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JR東海はなぜ“終電繰り上げ”しないのか 東京・大阪とは異なる“愛知の特性”とは?

1/17 18:37 配信

THE PAGE

 JR東日本は、新型コロナウイルスの感染拡大によって飲食店の利用者が減り深夜帯の乗客が減ったことや、現場作業員の労働環境を改善する、との目的で3月13日からの最終列車の時刻の繰り上げを発表した。JR西日本も春のダイヤ改正で繰り上げるという。しかし、JR本州3社の中でJR東海だけは終電の繰り上げを断固として否定する。この対応の違いを掘り下げてみると鉄道会社の問題というより、愛知・名古屋地域の特性が見えてくる。

そもそも少ない深夜の鉄道利用者

 「終電を早めれば客は早く帰る。コロナでただでさえ大変なのに、打撃は間違いない」(飲食店員)、「コロナでライフスタイルが変わる。家族と過ごす時間も増える」(鉄道利用客)――。

 メディアでも多くの賛否が紹介された終電の繰り上げ。まずは、本州のJR各社の主な路線の平日の終電時刻と予定されている繰り上げ時間をざっと確認しておく。


【JR東・山手線】
■東京駅発の外回り(時計回り)午前1時3分→17分繰り上げ予定
■新宿駅発の内回り(反時計回り)は午前1時00分→19分繰り上げ予定

【中央線・総武線】
■東京駅発の中央線下り快速午前1時35分、総武線・御茶ノ水駅発津田沼行き午前0時41分→それぞれ20~30分程度繰り上げ予定

【JR西・大阪環状線】
■大阪駅発の外回り(時計回り)が午前0時33分→18分繰り上げ
■内回り(反時計回り)は午前0時11分→減便。繰り上げはなし

【京都線・神戸線】
■大阪駅発の京都線、午前0時31分→21分の繰り上げ
■大阪駅発の神戸線、午前0時28分→24分の繰り上げ

 一方のJR東海は、名古屋駅発の東海道線下りが午前0時2分、上りは午前0時20分、下りのみの中央線は午前0時20分で、首都圏や関西圏の終電より早いと言える。東京、大阪と比べ、名古屋駅発の在来線は深夜帯に本数が少ないのが特徴だ。新幹線の最終電車(東京発)が名古屋駅に到着するのは午後11時49分。その前の電車は午後11時24分着となっている。東海道新幹線を中心に経営方針を決めるJR東海では、新幹線の終電に連動してほとんどの在来線は終わってしまう。

 「(終電繰り上げは)予定していません。もともと東京圏とかと比べれば、終電は早い。実態としてご利用が少ない。やはり、夜遅くの活動量というところは首都圏に比べれば数が少ない。それを受けて輸送を組み立てている」

 昨年10月28日、名古屋であったJR東海の定例会見で、金子慎社長は終電繰り上げの可能性を問われ、きっぱりと否定した。さらに、中部圏での需要の低さについて、「東京ほど残業や飲食をして遅くなる人が少ないということか」と問われると、「数を分析したことはないが、想像すると、いまおっしゃられた要素もあると思う」と述べたのだった。

 つまり、JR東海の在来線は東海道新幹線の発着に合わせたダイヤになっており、夜間の運行もその需要には応えるものの、より遅い時間帯の便はもともと多くないのだ。

 首都圏では、JR東の終電繰り上げにともない、私鉄各社でも最終列車を早める計画が発表されている。しかし、中部圏最大の私鉄、名古屋鉄道(名鉄)の終電も、東京、大阪と比べるとこれまたそもそも相当、早い。名鉄の名古屋駅発の最終電車は、中部国際空港行きが午後11時35分、岐阜行きが午前0時7分。名鉄は名古屋駅から10以上の行き先があるが、これが名古屋駅発で最も遅い列車となり、“午後10時台の最終列車”もある。

「うすらでかい田舎」?

 鉄道以外の交通機関にも目を向けてみよう。

 一般財団法人自動車検査登録情報協会の2019年3月時点のデータによると、都道府県別の自家乗用車数は愛知県が419万台で、2位の埼玉県の321万台を大きく引き離してぶっちぎりの1位となっている。

 一世帯当たりの台数にすると、福井県がトップで、1.736台。愛知県は1.269台(29位)で、こう見ると、それほど多くもないようだが、愛知県よりも一世帯当たりの自動車台数が上位の自治体で、愛知県よりも人口が多い都道府県はない(ちなみに2位が富山県で1.680台、3位が山形県で1.671台)。3大都市圏では、東京が47位(0.432台)、大阪が46位(0.645台)となっており、人口の多い都市部を持つ県としては、愛知県の自家用車の数は圧倒的に多いのである。

 愛知県の人口は754万人で、名古屋市内の人口は232万人。名古屋市以外に500万人以上もの人が住んでいる。名古屋市の東側には、春日井市、瀬戸市、尾張旭市、日進市、刈谷市といった衛星都市が名古屋市と豊田市に挟まれるようにして南北に並んでいる。これらの自治体に名古屋市内から列車で行こうとすると、場所によってはとても不便だ。東側にあるトヨタ関係の会社や工場に通っている人も多く、移動手段の主体は車となる。

 そして、名古屋市から東側のこれらの自治体を車で走ると、大型のショッピングセンターやチェーン店が並ぶ一方で、商店街や繁華街が目につかない。ここに住む人は、どこで飲酒するのか。作家、村上春樹は著書「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」の中で、名古屋についてこう書いた。
 
 「人は多く、産業も盛んで、ものは豊富だが、選択肢は意外と少ない(中略)文化的な面をとりあげれば、東京に比べてうすらでかい地方都市という印象は否めない」

客層の薄さ コロナ禍前から

 愛知県の人が外で飲まないということを類推させる、こんな数字もある。民間調査会社、東京商工リサーチが昨年1月~11月に倒産した企業を調べたところ、東京1261件、大阪1066件、愛知511件だった。そのうち、飲食店関係は東京が129件(10.23%)、大阪146件(13.7%)、愛知76件(14.87%)となり、倒産した全ての企業に占める飲食店の割合は、3大都市圏で愛知県が最も高かったというのだ。

 同社の担当者は「いま、倒産している会社は、コロナの感染拡大とは実はあまり関係がなく、もともと経営が苦しかったところが大半。あくまでコロナは『最後のだめ押し』という意味合いが強い。本当の意味でのコロナ倒産が増えるのはこれから」と分析する。その上で、「東京よりも、大阪、愛知の飲食店の倒産割合が大きかったのは意外。ここから推測できるのは、やはり東京は(コロナ禍でも)外食する人が多いということ。愛知はもともと外で飲食する人が少なく、経営の厳しかった店にコロナ自粛が直撃した、と言えるのではないか」と話す。

 昨年8月には、名古屋・栄の名門ジャズライブハウス「名古屋ブルーノート」が閉鎖した。新型コロナウイルスは「3密」を生みやすいライブハウスの経営を直撃した。だが、中部の音楽業界に詳しい地元記者は、コロナだけが問題ではないと指摘する。

 「名古屋ブルーノートは、運営会社が自社ビルの空きスペースを有効活用するために始めたこともあり、家賃がない。それでも経営が厳しかったということだ。近年はジャズだけでは客を呼べないので、宇崎竜童や相川七瀬といった過去にヒット曲を持っていて、それなりに人気のあるJポップ歌手を出演させていた」

 ジャズライブハウスとはうたってはいても、名古屋ではそれだけでやっていくのは難しい、ということだったようだ。この記者はこう続ける。「フリージャズの大御所、山下洋輔のライブで30人くらいしか入っていなかったこともあった。名古屋はコアな音楽ファンはそれなりにいるけど、東京や大阪と比べると層が厚いとは言えないし、店も少ない」

 コロナ禍、JR各社の終電対応の違いから、東京や大阪とは一味違う、「愛知の特性」が浮き彫りになった。

THE PAGE

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最終更新:1/18(月) 20:35

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