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障がい者の入社式が教えてくれた「テレワーク」に欠かせないこと

1/14 6:01 配信

ダイヤモンド・オンライン

 「働き方改革」の号令ではさほど普及しなかった「テレワーク」が、コロナ禍で一般的なものになった。そのテレワークのひとつである「在宅就労(自宅でPCなどの通信機器を使った仕事)」には、メリットとデメリットがあり、雇用側と働く者の試行錯誤が散見される。そうしたなか、コロナ禍以前から重度身体障がい者の「在宅就労」を推進し、ES(従業員満足度)を高めている企業がある――株式会社スタッフサービス・クラウドワーク。先月行われた、同社のWEB入社式を取材し、「在宅就労」の理想のあり方を探った。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部)

*本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」からの転載記事「ダイバーシティが導く、誰もが働きやすく、誰もが活躍できる社会」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。● コロナ禍以前の2015年に「在宅就労」をスタート

 人材総合サービスで知られるスタッフサービスグループ――その障がい者雇用を担う株式会社スタッフサービス・クラウドワーク(以下、SSCW)は、グループの特例子会社である株式会社スタッフサービス・ビジネスサポートの「在宅就労部門」が2020年4月に分割され、創設された会社だ*1
。 *1 スタッフサービスグループでは、スタッフサービス・ビジネスサポートを「事業所勤務型障がい者雇用」、スタッフサービス・クラウドワークを「在宅勤務型障がい者雇用」と区分している。

 SSCWは、重度身体障がい者の「在宅就労」に特化していることが特徴で、(前身会社だった)2015年9月からその取り組みをスタートしている。

 テレワークの一形態である「在宅就労」は新型コロナウイルス感染症の拡大ですっかり一般化したが、同社はその先駆けと言っていいだろう。障がい者の在宅就労支援を行う人材紹介会社やNPO法人とは異なり、身体障がい者を直接雇用しての在宅就労への特化、そして、(障がいのある)雇用者300人という大規模での事業展開は特筆に値する(2020年12月1日現在、在宅社員302名)。定着率の高さ*2
からも、「行政やさまざまな企業から見学していただくことも多い」(株式会社スタッフサービス・ホールディングス 広報部)という。 *2 SSCWの就職後1年時点の定着率は97.0%(障害者職業総合センター調べによる、身体障がい者の一般企業就職後の1年時点定着率は60.8%)

 重度身体障がい者の在宅就労に取り組んだ理由は明快だ。身体障がい者にとっての通勤は、移動の困難さに加え、体への負担や職場のバリアフリー環境の未整備がネックとなる。また、通勤出社の就労では、平日(日中)の通院時間や生活介助の確保もままならない。結果、“ICT(情報通信技術)を活用して、障がいのある人たちに適切な就労機会を提供する”事業モデルが生まれたのである。

● 在宅就労は発展途上。気づきや発見の共有が必要

 SSCWの人材採用の対象エリアは全国各地に及び、2020年4月の設立以降、6月に九州エリア、9月に東北・九州エリア、11月に近畿・関東エリアで新入社員の入社式を行い、計25名が仕事に就いた。

 そして、さらに、東北エリア(9名)・九州エリア(5名)で14名が採用となり、先月12月8日に、WEB会議システムを介しての入社式が行われた。第1部が全員参加の合同オリエンテーション、第2部が東北・九州に分かれてのエリア別オリエンテーションというプログラムで、SSCW代表取締役社長・亀井宏之氏が画面に登場してスタートした。亀井氏の挨拶は、“紋切り型の社長挨拶”ではなく、新人を歓迎する温かな思いと期待感を、オンラインゆえの、分かりやすくゆっくりした話し方で伝えるもので、「仕事は生活を豊かにする」「いちばん大切なことは体調の自己管理」といったメッセージに続く、「在宅就労は発展途上なので、発見や気づきを同期の仲間や先輩に伝えてほしい」という言葉がことさら印象的だった。

 入社式後の取材で、エリア統括部の岡崎正洋ゼネラルマネージャーは、SSCWの「在宅就労」をこう説明した。

 「(SSCWの)300人を超える在宅社員は全員が重度身体障がい者です。そのため、体調面の不安をカバーしながら業務処理をするために、5~15人程度のチームを作って業務に取り組んでいます。その連携を保つため、1日3回のミーティングでコミュニケーションを取り、業務の進捗確認や体調確認、仲間との関係性構築のために雑談することを推奨しています。テレワークであっても、仲間と連携し、助け合う働き方こそが業務上も必要であり、職場や仲間を実感するために大切にしています」

● 1日3回のミーティングと気分転換のための雑談

 5~15人による「チーム制」は、個人個人にノルマを背負わせず、チーム全員での仕事の完遂を目標にしている。障がいのある人は生活リズム(通院や生活介助の利用時間)がそれぞれ異なることもあり、ひとつの仕事をお互いがカバーし合う“チームワーク”はありがたい方法だろう。

 入社式・第2部のエリア別オリエンテーションにおいても、「チームビルディング」というプログラムが用意され、新入社員間の意思の疎通が積極的に図られていった。「いまの気持ちは?」「私のことをもっと知ってほしい」「仲間に意気込みとエールを!」というテーマに対し、一人ひとりがしっかり答えていき、最初は緊張していた表情が次第に和らいでいく様子が画面からも見て取れた。

 「私は野球観戦が趣味です」「どの球団が好きですか?」「チームは□□で、○○選手のレプリカユニホームを持っています」「それ、僕も持っています!」といった会話が新入社員同士で交わされ、リアルに会ったことがないとは思えないほどの盛り上がりが新チームを生成していく。

 また、プログラムのひとつである「先輩社員からの応援メッセージ」では、SSCWが重視している「1日3回のミーティング」と「仲間との関係性の構築のための雑談」の価値がうかがい知れた。先輩社員同士の会話には、リアルな空間で職場を共にしているような親密さと情報の共有があり、「仕事で困ったときは、必ず助けてくれる仲間がいる」という社員の声が誇らしげに聞こえた。

 「2016年1月に初めて入社者を迎えて以来、入社者を集めて行うオリエンテーションを毎回欠かさず続けています。重い障害がある方にとって、働けることがいかに貴重で大切なことなのかを、入社者や先輩社員のコメントや表情を見ていて、いつも強く感じます。そして、人と関わりをもって働くことは、体調管理などの負担もありますが、収入以外にも、人から頼られ、感謝されるなど多くのことが得られ、生活を豊かにするものだと痛感しています」(岡崎ゼネラルマネージャー)

● 「テレワーク(在宅就労)」で欠かせない信頼関係

 5年ほど前の「在宅就労」の試験運用当初は、誰とも会話しないことの心理的不安やストレス、自分の状況を会社側が理解してくれているか?といった声が社員(障がいのある人)から上がったという。とかく孤独になりがちな「在宅就労」においては、岡崎ゼネラルマネージャーの言う「人と関わりをもって働くこと」の意識と姿勢がよりいっそう大切であり、画面越しの仲間との一体感が、働くことのモチベーションを高めていく。

 いま、社会を改めて見渡せば、コロナ禍において、「テレワーク(在宅就労)」という勤務形態は一般的となったものの、その運用方法(マネジメント)に腐心する経営者や管理職が明らかに多い。また、働く側も、リアルな職場空間ではない労働環境にとまどい、心身の変調をきたすこともある。

 新入社員へのメッセージで、岡崎ゼネラルマネージャーは「在宅勤務では、『サボっていると思われるのでは?』と気にするかもしれないが、信頼関係があれば大丈夫です」と明言した。WEB上という仮想職場において、お互いが信頼し合い、密に連絡を取り合いながらチーム(組織)の一体感で仕事を成し遂げていく――障がいの有無にかかわらず、これが、「テレワーク(在宅就労)」を成功させる秘訣だろう。“離れていてもつながっている一体感”が企業の生産性を上げ、働く者の充実感をもたらすのだ。

 入社式では、5人のエリアマネージャーたちも新入社員へのメッセージをそれぞれ発信した。

 「分からないことはためらわずに何でも聞いてほしい」「在宅仕事は孤独ではありません。仲間が画面の中にいます」「もやもやした気持ちのまま仕事をするのではなく、どうやったら仕事が楽しめるかを考えてください」「いつでもたくさんの仲間がいることを忘れずに!」「(コロナ禍で)いまはたいへんな時期だけど、(時代の)変化を楽しんでほしい」

 テレワーク(在宅就労)のあり方に正解はない。しかし、企業と従業員がその最善な方法を探っていくことが、ウィズコロナの“働き方改革”では必要なのだろう。

 ※本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン2020」からの転載記事「ダイバーシティが導く、誰もが働きやすく、誰もが活躍できる社会」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。

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最終更新:1/14(木) 6:01

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