モトリーフール米国本社、2020年11月23日投稿記事より
11月16日の月曜日は、第3四半期全体の中で投資家にとって最も重要な日だったと言えるでしょう。
というのも、この日はマネーマネジャーによる13F報告書の発表日だったからです。
13Fを通じて、ウォール街や個人投資家は、優秀なマネーマネジャーが前四半期に何をしていたのかを知ることができます。
投資業界の中では、ウォーレン・バフェット氏以上に注目されているマネーマネジャーはいないでしょう。
バークシャー・ハサウェイ(NYSE:BRK-A)(NYSE:BRK-B)の最高経営責任者(CEO)であるバフェット氏は、過去55年間で270万%以上のリターンを株主に提供してきました。バフェット氏の売買銘柄は、通常は大きな関心事です。
直近四半期のバークシャーの13Fは、かなり驚きの内容でした。
証券取引委員会(SEC)への提出書類を通じて11月16日以前に知られていたものを除き、特に大きなサプライズを5つ紹介します。
1. バークシャーが大手製薬会社に本格投資
最大の驚きは、バークシャーが大手製薬会社のメルク、ファイザー、アッヴィ、ブリストル・マイヤーズ・スクイブに投資していたことです。
新型コロナウイルス・ワクチンの開発競争が大きな利益になる可能性があるのは周知の事実であり、バークシャーはその分け前を望んでいたようです。
この動きの非常に興味深い点は、バフェット氏は過去10年近くにわたり医薬品銘柄のファンではなかったということです。バークシャーがジョンソン・エンド・ジョンソンの株式の大半を売却して以来、同氏は医薬品株の本格的な購入を控えてきました。
これは、同氏が臨床試験の結果を追跡調査する時間や意欲がないことと関係していると思われます。
バフェット氏は医薬品銘柄を回避しているため、同氏の部下であるトッド・コームズ氏とテッド・ウェシュラー氏が、大手製薬会社への投資を主導した可能性が高いでしょう。
2. さらば、コストコ?
もう1つの大きな驚きは、バークシャーが第3四半期中に倉庫型量販店コストコ・ホールセール(NASDAQ:COST)の持ち分433万株を全て売却したことです。
コストコは格付け会社のムーディーズと並び、バフェット氏にとって保有期間が5番目に長い銘柄でした。
コストコは大量仕入れによって他の食料品店よりもはるかに安い価格を実現しています。
また、会員制モデルによって利益率を押し上げつつ、顧客のブランド・ロイヤリティを維持しています。
バフェット氏がコストコを売却した理由には、コンセンサス予想に基づく2021年予想株価収益率(PER)が35倍以上(執筆時点)という割高なバリュエーションが関係しているかもしれません。
恐らく、バフェット氏とそのチームは、オンライン販売がコストコのビジネスモデルに与える長期的な影響を懸念しているのではないでしょうか。
理由が何であれ、同氏らはコストコの売却を後悔することになるでしょう。
3. 速やかに売却された金関連銘柄
バークシャーの13Fでは、金鉱株のバリック・ゴールド(NYSE:GOLD)の持ち分が第3四半期に42%削減されたことも明らかになりました。
これは極めて異例です。というのも、同社は前四半期に初めてポートフォリオに追加された銘柄であるためです。
現在、金関連銘柄を保有する理由はシンプルです。
世界の投資適格債のうち約17兆ドルがマイナス利回りとなっており、米連邦準備制度理事会(FRB)は断固として金利を過去最低水準かその付近に維持しています。
これは、インカム投資家が、インフレ率を上回るリターンを得る手段がほとんどないことを意味します。
そのため、人々は価値の貯蔵手段として金を選択しなければなりません。
しかし、バフェット氏は金のファンではありません。
同氏の見解では、金は実用性に欠け、保管にもコストがかかるため、投資には向いていません。
つまり、コームズ氏かウェシュラー氏が第2四半期にバリックを最初に購入し、第3四半期に持ち分の削減を選択したことになります。
4. M&T、また後で?
バークシャーは第3四半期中に、同社が4番目に長く(24年間)保有していた地方銀行のM&Tバンク(NYSE:MTB)の株式を160万株以上売却しました。
これは持ち分の35%に相当します。
この取引は、バフェット氏による最近の金融株売却の動きとある程度一致しています。
2020年、バフェット氏とその投資チームはウェルズ・ファーゴとJPモルガン・チェースを大々的に売却しており、ゴールドマン・サックスの持ち分は完全に売却しました。
バフェット氏は、FRBが複数年にわたる記録的な低金利を確約しているため、M&Tバンクを含む金融株の株価が上昇しないリスクが大き過ぎると考えている可能性があります。
しかし、M&Tバンクは地方銀行の中で常に最高レベルの資産利益率を挙げており、最も保守的で収益性の高い銀行株の1つです。
株価純資産倍率(PBR)は1倍付近となっており(執筆時点)、持ち分を削減するより購入する方が適している銘柄であると考えられます。
5. 再び通信株
最後のサプライズは、通信大手Tモバイル(NASDAQ:TMUS)の新規購入でした。
購入株数は240万株で、2020年9月30日現在の時価総額2億7,600万ドルに相当します。
この動きで興味深いのは、バフェット氏が数年前に通信会社のベライゾンとAT&Tの株式を売却したことです。
バフェット氏は一般にハイテク株と通信株を避けているため、今回の投資はコームズ氏かウェシュラー氏によるものであると分かります。
Tモバイルを選んだ理由は、次世代通信規格「5G」革命に関係していると考えられます。
無線通信のダウンロード速度は約10年ぶりの大幅な向上を見せており、企業や消費者は5Gのダウンロード速度に対応したデバイスへの買い替えに引き付けられるでしょう。
これは、数年間にわたる買い替えサイクルが続き、Tモバイルにとっては利益率の高いデータ通信の機会が豊富であることを意味します。
バフェット氏とバークシャーにとっては良い銘柄選択になるはずですが、同氏が自身のポートフォリオに関してどれだけ受動的になっているかを示しているのも確かです。
【米国株動向】ウォーレン・バフェット氏から学ぶことのできる4つの教訓
The Motley Fool
最終更新:12/6(日) 11:00
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