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立つトランプ跡を濁す【フィスコ・コラム】

1/17 9:00 配信

フィスコ

米大統領選を1期で敗れた現職候補が敗北宣言をしないとどうなるか――そんなドキュメンタリー映画でも見ているようです。勝利を諦めない前向きな精神はおかしな方向に進み、退任直前での罷免論議。在任中の功績までもが台無しになるとは思いもしませんでした。

1月6日に米連邦議会で州ごとに選挙人投票を開票し、民主党のバイデン氏の勝利が最終的に認定されました。複数の共和党議員が異議を唱える場面もありましたが、上下両院で退けられています。敗れたトランプ大統領はこの日、議事堂周辺に集まった支持者の前で演説。その後、一部の支持者が議会内に乱入し死傷者を出す騒ぎに発展しており、トランプ氏がそれを扇動したとみられています。

昨年11月3日の一般投票で、トランプ氏は敗れたとはいえ7400万票を獲得しています。今回8000万票のバイデン氏には及ばないものの、2008年のオバマ氏や前回2016年の自身の得票数を上回っています。過去4年間のメディアとの戦いで強い逆風にさらされ続けたことを考えれば「健闘」と言えます。それだけに自ら敗北を認めず、結果を覆そうと法的手段に訴えたのは周知の事実です。

しかし、よりによって議事堂内で死傷者を伴う騒乱を巻き起こしたことは、トランプ氏の評価を暴落させました。主要国のリーダーが言及しているように、民主主義を冒涜したと批判されても反論できません。騒ぎに乗じて他国から攻撃されてもおかしくない状況は、同盟国の安全保障にも問題があります。基軸通貨ドルの価値に傷をつけた、との糾弾も免れないでしょう。

トランプ政権を支えてきた閣僚は次々に辞任し、スピーカーのように使ってきたツイッターもアカウントを停止され、挙句の果てに退任わずか2週間前になっての罷免騒ぎです。そして、自身に恩赦を与えるとも報じられていますが、それが本当なら「命乞い」にほかなりません。「ディープステートと戦う」などの大嘘がバレ、世界最強の権力者としてあまりにも哀れな光景です。

では、どのタイミングで「敗北宣言」をするべきだったのでしょうか。下衆のあと知恵ながら、やはり12月14日の投票人投票が節目だったと思われます。一般投票と同じ306人を獲得したバイデン氏が232人のトランプ氏を破り、「不正」を証明できなかったことをもって敗北を認めるべきでした。それなら「いろいろあったけど憎めないキャラだった」ぐらいで済み、次回2024年の再出馬の余地を残せたかもしれません。

この2カ月あまりの「トランプ劇場」から、米大統領でも選挙結果は覆せない、「敗北宣言」は時機を逸すると後に引けなくなり、品格や教養も疑われる…といった教訓を得ました。つまり、「敗北宣言」は過去の名声を守るための「損切り」と言えます。数日後、トランプ氏がホワイトハウスからヘリコプターで飛び立つラストシーンでの表情は、とても見ていられないでしょう。


※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


(吉池 威)


《YN》

フィスコ

最終更新:1/17(日) 9:00

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