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高齢の母親が、もし万引きしたら疑うべき「ある病気」の正体

1/17 17:01 配信

東洋経済オンライン

自分の母親が急に「〇〇さんに物を盗まれた!」と言い出したり、お金に不自由していないにもかかわらず万引きを働いたりしたら、それは「ある病気」をわずらっている可能性があります。女性高齢者が物取られ妄想を起こしたり、万引きしてしまう理由とは?  医学博士の朝田隆氏による新書『認知症グレーゾーン』より一部抜粋・再構成してお届けします。

 認知症の代表的な周辺症状としては、「物盗られ妄想」もよく知られています。物盗られ妄想というのは、自分がどこかに置き忘れたものを、誰かに盗まれたと思い込んでしまう症状です。財布や貯金通帳などのお金に関するものを盗まれたと訴える場合がほとんどで、「〇〇さんに盗られた」と、特定の人を名指しで訴える場合が多いのも特徴です。

 身近で一番お世話をしているお嫁さんなどがターゲットになりやすく、親族が揉める原因にもなります。私の診療経験から言うと、物盗られ妄想の見られる認知症の患者さんの約9割は女性です。男性で物盗られ妄想に駆られる人はめったにいません。

 なぜ男女で違いが見られるのか不明ですが、おそらく古代からの習慣として、女性は男性が狩猟などで獲得してきたものを守る役目を担ってきたことから、自分の保管したはずのものがなくなると、男性より敏感に反応して「盗られた」と考えてしまうのではないかと、私は考えています。見張る意識が強いといったほうが近いかもしれません。

 周辺症状の中には、ほかにも男女差の見られるものがいろいろあります。買い物へ行って同じ物ばかり買ってくるというのも、主に女性の認知症の方に見られる周辺症状です。男性はもともと必要なもの以外は買い物をする習慣がないせいか、認知症になってもそうした行動はあまり見られません。

■盗むのは「モラルの欠如」からではない

 さらに、女性の場合は、物盗られ妄想とは逆の、物を盗る行動が見られることもあります。物を盗るといっても、ピック病(前頭葉と側頭葉が萎縮する認知症の一種)による衝動的なものとは違い、「あそこの家の庭に咲いていた梅がきれいだったから持って帰ってきた」というケースです。道路から手を伸ばして他人の敷地内の花をプチッと勝手に摘んできたりします。

 おそらく、本人は盗むというモラルの欠如はなく、野に咲くすみれを摘む感覚で持ち帰ってくるのでしょう。男性で花を摘んできた人の話は聞いたことがないので、やはりきれいな花を摘むというのは女性ならではの思考と考えられます。

 認知症による記憶障害は、認知症グレーゾーンや加齢に伴うもの忘れと違い、忘れるはずのないエピソードが記憶からゴソッと抜け落ち、人から教えてもらっても思い出せないところが大きな特徴です。とくに1年以内に経験した人生の大きなイベントを思い出せなくなったら、すでに認知症の領域に進んでいると考えられます。

 認知症の場合は、奥さんから「半年前の次男の結婚式は、台風が来て本当に大変だったわね」と言われても、「結婚式って、誰の?」という具合に、息子の結婚式というエピソード自体を忘れてしまうのが特徴です。あるいは、夕食で麻婆豆腐を作ろうと思って、豆腐とネギと豚のひき肉を買いにスーパーへ行ったとします。

 豆腐と豚のひき肉はすぐに買い物かごへ入れたのに、残り1つの食材をどうしても思い出せない。仕方なく2つの食材だけ買って帰宅し、冷蔵庫を開けたら「ああ、そうだ、もう一つはネギだった」と思い出せたら、単なるど忘れです。

 これに対して、麻婆豆腐の材料を3つ買いに行ったはずなのに、そのこと自体をまったく忘れて別の食材を買って帰宅し、ほかの料理を作っていたら、認知症の疑いが濃厚です。とくに家族から「今日は麻婆豆腐じゃなかったの?」と聞かれても、本人がまったく覚えがない場合は、認知症が始まっていると考えていいでしょう。

 そのほかにも、テレビのリモコンを置いた場所をいつも忘れてあちこち探し回るという場合は、認知症グレーゾーンの可能性がありますが、リモコンの使い方自体が急にわからなくなると、認知症の疑いが濃くなります。

 たとえば、エアコンに向けてテレビのリモコンのスイッチを入れて「エアコンが壊れている」と言いだしたり、逆にテレビに向けてエアコンのリモコンのスイッチを入れて「テレビがつかない」と言って大騒ぎをする場合がよくあります。

 さらに、今日が何月何日で何曜日なのかわからない、大事な仕事の予定を入れていたこと自体すっかり忘れてしまうとなれば、もはや単なるど忘れではありません。すぐに認知症の専門医を受診することをおすすめします。

■自立できなくなったら「認知症」

 認知症と認知症グレーゾーンの違いは、専門の医療機関を受診すれば、画像検査やペーパーテストなどで判定できます。一般的な指標としては、日常生活が自立しているかどうかが最大の目安となります。記憶力など認知機能の低下で苦労しつつも、自立して日常生活を送ることができていれば、まだ認知症グレーゾーンに踏みとどまっている段階です。

 たとえば自分で料理をあまり作らなくなったとしても、買い物に出かけてお惣菜やお弁当を買ってきたり、「めんどうくさい」と思いながらも掃除や洗濯を必要最小限に行っていたりする場合は、まだ回復の見込める段階です。とくに一人暮らしでも、なんとか自立した生活ができていれば、認知症グレーゾーンの段階と言っていいでしょう。

 これに対して、買い物に出かけても同じものばかり買ってきたり、料理をすると鍋をこがしてしまうなど、一人で自立した生活ができなくなった状態が認知症と言えます。

東洋経済オンライン

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最終更新:1/17(日) 17:01

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