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今の株式市場は「少しカオしてる」かもしれない

1/18 11:01 配信

東洋経済オンライン

 今回も結論から言えば、株価シナリオに対する筆者の大きな枠組みは変わっていない。

■バブルだと唱える人が多いうちはバブルではない

 足元の日米等主要国の株価は、ひと休みしている経済実態に比べると、買われすぎであると懸念している。だが「バブル」だとはまったく考えていない。なぜかと言えば、「バブル」だと唱えている人が多いからだ。

 本当にバブルに陥るのは、日本で1989年末の高値を形成したときのように、ほとんどの人が「これはバブルだ」と言わないどころか、バブルという言葉が頭をよぎることすらない事態だろう。それどころか、そのときの途方もない高値が実体経済や企業収益と比べていかに妥当か、という「珍説」が、自信をもって叫ばれたときこそが、バブルだ。

 つまり、現状については、たとえば日米のPER(株価収益率)が50倍や100倍になったわけでもなく、株価が上がったことや株価水準そのものは特に問題視するには当たらないと考える。

 それでも、昨年11月以降の株価の上昇スピードが、足元の景気や企業収益のもたつきに比べると速すぎる。そのため、短期的(むこう1~2カ月程度)には、主な株価指数は1割程度下落すると考える。日経平均株価なら2万5000円割れ、ニューヨークダウなら2万7000ドル程度のイメージだ。1割前後の下落であれば、株式市況では日常茶飯事のことだ。

 その後、今年末にかけては、コロナ禍を徐々に抜け出し緩やかながら回復基調を続ける景気や企業収益が、株価を支えそうだ。一方でそうした実体経済の回復が緩やかであるため、景気支持的な財政政策や金融政策が維持される状況は変わらないだろう。つまり、いわゆるゴルディロックス相場(ほどほどの景気回復を享受する株価上昇)が続くだろう。こうしたことを総合して、年末の日経平均株価は3万円程度、NYダウは3万5000ドル近辺を予想している。

 景気や企業収益の回復が盤石となれば、上述の金融財政政策は出口を探ることになりそうだが、それは今年ではなく、主として2022年の市場波乱のテーマとなるだろう。

 筆者は、昨年12月辺りから、こうした短期株価調整シナリオを繰り返し唱えてきた。だが、市場はいったん「上がるから買う、買うから上がる」状態に陥るとエスカレートしがちで、「買われ過ぎがさらに買われすぎになり、もっと買われすぎになる」ということがしばしば生じる。実際、先週半ばまでは、そうした勢いばかりの株価上昇が、日米ともに進んでいた。

■今は小さく「カオしている」状態

 だが、直近はどうも変調をきたしているようだ。株式だけでなくさまざまな市場において、投資家の心理が「もっと上がる」と「もう下がる」の狭間で不安定に揺れ動いており、不安定さが増している。昔から「天底荒れる」との格言にもあるように、市況が天井と大底を形成する際には、しばしば見られる現象だ。市況の方向性が変わるときには、強弱感が交錯し、短期的に大きく上下動するからだ。

 ただ、そうした混乱は、特にパニックやバブルが市場に大きく生じているわけではないから、「カオス」(混沌状態)と呼ぶほどではなく、「ミニカオス」くらいのものだろう。カオスになることを示す動詞を「カオす」と呼ぶとして、小さく「カオしている」ということだ。

 実際、このコラムを読んでくれている賢明な読者の皆さんなら「株式市場がちょっとカオしている」とすでに感じているはずだ。市況全般では、日経平均株価が1月14日に、一気にザラ場高値2万8979円と2万9000円に迫る動きを見せた後、週末の15日は2万8519円で引けている。

 加えて、アメリカ市場では、15日の現物株の引け後に株価指数先物が一段と崩れたため、シカゴの日経平均先物は2万8210円とさらに安くなって週を終えている。そのアメリカでも、NYダウは14日に3万1224ドルと史上最高値を更新したが、15日は一時3万0600ドル手前まで押し、結局、3万0814ドルで引けている。

 さらに個別業種・銘柄の物色動向も眺めると、半導体株の乱高下が目に付いた。14日までオンラインで開かれていた世界最大級の電子機器見本市CESでは、アメリカのアドバンスト・マイクロ・デバイスやインテルがCPUの新商品を発表。さらに13日には、インテルが「CEO(最高経営責任者)の交代を2月に行う」と発表、これが半導体株全般の急伸を引き起こした。

 それを受けて日本でも、東京エレクトロンやアドバンテストなど半導体製造装置株が上昇した。この2社は値がさ株で、日経平均株価に与える影響が大きいため、NT倍率(日経平均÷TOPIX)を上振れさせるという「おまけ」がついた。

 ところがその後、日本の半導体関連株は不安定化した。14日に株価が大きく下振れする局面があったが、それは半導体受託生産大手である台湾積体電路製造(TSMC)の決算発表の前に、日本の半導体株に投機的な売りが嵩んだためだとされている。そうした売りをくぐりぬけると、半導体関連の株価は戻すといった、ドタバタだった。

■アメリカの長期国債市場でも「ミニカオス」

 このようにカオしたのは、株式市場だけではない。アメリカの長期金利の振れも、注目を集めたと言える。同国の10年国債利回りは、昨年12月から今年初にかけて、0.9%台前半を中心とした落ち着いた動きを示していたが、今月5日からじわじわと上げ始め、1%を超えてきた。この金利上昇を不気味に感じる投資家が増えていたようだ。

 0.9%台から1%超になった、ということ自体は、金利の変化幅として特に騒ぐほどのものではない。

 しかし金利上昇の材料として、ジョー・バイデン次期大統領が景気支持のため大胆な財政政策を打ち出し、その財政支出増加分が増税で補えないため、国債を増発するのではないか、といった思惑が挙げられていた。

 景気が大きく回復する結果として金利が上昇するといった「良い金利上昇」は株価を大きくは傷めないが、景気が良くもないのに国債の需給面から金利ばかりが上がってしまうという「悪い金利上昇」は、株価の悪材料だ。こうした「長期金利の悪い上昇→株価下落」というコースに陥ってしまうのではないか、との不安を投資家が抱いたわけだ。

 実際のところ、13日の10年国債入札前には、10年国債利回りは一時1.18%を若干上回るに至った。しかし入札を過ぎると、イベントを通過したとの安心感が表れたためか、利回りは一気に1.09%近辺まで低下した。

 驚いたのはその後だ。14日のジェローム・パウエル議長の講演を受けて、長期金利は再度1.13%まで上昇した。「驚いた」と書いたのは、議長の講演を隅から隅まで読んでも、「物価上昇率が高まるまで、じっくりと低金利を続ける」という主旨しか見えないからだ。ところが債券の市場解説をみると、「議長が『歓迎されないインフレについて、対応手段があり、それらを使用する』と述べたため、状況次第では利上げが早まるとの思惑が生じた」から金利が上がった、とされている。議長が一般論として、好ましくないインフレが生じれば利上げなどで対応する、と語るのは当然のことであり、それで債券を売る(金利を押し上げる)というのは、解せない話だ。

 結局アメリカ市場の前週末には、前述のような株安とともに長期金利の低下が生じた。その要因としては、当日発表された12月の小売売上高が挙げられる。前月比で0.7%減少し、クリスマス商戦の不振が市場を動かしたとされており、それはうなずける。

 しかしパウエル議長の講演内容について、今度は「低金利が長期化するとの見方から長期金利が低下した」ともされており、議長講演はいったい債券の買い材料なのか売り材料なのか、わからない。

 さらに、バイデン次期大統領の経済政策は、株式市場では景気押し上げ効果が期待されるとして株高の材料とされ、一方で述べたように債券市場では「悪い金利上昇」の要因とされていた。

 ところが14日の夕にバイデン氏が1.9兆ドル規模の対策を実際に発表すると、株価と金利が反落した。それは2兆ドル程度の政策は既に織り込んでいたから、と手のひらを返して説明されている。何が株式や債券の市況を動かしているのか、理解に苦しむところだ。

■ミニカオスは何を示唆しているのか

 以上、細かい点までつらつらと述べてきたが、結局、先週の市場動向を幅広く振り返ると、投資家が強気と弱気の狭間で方向感を失いつつあるようだ。「今度はこの材料」「次は別の材料」と目が移っており、本来、それぞれの材料が市況にとってどういう意味を持つかということより、わけもわからず材料を通過するたびに売ったり買ったりしているだけのように見える。

 あるいは、大多数の投資家が様子見で売買が薄くなったところへ、TSMCの決算に絡んだ投機売りのような商いが持ち込まれると、それだけで市況が振れてしまうような状態なのだろう。

 「天底荒れる」と書いたが、典型的な株価天井形成時と同様に、昨年11月以降生じた株価の上昇が、短期的な転機を迎えているのではないだろうか。

 とは言っても、今後一直線に株価下落が進むというより、「荒れる」という言葉にふさわしいような、日々上下動を繰り返しながら落ちていく市況なのだろう。

 この局面で「欲張って短期変動で儲けよう」というのは実に危険だと懸念する。ただし、たびたび当コラムで書いているように、投資は自己責任を取る限り、何をするのも自由だ。ミニカオス相場で大いに自分の利益を醸そう、というのも自由である。

東洋経済オンライン

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最終更新:1/18(月) 11:01

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