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イタリア人が「再ロックダウン」を望んだワケ~「休業中のシェフたち」が助け合ってやったこと

12/3 11:01 配信

東洋経済オンライン

 フランス、ドイツ、そしてイギリスが8月後半から9月にかけて感染を再拡大させていたのに対して、9月中は1日の感染者数を1000人台に抑え、感染対策の「優等生」とまで言われていたイタリア。ところが10月1日に2000人を超えた後は、タガが外れたように第2波の感染カーブは急激に上昇していった。10月16日には1万人(1万10人)、25日に2万人(2万1273人)と増え続け、3万550人になった11月4日、政府はロックダウンを決めた。

 ロックダウンと言っても、3月、4月の第1波で決められた全国一律型ではなく、感染状況によってイタリア20州を赤、オレンジ、黄色に色分けした。赤、つまりレッドゾーンに指定されたのは、第1波のときにも感染状況が特に深刻だったロンバルディア州(州都ミラノ)、そしてピエモンテ州(州都トリノ)、ヴァッレ・ダオスタ州(州都アオスタ)の北部3州と、南イタリア、ブーツのつま先に位置するカラブリア州(州都カタンザーロ)の全4州だ。

■外出する場合は「自己申告書」を携帯

 学校は中学2年生以上はオンライン授業になり、外出は必要最低限以外は認められない。必要があって外出する場合も、氏名、住所などのほか、外出理由、行き先の住所などを細かく記入した自己申告書を携帯する。違反すれば400~1000ユーロ(日本円にして約5万~12万5000円)以上の罰金。食料品店、薬局、雑誌スタンドなど生活必需品以外の販売は禁止。ただし第1波のときには営業が規制された理髪店、美容院、書店、スポーツ用品店などは今回は含まれていないし、公園での散歩も許可されているので、前回よりは少し緩い印象だ。レストラン、バール、ジェラテリアなど飲食店は営業を全面的に禁止され、デリバリーとテイクアウトのみ可能。自宅のある市から外への移動は禁止。

 一方オレンジゾーンに指定されたのは南イタリアの2州、プーリア州(州都バーリ)とシチリア州(州都パレルモ)。そして残り14州がイエローゾーンだ。それぞれレッドゾーンよりは規制が緩やかで、必要最低限以外の商店も営業可能で昼の間であれば自由に外出できる。とはいえ、学校は高校以上がオンライン、美術館、映画館、劇場、ゲームセンター、週末のショッピングセンターなどはクローズ。レストラン、バール、ジェラテリアなど飲食店は、オレンジゾーンはレッドゾーン同様営業禁止。黄色ゾーンは22時までは営業可能(店内で飲食は18時まで)。夜間の外出禁止はイタリア全域一律で、22時から翌5時までは外出禁止だ。

 この措置は12月3日まで有効だが、それ以前でも感染状況を見て、規制レベルは随時変更になった。例えばトスカーナ州(州都フィレンツェ)は最初はイエローだったのだが、感染が急激に拡大したためオレンジへ、そしてレッドへと変更になった。

 規制に対して反対の声が各方面から上がりデモや暴動がイタリア各地で起きた。規制によって大打撃を受けたレストラン業界の団体がまじめに訴える一方で、反対するために反対しているようなグループがパフォーマンス的に集会をするなどして、一時物騒な雰囲気が立ち込めた。だが全体的にイタリアの人たちは、意外なほどきちんとマスクをし、規制を守っていたという印象だ。

 第1波の恐怖が身にしみたのか、間近に迫るクリスマスをなんとか楽しく祝いたい一心なのか、感染対策を守った。国民の80%がカトリックと言われるイタリアでは、クリスマスは宗教的にとても大切なイベントでもあり、同時に家族と一緒に祝って過ごす大事な時間だからだ。

■「さっさとロックダウンしたほうがいい」

 ロックダウンに入る前の、感染が拡大しつつあった頃、何人ものイタリア人たちが「夜の外出規制とか、甘いことやってないで、さっさとロックダウンにして感染を抑えたほうがいい。そうでないとクリスマスに間に合わない」と言うのを聞いた。第1波のときには、あれほどステイホームを嫌がっていたのにだ。もちろんそこには家族で祝いたいという想いだけでなく、クリスマスに動くはずの大きな市場の流れで、コロナで疲弊しきったイタリア経済を活性化させたいという、祈るような気持ちもあっただろう。

 そんな甲斐あってか、11月20日頃から感染拡大のカーブは緩やかになり始め、イタリア全国のRt(実行再生産数)も最盛期の1.7(ロンバルディア州やピエモンテ州などに限って言えば2を超えていた)が1.08まで下がった(11月27日時点)。そして11月29日からは今までレッドゾーンだったピエモンテ州、ロンバルディア州、カラブリア州がオレンジゾーンに変更になった。

 マスクをして密を避け、手洗いをするという基本を守ってさえいれば、ショッピングに行く、散歩に行くなどは理由がなくても自由になった。とはいえ居住地の市から外への出入り禁止は続くので、例えば私は住所がトリノ市だから、中心街まで11キロの距離に住んでいても出かけて行くことができるが、市が違えばほんの500m先でも行くことができない。

 一方でトスカーナ州、ヴァッレ・ダオスタ州、カンパーニャ州(州都ナポリ)などはレッドゾーンのままとなった。12月3日には現在の法令が終了し、イタリア全土がイエローゾーンとなるという予想もある一方で、Rtが1を切らない限りは感染はまだ増えるということだから、外食やスキーバカンスはまだ解禁できないという厳しい見方もある。とはいえ、確実にいい方向に向かっている。

 ワクチンの到着にも期待が高まる。ロベルト・スペランツァ保健相は、2021年の1月末までに最初の34万回分を接種予定(2回の摂取が必要なので17万人分)と発表し、「ワクチンによって、(コロナの時代は)新しいフェーズへと道が開かれる」とコメントした。ただし「ワクチンを義務化はしない」とも。最初に接種できるのは、感染した場合の危険が一番大きい老人ホームの入居者とスタッフ、そして医療従事者の予定だ。

明るいニュースが増えてきたものの、コロナウイルスの二度の感染拡大がイタリア経済に与えた打撃は深刻だ。カトリック系社会救援活動団体のカリタスの調査によれば、この秋、新たに貧困になった人の数は前年同時期の31%から45%に増加し、カトリック教会の保護団体から食べ物の援助などを受けているという。

そして農業生産者団体のコルディレッティによれば、今年400万人の人がクリスマスに食べるものがない可能性があるという。イタリアの人口は約6000万人だから、約6%にもなるということだ。政府はさまざまな経済援助策を講じてはいるが、第1波の時の政府補助金をやっと受け取ったばかり、などという人も多いというのが実情だ。

■「助け合い」が各地で起きている

 そんな中、民間レベルの助け合いが各地で起きている。第1波のときにもスーパーマーケットで余分に買い物をして指定のカゴに入れておくという動きや、街の各所に箱があり「可能な人は何か入れて、可能でない人は取って」という活動があった(現在も続いている)。

 私の住むピエモンテ州トリノという街は、常設の青空市場がとても多いのが伝統で、中でもヨーロッパ最大級と言われるポルタ・パラッツォ市場では、毎日午前中、新鮮な野菜や果物、肉に魚、チーズなどの加工食品が売られ「トリノの台所」とも呼ばれている。そんなトリノの市場の商店主たちが集まり、毎週土曜の午後、その時点での売れ残りを必要な人に無料配布するという活動「サバト・サルバチーボ(食べ物を守る土曜日)」も起きている。これは困っている人を助けるだけでなく、食料廃棄問題にもメスを入れる活動として評価されている。

 同様にトリノのレストラン約20軒が集まって、必要とする人に料理を提供する「クチーナ・ソリダーリ(助け合いキッチン)」プロジェクトも始まっている。カジュアルなトラットリアからミシュランのスター付きレストランまで、さまざまな形態のシェフたちが集まり、自らも休業を余儀なくされていながら、すでに3万5000食を提供したという。

 無償の助け合いをする人々の話は私たちの心を温め、アフターコロナな未来に向かう希望と活力を与えてくれる。

東洋経済オンライン

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最終更新:12/3(木) 11:01

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