本三大都市といえば、東京・大阪・名古屋である。一部には3番目は名古屋ではなく札幌だとか福岡だとかいう意見があるようだが、人口を見れば200万人を超えるのは政令指定都市でも横浜・大阪・名古屋だけだから、やはり名古屋は三大都市の一角だ。今回は、その名古屋がある愛知県の鉄道事情がテーマである。

 愛知県の鉄道の旅は、東から向かうとだいたい豊橋から始まることになる。静岡県との県境は東海道本線の新所原―二川間にあるが、新幹線も停まる東三河の玄関口・豊橋をスタート地点とすることに異論がある人は少ないと思う。

■名鉄の存在感は大きい

 豊橋駅から名古屋方面に向かう手段は、新幹線を除けば2つ。JR東海道本線と名鉄名古屋本線だ。この2路線は互いに競合する関係にある。

 同じ区間を大路線2本が並んで走ることができるのは、まさに名古屋に限定せずとも愛知県全域が"大都市圏”であることの証しといっていい。そして名古屋鉄道はこの名古屋本線を軸としつつ、愛知県内各方面に路線の羽を広げている。

 愛知県の鉄道を語るならば、とにもかくにも名鉄を語るべし――。そう言われているほどに、名鉄の存在感は大きい。というわけで、今回は名鉄に絞って旅をすることにしよう。

 名鉄の路線は、すでに書いたとおり豊橋―名古屋―岐阜を結んで走る名古屋本線が最大の大動脈である。そしてその途中そこかしこからたくさんの路線を延ばしている。

 豊橋駅から名鉄に乗ってしばらくすると国府(こう)という駅に着くのだが、そこから豊川線という路線が分岐している。豊川線の終点は豊川稲荷駅。豊川稲荷はご存じ日本三大稲荷の1つ(諸説ある)で、駅前から続く門前町はいなり寿司発祥の地(これまた諸説ある)としても知られている。

 ライバルのJR東海道本線は三河湾沿いの海側を走るが、名鉄名古屋本線は山側の旅。東岡崎駅は近くに徳川家康生誕の岡崎城があって、岡崎市の中心市街地が広がっている。

 そして“日本のデンマーク”として有名な安城市の新安城駅からは西尾線が分かれる。ほぼまっすぐ三河湾を目指して南に向かい、大手自動車部品メーカー・デンソーの生産拠点がある西尾市内を走り、吉良吉田駅が終点だ。

■三河湾の車窓が楽しめる

 吉良吉田駅からはさらに蒲郡に向かって蒲郡線が延びており、2つあわせて“西蒲線”などと呼ばれることもある。名鉄の路線の中では利用状況があまり芳しくなく、存廃の危機にある路線といっていい。が、その蒲郡線の車窓から見る三河湾の風景は、名鉄随一の名車窓だ。

 西尾線と蒲郡線の境界にある吉良吉田駅、ここはあの殿中でござるの吉良上野介を輩出した吉良氏が代々治めた領地。赤穂浪士のせいですっかり悪役が定着してしまった上野介も、地元では慕う人が多いという。

 この吉良吉田駅からはかつてもう1つの名鉄の路線が延びていた。三河線といい、蒲郡線とは反対の西に進んで碧南駅からは北へ。2004年に三河線碧南―吉良吉田間は廃止されてしまったが、現在も碧南―刈谷―知立―猿投間の三河線は健在である。

 三河線は名古屋本線の知立駅を中心に山側と海側で運転系統が完全に分かれている点が特徴。線路の構造上、山側と海側を直通する列車の設定はできず、「山線」「海線」などと呼ばれるのが通例となっている。

 山側に行くと天下のトヨタ自動車の本拠地であるところの豊田市へ。豊田市駅からは(正式には梅坪駅で分岐)内陸を通って名古屋市内を目指す豊田線も通る。名鉄としては赤池駅止まりだが、名古屋市営地下鉄鶴舞線に直通、名古屋市の中心部を貫いているのだ。豊田市内にはほかにも愛知環状鉄道線も通っていて、“クルマ社会”の愛知県を支えるトヨタ自動車の街は鉄道でのアクセスも実に便利なのである。

 名古屋本線に戻ると、しばらくは分岐路線を持たずに名古屋市のベッドタウンを駆け抜ける。そして神宮前駅(“神宮”とは熱田神宮のことだ)から南側、知多半島に向かっては常滑線が延びている。常滑線はもともとは常滑特産の陶磁器輸送のために誕生した路線なのだが、今では名鉄の路線網の中でも特に大きな役割を担う。そう、セントレア、中部国際空港である。

 常滑線終点の常滑駅から、そのまま延伸するように名鉄空港線が海を渡って人工島の中部国際空港へ。セントレア唯一のアクセス鉄道で、名古屋市内方面に向かって特急「ミュースカイ」が運転されている。

 名鉄といえば赤、というイメージを持っている人が多いかもしれないが、「ミュースカイ」の列車カラーは青。一部の特別車を除いて特別料金不要の名鉄特急において、唯一全車両で特別料金が必要な“全車両特別車”。その点でも、常滑線と「ミュースカイ」が特別な存在なのがよくわかる。

 常滑線は途中の太田川駅にも分岐路線の河和(こうわ)線がある。河和線は知多半島を縦断して富貴駅で知多新線を分け、三河湾沿いの河和駅が終点だ。河和線も知多新線も名鉄特急が乗り入れる路線であり、知多半島の人々にとっては実に重要な通勤通学の足である。

■乗り換えに便利な金山駅

 特急「ミュースカイ」をはじめ、常滑線や河和線を走る名鉄特急はすべて神宮前駅を介して名古屋本線から乗り入れてくる。つまり神宮前駅から先は運転本数が激増する名古屋鉄道でいちばんの稠密区間というわけだ。そこで、神宮前―金山間は名古屋本線と常滑線で列車を使い分ける「方向別複々線」として、多数の列車をさばいている。

 そして金山駅は名鉄のホームを中央において、それを挟み込むようにJR中央線と東海道本線のホームがおかれている。名鉄がJR東海を両脇に従えて堂々と「愛知の鉄道の中心はオレだ!」と主張しているかのごとく、名鉄中心のターミナルだ。名古屋市営地下鉄の名城線と名港線も乗り入れている。

 名古屋駅では名鉄の駅が地下にあるのでJRとの乗り換えは少し不便。だからJRの在来線と名鉄の間で乗り換えをしようとするならば、“総合駅”ともいわれる金山駅を使うのが楽ちんである。

 金山駅から再び複線に戻って地下に入り、名鉄最大のターミナル・名鉄名古屋駅。地上は巨大な着せ替え人形「ナナちゃん」でおなじみ名鉄百貨店だ。

 名鉄の列車は名古屋本線を中心にいくつもの支線を持ち、その多くで名古屋本線からの直通列車が設定されている。だから、名鉄名古屋駅からの行き先は文字通り多種多様。豊橋方面に向かう列車だけをとっても、豊橋行に東岡崎行き、さらには豊川線直通の豊川稲荷行きに西尾線直通の西尾・吉良吉田行き、常滑線方面の中部国際空港行や河和線河和行きなど、まさにあちらこちらへの列車が名鉄名古屋駅に集う。

 ところが、名鉄名古屋駅は3面2線というターミナルとは思えないほどのシンプルな構造になっている。上りと下りで線路を分けているだけで、多様な行き先の列車が同じホームにやってくるというわけだ。分刻みでやってくるあらゆる行き先のあらゆる種別の列車をたくみにさばく名鉄の運用術はもちろんのこと、列車を間違えずにこともなげに乗り込んでゆく名鉄ユーザーたちの動きにも圧倒されること間違いなし。ときに神業と称されることもあるくらいだ。

 が、裏を返せばこの名鉄名古屋駅は間違いなく初見殺し。見ているのは面白いけれどなんとかならないものか。すると、2019年3月にホームの拡張計画が発表された。これで初心者でも安心……と思ったのもつかの間、新型コロナウイルスの影響でこの拡張計画の着工も延期されてしまった。

■西尾線があれば尾西線もある

 日本一といっていいほど複雑怪奇な名鉄名古屋駅を過ぎてしばらくすると、犬山線が北東に向かって分かれていく。犬山線の末端近く、犬山駅では広見線とも接続、終点の新鵜沼駅では各務原線と接続している。特急「ミュースカイ」なども乗り入れる、名鉄にとっては名古屋本線に次ぐ重要路線の1つだ。明治村やモンキーパーク、国宝犬山城などの観光地へもこの犬山線で行くことになる。

 その先も分岐路線が立て続け。須ケ口駅で津島線、名鉄一宮駅で尾西線が分かれる。津島線も尾西線も愛知県の西の端っこを走る通勤路線で、1898年に弥富―津島間で開通した尾西線は名鉄全路線の中で最も古い。開業当時は尾西鉄道といい、その後いくつもの事業者が合併して名古屋鉄道を形作っていく中で、尾西鉄道も吸収されている。

 名古屋本線は木曽川堤―笠松間で木曽川を渡る。木曽川の先は岐阜県だ。岐阜県内にも各務原線や竹鼻線・羽島線などの名鉄の路線がいくつもあるのだが、それはいずれ岐阜県の鉄道事情を紹介する際に触れることにしよう。

 いずれにしても、このように名鉄の路線ははっきり言って奇々怪々。名鉄名古屋駅の複雑さを取り上げるまでもなく、全線をうまく乗りこなすのはかなりの難易度である。私鉄ではほかにも東武鉄道や近畿日本鉄道のようにたくさんの路線を持っている会社があるが、それと比べても名鉄は難しい。

 それは、ひとえに名古屋本線から支線へ直通する列車設定が中心だから。乗り慣れた地元の人は、この直通列車を選んですいすいと移動しているが、これは初心者にはかなり大変だ。慣れないうちは、名古屋本線だけを走る列車(名鉄岐阜行き・豊橋行き)に乗って、分岐駅で乗り換えるべし。多少待ち時間が増えるかもしれないが、そのほうが間違いがなくて安心である。

■個性的な小牧線と瀬戸線

 ほかの名鉄路線とは少し趣の違う路線が2つある。1つは地下鉄上飯田線から直通して愛知県北部を南北に走り、犬山駅までを結ぶ小牧線。春日井市や小牧市といったベッドタウンを駆け抜ける。小牧駅からは、かつて桃花台ニュータウンに向かって桃花台線という新交通システムがあった。たったの15年で廃止されてしまった幻の新交通システムだが、その廃線跡の高架は今でも一部に残されている。

 もう1つは名古屋市中心部の栄町駅から瀬戸焼、そして藤井聡太二冠の出身地としても有名になった瀬戸市までを結ぶ瀬戸線だ。小牧線は直通こそないが犬山駅で犬山線と乗り換えられる。しかし、瀬戸線はまったくほかの名鉄路線と接していない完全なる飛び地路線なのだ。

 もちろん車両も瀬戸線独自。今では名古屋市中心部は地下に潜っているが、かつては路面電車となって名古屋城の外堀の中を走っていて、お濠電車と呼ばれていたこともあるほどだ。ルーツは常滑線がそうであったのと同じく瀬戸焼を運ぶため。お堀端で瀬戸焼を降ろし、最後は水運で港まで運んでいたという。

 名鉄の各路線を簡単に述べるだけでも、さすがに文字数が増えすぎた。JR東海道本線を中心としつつ、愛知の鉄道のルーツである武豊線、名古屋市営地下鉄など、まだまだ魅力ずくめの愛知県の鉄道旅行、続きは次回にしよう。

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最終更新:1/22(金) 8:42

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