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NHKにメッタ刺しされた「レオパレス」の恨み節

12/6 6:01 配信

東洋経済オンライン

 NHKと言えば、広告宣伝になりかねないという観点からどの番組でも企業名を出さない路線を貫いている。最近でも年末「紅白歌合戦」で瑛人がブランド名を含む「香水」の歌詞をそのまま歌えるのか話題になったばかりだ。そのNHKがドキュメンタリー番組である企業の社名を連呼したことをめぐって、水面下で争いが繰り広げられていたことがわかった。

■レオパレスが抗議した内容

 ここに2020年7月15日の日付が記された一通の「回答書」がある。今春、放送されたあるドキュメンタリー番組が度重なる抗議を受けたため、事態収拾を図ってNHK側が作成したものだ。

 あわや訴訟寸前までこじれたというこのやり取りについては、基本的に水面下で交渉が行われ、これまでほとんど報じられてこなかったが、抗議をしたのはアパートの施工不良問題で大揺れに揺れているサブリース業界の大手「レオパレス21」。

 今夏は経営危機のど真ん中で、本来、何を報じられても相手をしている余裕もないはずの企業である。そんな渦中のレオパレスが抗議したというのはどんな内容だったのか。

 そのドキュメンタリーは、3月にNHKBSで放映された『あなたのアパートは大丈夫? ~岐路に立つ投資用不動産ビジネス~』というタイトルで、アパートのサブリース問題に焦点を当てた番組である。

 抗議をするべきだと本社に働きかけた「レオパレス21」のオーナーがいう。

 「番組の作り方があまりにも不公正で一方的、しかも杜撰だったのです。確かにサブリースの業界には、これまで問題がなかったわけではないし、レオパレス21が世間を騒がせたのも事実。しかし、番組はサブリースの大手各社の事例を取材しているのに、社名が番組内で連呼されたのはレオパレス21だけ。それ以外の大手は番組の終わりにアンケートに答える形で一瞬、テロップが流れたのみ。普通に番組を見ている一般視聴者からすれば、サブリースの諸悪の根源は全てレオパレス21だと受け取りかねません」

 ここでサブリース業界が抱える構造的な課題を簡単に説明すれば、30年の家賃保証という謳い文句と、実際のギャップである。アパートを新築した後、10年も経過すれば、多くの場合、物件は不人気となり、オーナーがサブリース業者から家賃の減額を要求されるのは珍しくない。

 一方、オーナーは家賃が変わらないことを前提にして、建築費用の銀行ローンを組んでいるため、返済計画に無理が生じ、最悪、破綻してしまうこともあり得るのだ。

■レオパレスとは無関係な人が出ていた

 問題の番組でもこのパターンの被害者が何人も登場した。レオパレスのオーナーが続ける。

 「具体的には、銀行ローンが払えなくなってしまったアパートオーナーや、過去にだますような営業をしてしまったと後悔する元営業マンが番組の中で取材に応じていました。実は、いずれの方もレオパレス21とは無関係の方であることがわかっています。

 しかし、番組内で社名を明らかにしなかったために、何度も名前が連呼されたレオパレス21の悪印象が強く残ってしまった。世間を騒がせているレオパレス21ならば、名前を出しても支障はないだろう、抗議はしてこないだろうとタカをくくっているとしか思えませんでした」

 ほかにもレオパレス側が腹に据えかねる場面が複数ある。例えば番組冒頭のシーン。

 三重県津市の畑の中にあるレオパレス21のアパート群が映し出され、<ここは通称レオパレス銀座。10年ほど前は田畑だった1キロ四方の場所に賃貸住宅大手レオパレス21のアパートが40棟近く建っています>というナレーションが入る。

 しかし、実際のところレオパレスのアパート群を撮影するカメラの背後、100メートルも離れていない場所には、大東建託が建設したアパートが何棟も軒を連ねている。このことは現場まで足を運ばなくても、パソコンのストリートビューで簡単に確認ができる。

 なかば”狙い撃ち”されたと感じたレオパレスは、NHKに書面などを通じて少なくとも2度にわたり抗議を行った。これに対してNHKは制作主幹名での回答書を出し、こう述べている。ちなみに制作主幹とは制作局長に次ぐポジションだ。

 「番組の中で特定の個人や企業に関する情報を報じる際、当該企業あるいは個人を実名とするか匿名とするかは、取材で得られた情報、報じる内容や事案の社会的影響の大きさ並びに一般の認知度、そしてプライバシーの保護の必要性や情報源の秘匿など、あらゆる要素を総合的に考慮し、判断しております。一方で、当然のことではございますが、公共放送として、特定の個人や企業を宣伝し、あるいはあえて貶めるなどの目的で、実名・匿名等の判断を行うことは一切ありません。

 恐れながら、個別の番組に関する判断や制作の過程については、報道の自由及び編集権に密接に関わる重要な情報になりますゆえ、原則として一律にお答えしてはおりませんが、今回の番組についても、上記のような総合判断のもと、制作・放送いたしました。(中略)サブリース問題の代表格が貴社であると印象付けてしまうとのご指摘は、いずれも当たらないものと考えております(後略)」

 ところが、この回答にはレオパレス21側は納得していない。ある社員は、「メディア対応ができていないから風評被害がすごい。(テレビ東京)『ガイアの夜明け』から始まって、テレビ、新聞、雑誌すべてにたたかれた。それにしても天下のNHKにあんなひどい内容のものを放送されても訴えることもできないのだから嫌になる」と憤る。

 もっとも、NHKの番組作り自体がずさんだったかどうかは微妙だ。メディア研究者で、上智大学文学部新聞学科の水島宏明教授は、「番組を見ていないので、あくまで一般論で」という前提でこう話す。

 「今回のような場合、どこの企業名を出すかどうかは報道側にゆだねられている。サブリースの問題というのはもともとレオパレスに限らず、いろいろ問題化したケースで、視聴者にとって馴染みの深い社名を使うのはテレビではよくあるやり方だ。もちろん放送の場合は放送法があって、公正、中立と定められてはいるが、他方で放送の自由、報道の自由も決められているので、取材された側は怒るだろうが、レオパレスの社名だけ強調したのが非常に恣意的である、とは受け止められない」

■「ガイアの夜明け」手がけた制作会社

 ちなみに同番組のエンドロールには、制作著作として「日経映像」という社名が出てくる。同社は、『ガイアの夜明け』の制作も請け負っているプロダクションで、2年前、レオパレス21のアパートの天井裏に遮音や延焼を防ぐための界壁がないことをスクープした時にも日経映像が制作に名を連ねていた。つまり、レオパレス21問題の第一人者である制作会社が同番組にもかかわっていたわけだ。

 今回の件について改めてNHKに尋ねたところ、「番組は、NHKエンタープライズを通じて(株)日経映像に制作を委託したもので、放送で伝えた内容は事実と認識しています。個人や企業名を実名で紹介するかどうかは、取材で得られた情報、事案の社会的な影響の大きさなど、様々な要素を総合的に考慮して判断しています」という回答が返ってきた。

 レオパレスが名誉挽回できる日は来るのだろうか。

東洋経済オンライン

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最終更新:12/6(日) 6:01

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