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SmartNewsが「アメリカの分断」にかける勝負

1/16 6:01 配信

東洋経済オンライン

日本とアメリカでニュースアプリを展開するスマートニュース。総ダウンロード数 5000万以上(2019年10月末時点、日米合算)、月間アクティブユーザー数2000万以上(2019年8月末時点、日米合算)を抱え、国内有数のユニコーン(企業価値が10億ドルを超える非上場ベンチャー)としても知られる。
アメリカでは2020年11月に行われた大統領選挙に合わせ、関連するニュースや情報をアプリ利用者に届けるための機能を複数展開。また、鈴木健CEOは投票日前後の10月中旬から11月中旬にかけ現地入り。ウィスコンシン、オハイオ、ペンシルベニア、サウスカロライナ、フロリダ、ネバダの6州を巡り集会への参加、投票所の見学などを行った。

現地で体感した「アメリカの分断」のリアルや、それに対するメディア事業者としての考え方や打ち手、今後のスマートニュースの展開について、鈴木氏に聞いた。

■外国人の視点でアメリカを「再発見」したい

 ――大統領選挙前後の時期に自ら現地を訪れた目的は? 

 1つは、アメリカで起きていることを直に見て回ることでリモートだとわからない情報とか感覚を得ること。日本でも実際にユーザーと触れ合ってサービス作りに生かすことを重視しており、アメリカでも現地の暮らしを実体験しニーズを把握するようにしている。

 もう1つの目的が、アメリカの民主主義を学ぶこと。19世紀のフランスの政治思想家、トゥクヴィルが『アメリカのデモクラシー』という大変有名な本を書いていて、「彼がアメリカを再発見した」と言われている。アメリカ民主主義の本質的な強み・弱みとか、アメリカ人自身が理解できていないことも多い。トクヴィルに習うわけじゃないが、アメリカを回ることによって僕も外国人の視点から発見できることがあるんじゃないかと。

 ――大統領選挙の時期に現地を回るのは2度目とのことですが、前回(2016年)と今回(2020年)を比べて、今回で際立って印象に残ったことはありますか。

 大きく2つある。まず分断が加速している、顕在化しているということ。4年前にも分断というのはあっただろうが、そこまで顕在化しているとは感じなかった。今回はリベラルもコンサバも、両者を強く意識させられた。

 もう1つは、分断の単位が非常に細かくなっているということ。アメリカの地図がレッドステート(共和党支持者が多い州)、ブルーステート(民主党支持者が多い州)で色分けされているのを見ると思う。

 ただ、例えばテキサスは赤く塗られているが、細かく見ると地域単位で違っている。ダラスやヒューストンは民主党支持が強く、田舎に行くほど共和党が強い。1つの州の中が一色でないのは、カリフォルニアでもどこでも同じだ。

 ――その分断について、メディアの責任をどう分析しますか。

 非常に重要な論点だ。社会の分断がいったい何によって生じているのか、大きく3つの説がある。1つが、メディアが分断したから社会が分断したというもの。2つ目は、政治や議会が先に分断したというもの。3つ目が、国民が先に分断したというもの。実態としてはこれらが相互に入り乱れて、混合して強化し合って分断が加速しているのだと思う。

 メディアの分断の話でいうと、アメリカではフェアネスドクトリン、つまり公共の電波を使って政治的な内容を扱う場合においては、民主党・共和党双方の意見をバランスよく扱わねばならないという決まりがあったが、これが1987年に撤廃されて、それ以降とくにラジオ局を中心に、片方の立場に偏ってもいいという傾向が強まった。

 ただ、その前から議会が分断していたという話もある。共和党と民主党がそれぞれ、1つの法案に対しどれだけ賛成・反対したかという調査もあるが、それを見ると議会の分断はだいぶ早くから見て取れる。そういう意味でやはり、政治と国民世論とメディアの相乗効果で分断が加速しているのだろう。

■投票に行くまでをサポートする

 ――スマートニュースは今回の選挙に対応するためにどのような機能を実装しましたか。

 さまざまな立場の意見をバランスよく提供しなければという問題意識はずっと持っていた。2016年の大統領選の際、社会の分断が非常に大きなテーマとしてクローズアップされ、(偏りない情報収集を行うためのツールとして)スマートニュースへの注目度は一気に高まった。さらに2018年からは現地でテレビCMも打って、スマートニュースが分断の問題に取り組んでいるという認知を広げることもできた。

 今回の大統領選に先立ち、2019年9月からアメリカ版アプリで提供しているのが「News From All Sides」という機能だ。1つのテーマに関するニュースをリベラル、中立、保守の立場から読めるようにしたもので、当社に勤める主要な報道機関出身の複数のジャーナリストが政治コンテンツの分類方法を議論しアルゴリズムを作っている。

 もう1つ注力したのが、行政区画ごとの投票関連情報まとめだ。アメリカの選挙は制度が非常に複雑で、どうやって投票するのかが州によって全然違う。選ぶのも大統領だけじゃなく、州のいろいろな役職者などを選ぶ。投票する人はそれらを理解するだけで大変なので、居住地をアプリに入力すれば「あなたの地域ではこうですよ」とわかるようにした。

 選挙だけが民主主義じゃないが、選挙は民主主義の重要な一側面。だからまず選挙に役立つ良質な情報を届けたい。加えて、有権者がどんなにたくさんニュースを読んでも投票に行かないと意味がない。であれば、投票に行くことをサポートするところまで含め、われわれとしてできることをしたいと思った。

 ――実際の成果として、サービスの成長につながりましたか。

 具体的な数字は非公開だが、(ユーザー数や1人当たりの視聴時間など)どれもとっても、アメリカで著しい成長を遂げている。

 ――選挙時のこうした機能開発は日本でも行っていきますか。

 選挙に関するコンテンツや機能の提供は過去の衆議院議員選挙などでも行ってきた。2021年に行われるであろう日本の衆議院選挙でも、良質な情報を提供できるようにしたい。

 日本だと社会生活の中で分断を強く意識することはあまりないかもしれないが、水面下で起こりはじめている可能性はある。スマートニュースにどういう機能が必要とされるかを見極めるためには分断の実態を正しく把握するところから始めなければ、と社内で議論している。

 ――日本ではスマートニュースに対し、「公平性」といった課題解決のイメージより、「クーポン」など日常生活のお役立ちツールというイメージを持っているユーザーが多いように感じます。

 日本においても新型コロナウイルス関連情報の提供など、かなり先進的な展開をしているし、選挙も含めて公共性を重視した情報提供も行っている。加えて日本では、クーポンとか生活に密着した機能も提供しており、そのイメージを持つユーザーもいるだろう。

 1人のユーザーの中にも、当然いろいろな側面がある。民主主義社会の参加者としての一面もあれば、オトクに買い物をしたいと願う一面も、1日仕事して疲れたから癒やされたいと思う一面もある。そういう多様なニーズにスマートニュースのアプリで応えていきたい。

■エンジニアの数は1年半で3倍超に

――2019年の6月に「プレイステーションの父」として知られる久夛良木健氏を社外取締役に迎えるなど、経営体制を強化しました。「グローバル開発体制整備」を目的とした体制強化とのことでしたが、その後の進捗は? 

 目指していた体制は、かなり形ができてきた。まずリーダーシップをグローバル化することができた。今スマートニュースの開発の責任者はアメリカ・サンフランシスコにいて、そこから日本、アメリカ両方のプロダクトを見ている。エンジニア組織の責任者も一人が日本、一人がアメリカにいて、そこから日米の開発を指揮している。

 エンジニアの数は1年半(2019年6月~2020年12月)で3倍以上に増えたが、東京オフィスの新規採用エンジニアは約8割が海外出身者になった。

 プロダクトの面でも、日本版アプリで開発した機能をアメリカ版にも実装することや、その逆も増えている。新型コロナ関連の情報のダッシュボード、雨雲レーダーなどの機能は、日本で作ったものを、時間を置かずにアメリカでも展開した。日米が密に連携しているからこそ開発が加速して、利用者に便利な新機能を次々届けられている。

 ――同業である上場企業のユーザベースやグノシーを見ていると、海外事業の撤退や稼ぎ方の見直しなど、経営が曲がり角に来ている部分があります。スマートニュースにおいては、広告・販促がメインの稼ぎ方に限界は感じませんか。

 スマートニュースの今の収益が広告事業に寄っているのは事実。ただ、そこは引き続き成長しているし、まだまだ成長していくと確信している。出た収益を事業に再投資すること、それを賄える基盤づくりをすることも重要だ。われわれは非上場なので、(ベンチャーキャピタルなどからの)資金調達も使いながら、順調に進められていると思っている。

 むろん、非上場とはいえ事業を通じて収益を生み出すことには、昔から変わらずこだわってやってきている。近年はスマートニュースとして提供できているコンテンツのバリエーションが豊かになってきた。そうした中で収益化の手段も増やせている。

■アメリカの攻略方法に「唯一の正解」などない

――ユーザベースは2018年に買収したアメリカのニュースサイト「Quartz(クオーツ)」運営会社を売却しました。ビジネスモデルは違うものの、同じアメリカで同じメディア事業を展開する日本企業として、どう受け止めていますか。

 僕もクオーツと梅田さん(ユーザベース創業者の梅田優祐氏)の挑戦は応援していたので、個人的には非常に残念だが、ナイスチャレンジだったなと思っている。挑戦のないところに成功も失敗もない。スマートニュース自身、まさに今アメリカで挑戦している最中。成功への答えを持っているわけではないので、試行錯誤を続けるのみだ。

 ――成功に近づくための要素としてあるとすれば、先ほどから強調しているグローバル化した開発体制でしょうか。

 スマートニュースはある種、それを徹底してやっている組織だが、もちろんこれにはトレードオフがある。日本1拠点で開発するより、日米の拠点間のコミュニケーションを図るのが大変だったりする。あえて困難なチャレンジをしていると思う。

 やっぱりソフトウェアって、レバレッジが利く。つまり一度作ったものがほかの地域でも応用しやすいというのは大きな特徴だ。しかも、メルカリのようなコマース系アプリはローカリティ(地域性)が強いのに対し、情報系アプリは比較的使い回しがしやすい。だから、スマートニュースには日米が相互に連携するグローバル開発体制が合っているように思う。

 どういう体制を敷くのが正解なのかはサービスによって異なる。ほかで成功しているものを闇雲に真似ればいいわけじゃない。自分たちにとって何が正しいのか、見極め続けなければならない。

東洋経済オンライン

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最終更新:1/16(土) 6:01

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