IDでもっと便利に新規取得

ログイン

だから僕は、社会問題をネタに漫才をする、本を書く

1/14 6:01 配信

ダイヤモンド・オンライン

 ウーマンラッシュアワー村本大輔──。沖縄の基地問題、原発、朝鮮学校についてなど、おおよそ今まで私たちが見てきた「お笑い」とはまったく違うものを、彼は舞台の上で繰り広げている。そんな彼がさまざまな地で見て、感じた“痛み”をつづったノンフィクション『おれは無関心なあなたを傷つけたい』が刊行された。「テレビに出ずに全国を回って人と話してきたのでそれを本にしました」と語るその本には、「2020年ベストワンの本」「泣きながら笑って読んだ」「この本だけは絶対に読んだほうがいい」と読者から絶賛の声が多数集まっている。今回は本書の刊行を記念して特別インタビューを実施した。どうして村本大輔は、社会問題を発信し続けるのか。その理由に迫る。(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)

● 透明にされている風景をリアルにしたい

 ――『おれは無関心なあなたを傷つけたい』というタイトル、メッセージ性が強く、とても印象的でした。村本さんが、この本で伝えたかったこととは、どんなことでしょう。

 村本大輔(以下、村本) 僕は、この国の最大の悲劇は国民の「無関心」だと思っています。たとえば今、シリアで内戦が起きているんです。空爆に一般市民たちが巻き込まれている。ただ、最近はあまりテレビでそのニュースを見ないから、この前ジャーナリストの人に「ニュースで見ないですけど、もう内戦終わったんですか?」って聞いてみたんですよ。そしたら、「いや、世界が飽きただけだよ」って。もう数字が取れなくなったから、誰もカメラを向けなくなった。でも、今でも内戦は起きてるんです。

 こんなこともありました。以前、ドイツに行った女性がアンネ・フランクの家の展示を見に行って、「大変だっただろうな。今の平和な時代をアンネにも見せてあげたいよ」みたいなことを言っていた。だから僕が「今シリアで同じような状況の子どもたちが大勢いるから、シリアも大変だよ」って言ったら、「そうなんだ」って、それで話が終わったんです。

 いやいや、物語は読めるけども、現実に起きてることには目当てられへんのかい、と。100年後、すべて物語にまとめて映画にしてもらってからじゃないとお前は見られないのか。ってことは、お前は今を生きてないじゃないかって思うわけですよ。

 代官山とか恵比寿を歩いていると、いい暮らしをしている子どもたちをいっぱい見る。でも、シリアで必死に生きてる子たちも同じ時代に生きてるんですよ。アンネ・フランクが今もいるんですよ。

 僕らは今、平和に生きて、幸せにやってるけれども、ちょうど同じ時間にシリアからやっと逃げてきた子どもたちが厳しい環境で働かされている。ネットはこんなに普及しても、ずっと世界中の人とは繋がってないような、隣の人とすら繋がってないような感じがある。

 だから、ちょっと触れるだけでもいいから、コネクトできるタイミングを増やしたいな、と思っています。この世には、そこに確実に存在するのに、ないものにされている景色がある。人たちがいる。そんな透明にされている景色を、僕はこの本で現実として突きつけてやりたいと思いましたね。

● 怒りや悲しみが、社会問題をネタにする原動力

 ──村本さんが、社会問題に興味をもちはじめ、それを発信しようと思ったきっかけは何だったんでしょう?

 村本「ABEMA Prime」っていうニュース番組ですね。そこにMCに呼ばれて番組に出て、いろいろわからないから勉強していたんです。で、わからないことを正直に「わからない」って言ったら、すごく珍しがられて。そこから、いろんなロケに行かされるようになったんですよ。被災地とかね。

 最初は「一緒に行ってくれ」って言われても、そんなに行きたいわけじゃなかったんです。ただ、現地の人と話して仲よくなってくると、彼らが「自分の言いたいことを言えない状況」を抱えていることがわかってきた。我慢している人が多いんだとわかったんです。

 ──現場を見て感じることがあったと。

 そう。それで、ちょうどその頃、ずっと同じネタで漫才をやっているのが退屈になってきてたんですよ。そのときまでよくやっていたのが、「バイトリーダー」というネタ。ただ、それ、僕がバイトをやってたときのネタなんですよね。ウケるから、劇場でもまぁよくやってたんです、バイト辞めたあとも。

 でも、もうバイトをやってないのに、バイトリーダーのことをネタにしているときの……なんて言うか「笑いを取るためにお笑いをやっているという虚しさ」みたいなものを感じてしまって。

 バイトやってたときは、きちんと自分のバックボーンから言葉が出てきた。だから、「バイトをやっていて、バイトリーダーから受けた屈辱や悔しかったことをネタにしよう」と思ってやってきたけど、今も同じネタをやることに違和感が出てきて。

 バイトやってないくせに、無理やり悔しさを捏造してお笑いをしてる感じが、虚しかったんです。お客さんは笑ってましたけども、絶対どこかで気づいてると思うんですよね。笑いが「芯まで響かない」感じ。

 そんなときに、被災者の方たちと話すようになって、アルバイトしていたころに抱いていた不満や理不尽への怒りのようなものが湧き上がってきたんですよね。それで、「あ、これ、あのときと同じようにネタにできるぞ」って思ったんです。

 ――本にも書かれていましたが、村本さんのネタや表現のルーツは「憎しみ」や「悔しさ」に起因することが多いんですね。

 村本 そうなんですよ。本にも書きましたが、バイトリーダーのネタも、バイトリーダーへの復讐心をネタで表現しただけで。今の漫才にしても、結局、社会問題を発信したいというより、自分がたまたま出会った人たちから聞いたことが自分の感情に直結して、それが蓄積されて、漫才になったという感じですね。

● 自分の表現で、誰かの「快」を生み出したい

 ――村本さんにとって、理想としている「笑い」のかたちはありますか?

 村本 もちろん笑いを取るのが仕事で、笑いを取るために仕事をしてるんですけど……自分の言葉と心が連動してない言葉を吐いている感じがすると、虚しいですよね。

 僕は、心で感じたものをいつも頭のなかに運んでおいて、それをいったん整理して、口から吐いて、そして笑わすっていうのがお笑いだと思ってるんです。一番いいときはいつもそういう流れでつくってるんですよ。社会問題についてネタにしてますけど、単に「今、心が動いたことを言葉で描きたい」というだけなんですよ。

 心が動かずに、頭だけで人の心を動かそうしているときは、やっぱりある程度ウケるんだけど、誰かの心は動かせない。だから、漫才のあとに、「不快」とか「痛快」とか、そういった「快」っていう文字が出るような感想があればいいと思っています。今回出したこの本の感想も、「不快」でもいいんですよね。とにかく、心に伝わればいいなと思う。

 この前も、年に1回ある「THE MANZAI」っていう漫才番組でバーッと吐き出したんですけど、「あんなもの、フジテレビで放送するなんて、カルトだ」「『THE MANZAI』であんなことやっちゃいけない」っていう意見がたくさん出た。

 それ、すごく面白いなと思った。キリスト教が日本に入ってきたときも、日本人はすごく不快な気持ちになって排除しようとしましたよね。ただ、キリスト教に救われた人も多くいたわけですよ。ある種、僕の漫才っていうのは、その状況と似てるのかなと思います。異物感はすごいし、不快に思う人も多いかも知れないけど、僕の漫才に救われる人も確実にいる。そういう人たちに響けばいいなと思っています。

ダイヤモンド・オンライン

関連ニュース

最終更新:1/14(木) 18:46

ダイヤモンド・オンライン

投資信託ランキング

Yahoo!ファイナンスから投資信託の取引が可能に

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング