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新型コロナで患者が激減!「薬局」が直面している再編の道

12/2 7:01 配信

東洋経済オンライン

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、観光・宿泊、外食など多くの産業が減収減益の深刻な打撃を受けていることはよく知られているところです。医療においても受診控えによる外来患者減少により、病院や薬局の減収も小さくないとされています。

 11月12日に厚生労働省が発表した7月までの医療費の動向(概算)によれば、今年4~7月の調剤医療費(薬局の収入)は前年同期と比べて3.8%減少しています。

 全国に約5万9000店あると言われる薬局。その数は約5万5600店のコンビニ(2019年末、日本フランチャイズチェーン協会調べ)よりも多い状態です。そんな薬局の現場では、今何が起こっているのでしょうか。

 薬局では、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、患者が受診を控えたことで生じた、薬の処方日数の長期化が経営に大きな影響を及ぼしています。調剤の売上高は「処方箋枚数×処方箋単価」で算出します。処方日数が延びて受診回数が減れば、処方箋単価はあがるように見えますが、薬局に来ない分、処方箋の発行枚数は減少します。

 また、薬剤師が処方箋に基づいて調剤することで得ることができる基本料や技術料も減少します。基本料や技術料は純利益の部分にあたり、薬局経営にとって死活問題となります。長期処方に耐えうるよう仕入れも増やすわけですが、利益が落ちる中で支払いを増やしているので、キャッシュフローが悪化します。

 医療情報総合研究所の調査によれば、9月時点において、平均処方日数は前年同月比10%増の一方で、患者数は前年同月比7%減であり、「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」が全面的に解除された5月以降、水準が戻りつつありますが、第3波を迎え、今後のリスクも大きい状況です。

■大手も個人も厳しい環境に置かれている

 一般的に、各種事業者支援策は、「売上減少」を条件としているものが多く、売上高の多くを薬剤費が占める薬局はそれらを利用できないといった状況に鑑み日本薬剤師会は厚生労働省に支援を求めてきた背景があります。

 とくに個人薬局は、共同購買組織に加盟するケースはあるものの、一般には購買力が小さく仕入れ値と売り上げの差益も多くは望めません。なかでも、小児科や耳鼻咽喉科は、受診控えの影響が大きいとされており、佐賀県薬剤師会が独自に行った調査によれば、5月の保険収入は小児科(26.7%減)、歯科(26.0%減)、耳鼻咽喉科(25.9%減)などその影響は甚大です。

 個店の薬局経営者の集まりでは、運営資金が足りなくて「日本政策金融公庫でいくら借りたか」という話題が頻繁に出るという生々しい声も耳にします。さらに大手チェーンにおいても、調剤薬局事業の売上高は前年比より大幅に下がっている企業が散見されています。

 4月10日に発出された厚生労働省事務連絡により、電話やビデオ通話による診療や服薬指導が認められていますが、現在もその状況は続いています。それとは適用の条件は異なりますが9月には薬局においても、オンライン服薬指導に関わる点数が新設されました。点数が新設されたことは、薬局の収益向上の余地も生じます。

 オンライン診療による処方箋は、医師が患者の希望する薬局へ直接処方箋をFAXで送り、それを基に薬を用意して患者宅へ配送(処方箋原本は薬局が医療機関から後程受け取り)という動線をとることができます。

 しかし、実態として薬局にそのまま取りに来られるケースが多いとも聞きます。薬局関係者に聞くところによれば、大病院の前にある薬局から1日400件程度の処方のうち60件程度オンライン診療の処方が来てそれらをほぼ宅送しているケース、1日100件程度の処方のうち、10~15枚程度がオンライン診療で、半数は直接来局、郵送は2、3割、残りは次回来局時にお渡しのようになっているケース、オンライン診療処方箋は日に数件というケースなどさまざまです。

■オンラインも思ったより普及していない

 なかには、病院側で患者希望があればオンラインで対応できる処方箋を出して配送対応を勧める体制はあるものの、「患者側でその対応の存在を知らないがゆえに申し出がなく、通常の受診になるケースが主で、思ったように普及していない」という話も聞きます。患者も病院の方針に多分に左右されるというのが実情でしょう。

 オンラインが主たる動線にまだ至っていないとはいえ、「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太方針)の原案で「電子処方箋、オンライン服薬指導、薬剤配送によって、診察から薬剤の受取までオンラインで完結する仕組みを構築する」ことは明記されており、ワンストップのサービス提供体制を整えることはもはや必至となりつつあります。

 医師が受診控え対策でオンライン診療システムを導入するケースもあり、その近隣の薬局で呼応して共通のシステムを導入することもあります。患者体験としても、同じシステム内でオンライン診療を受けることができる診療所の検索、オンラインで服薬指導を受けて配送までしてくれる薬局を探せたほうがよいでしょう。

 大手チェーンでは一気にオンライン診療、ないしは服薬指導のシステム導入を推進しているところもあり、オンライン化が進んでいます。一方で、それ専用のシステムを導入する予算をとれない薬局であっても、Zoom(ズーム)、LINE、Skype、FaceTimeなど無料のビデオ通話ツールでも案内の仕方を工夫してうまく患者さんをオンラインコミュニケーションに繋げているところもあるようです。

 患者宅と繋いでの会話は、薬局の現場よりも患者の実態を確認しやすい側面もあり、自宅での薬管理が難しい方にはよりよいサポートともなりうるのではないでしょうか。

 普及においては、主な患者層である高齢者でもオンラインサービスに対応できるかという懸念もあります。現実に、スマホもパソコンもほぼ触ったことがない高齢者にオンラインで説明をすることが難しいケースもありますが、家族や薬局のサポートのもとに回数を重ねて慣れることもできます。

 もちろん、薬剤そのものの使い方の説明が必要なケースや、薬剤の大幅な変更があり、現物説明が望ましいケースなどもあります。対面と上手に組み合わせていくのが現実的な落としどころとなっています。

■最大手のアインでもシェア2~3%

 大手が、対応を進めていく中、個人の薬局は生き残っていけるのでしょうか。シェアでいえば、調剤薬局最大手のアインファーマシーズでも2~3%で、一定のクリティカルマスをもつ調剤薬局がありません。

 各社IR資料からも、大手チェーンによるМ&Aによる業界再編が加速していることが読み取れます。およそ5万9000店舗ある薬局は約2万5000企業・法人から構成されており、全体シェアからすればまだまだ個人経営薬局が大多数です。

 大手チェーンや医薬品卸による薬局の買収は続くことが予想されており、地域医療構想における公立病院の再編もそのドライバーとなる可能性があります。

 調剤報酬の減算傾向は続いており、かかりつけ機能であったり専門性を高めた機能をもつ薬局に対して傾斜的に報酬が配分されていっていますので、成長戦略を実行せずに現状維持を続けることが衰退と同義となりつつあります。

 飲食店のように多様性があって個人店舗が生き残る世界もありますが、最終的にお渡しする薬剤が原則店舗間で変わらない調剤薬局はその多様性が傍目にはわかりづらい側面があります。

 実際には、ドラッグストアやスーパー併設でOTCの販売を強化している薬局、高い専門性で医療に特化した薬局、在宅訪問に特化した薬局、地域に根強いファンをもち病院前ではなくとも地元の人が通ってくれる薬局、配送に特化した薬局などさまざまですが、その利便性や特殊性ゆえにしっかりと成長している店舗は存在します。

 とくに在宅領域は高齢化社会の到来で、今後も拡大が見込まれており、薬の収集などの業務の自動化や調剤補助への委譲が進み、そちらへ人員が再配分されるという動きも起こっています。

■減収対策ができていない薬局も

 コロナ禍への対策もまた多様で、減収対策ができていない薬局もあれば、残業削減や派遣薬剤師の雇用見直しなどのコストカットや、新規患者さんやリピーターの獲得、服薬アドヒアランス(患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること)の向上、在宅患者のフォロー、保険外収益の拡大など各種施策にとりくみ成果をあげている企業や法人は多くあります。

 立地に依存した受けの仕事にとどまらず、Webの動画や文章で薬や健康の情報を発信する、通院できない間の不安に対して電話相談を受ける、定期的に来局してくれている患者にメールや電話で様子を伺う、SNSや紙媒体で新型コロナウイルスの正しい情報を広める、来局の実績や予測をデータ分析して必要な方へ個別に連絡サポートを行うなど、一般的な顧客関係管理の考え方がより求められているようにも感じます。

 医療提供態勢への不安が広がる中、広い意味でより安全な医薬品利用へのアクセスを担い、消費者に求められる薬局が生き残っていくのではないでしょうか。

東洋経済オンライン

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最終更新:12/2(水) 7:01

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