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伊藤忠が電撃社長交代!…でも「岡藤会長」の存在感がにじむ意外

1/18 5:51 配信

東洋経済オンライン

 躍進を続ける大手総合商社の伊藤忠商事は、経営の底上げを図るために首脳陣の大胆な交代に打って出た。

 同社は1月13日、4月1日付で石井敬太専務執行役員(60)が社長COO(最高執行責任者)に昇格すると発表した。鈴木善久社長COO(65)は代表権のない副会長に就く。2018年4月に社長COOに就任した鈴木氏は、在任わずか3年で社長を退くことになる。

 1月13日に行われたオンライン会見において、石井氏は2020年末に岡藤正広会長CEO(最高経営責任者、71)から新社長就任の打診を受けたことを明らかにした。石井氏は「(化学品部門という)地味な業界にいたので、社長就任は1ミリも考えていなかった。今までも私の名前が(報道などで社長候補として)挙がったこともない」と、自身にとってもサプライズであったことを率直に語った。

■6回も挙がった岡藤会長の名

 石井氏は化学品部門が長く、アメリカ・ヒューストンやタイ・バンコクの駐在経験もある。2018年にはエネルギー・化学品カンパニーのトップに就任した。伊藤忠では繊維や食料、住生活といった生活消費関連事業がいわば花形で、石井氏が歩んできた化学畑はBtoBビジネスが多く、目立つ存在ではない。

 だが、エネルギー・化学品カンパニーは蓄電池や再生可能資源由来のバイオマスプラスチック事業に参入するなど、伊藤忠が重視する環境配慮型ビジネスを手掛けており、そうした経験が買われて今回の起用に至ったものとみられる。

 わずか30分のオンライン会見だったが、その中で存在感を放っていたのは、むしろ会見には姿を見せなかった岡藤氏だ。石井氏が「(岡藤)会長も言っているように……」と話すなど、鈴木氏と石井氏は会見中に合わせて6回も岡藤氏の名前を挙げて伊藤忠の方向性や社長就任の経緯について説明した。

 岡藤氏は4月以降も会長CEOとして続投する。鈴木氏は「岡藤会長が続投して次期中期経営計画(2021~2023年度)をまっとうされると、私は理解している」と述べた。

 岡藤氏は2010年4月の社長就任以来、伊藤忠を牽引している。この間に、伊藤忠の業績は大幅に伸びた。2010年3月期(アメリカ会計基準)の純利益は1281億円だったが、10年経った2020年3月期(IFRS)には純利益5013億円を稼ぐまでになった。「伊藤忠を躍進させたカリスマ」(商社業界関係者)の下、同社の時価総額は2020年6月に三菱商事を抜いて商社業界トップに立った。

 現在の伊藤忠は各部門がバランスよく稼いでおり、突出して稼ぐ部門がないことが特徴だ。資源事業への依存度も低く、非資源事業が純利益の約8割を占める。岡藤氏は伊藤忠グループ各社の経営管理を徹底することで、利益を積み上げてきた。

 2000年頃には1000社ある事業会社のうち黒字会社は約6割だったが、2020年3月期には事業会社を300社弱にまで減らし、黒字会社比率は約9割に達した。

■肝煎り新組織で「縦割り」打破へ

 その岡藤氏が目下、強く必要性を唱えているのがビジネスモデルの転換だ。伊藤忠に限らず、総合商社各社には商品軸の「縦割り」文化が根付いている。縦割りだったからこそ、商品知識に富んだプロフェッショナルが社内に育ち、取引先に付加価値を提供できた。

 だが、顧客ニーズが多様化する現在では、それに応じた事業を展開するためには縦割り組織では対応し切れないケースが多く、この弊害をどう克服するかが各商社の課題となっている。

 伊藤忠も単に製品を販売するのではなく、今後は川下領域の事業を通じて顧客ニーズをすくい上げることを重視する。部門にとらわれず、顧客ニーズをもとに新たなビジネスをつくる「マーケットイン」型への組織転換を目指す。

 こうしたビジネスモデル変革に向けて打った布石が、2019年7月の第8カンパニーの設立だ。伊藤忠には機械や繊維部門などといった7カンパニーがある。第8カンパニーは岡藤氏肝煎りの組織で、他のカンパニーを巻き込みながら顧客起点のビジネスを具体化していくことが使命となっている。

 とくに生活消費分野の核となるファミリーマート関連事業を一手に担う。この第8カンパニーのトップには、岡藤氏の「懐刀」と言われる細見研介執行役員が就いていた。

 ファミマは伊藤忠の今後の成長エンジンと期待されるが、多くの課題を抱えている。例えば海外展開が遅々として進んでいない。中国では現地のパートナー企業が継続的な利益相反取引などを行っていたとして訴訟を継続しており、出口はまだ見えていない。国内でも、弁当などの商品開発力はコンビニ王者のセブン-イレブンに比べると見劣りする。

 伊藤忠はファミマへのテコ入れを行うために、2020年7月から8月にかけて約5800億円を投じてTOB(株式公開買い付け)を実施。50.1%だった株式保有比率を最終的には9割超とする。伊藤忠が主導してファミマの経営課題の解決に当たる算段だ。

■注視すべきは細見氏の行方? 

 そして今回、新たに社長を送り込むことも決めた。第8カンパニーのトップである細見氏が3月1日付でファミマの新社長に就任する。細見氏はファミマの立て直しだけではなく、ファミマの強みを伊藤忠の成長に結びつけることが期待される。そのためには、全国で1日約1500万人もが来店するファミマの顧客購買データの活用が焦点のひとつになる。

 そういった意味で注目されるのが、伊藤忠がファミマ、NTTドコモ、サイバーエージェントと組んで2020年10月に設立した「データ・ワン」という新会社だ。ファミマの購買データと、約4700万人が登録するドコモのdポイントカードの会員データ、そして顧客の位置情報を組み合わせてターゲッティング広告などを展開する。例えば、購買データを分析し、ユーザーに合わせてサプリメントの広告を配信するといったことが考えられる。

 岡藤氏の描くマーケットインを重視する次世代の伊藤忠にとって、ファミマの事業強化・活用はグループのさらなる成長へのカギを握りそうだ。その点、ファミマのテコ入れや新たなビジネスの具体化といった重責を担う細見氏の今回の人事は、伊藤忠本体の社長交代よりも重要な意味を持つのかもしれない。

 社内からは早くも、「細見氏はいずれ伊藤忠の社長になるだろう」(伊藤忠社員)との声が聞こえてくる。次の社長人事を占う意味でも、ファミマの動向に注視する必要がある。

東洋経済オンライン

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最終更新:1/18(月) 11:47

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