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日本株市場、じつは「高配当株」を買ってはいけない…? その意外すぎる「真実」

12/2 7:01 配信

マネー現代

「バブル化」する株式市場

(文 大川 智宏) 株式市場は、新型コロナウイルス(以下、コロナ)による感染拡大をまったく意に介さずに急騰を続けている。

 景気の低迷が背景にある中で理論的な根拠を持たない高騰ということで、ほぼ間違いなくバブルといって相違ないと思われるが、バブルはいつ崩壊するかは誰にも分からず、また崩壊しないバブルもないことから、いつか発生するその惨事に備えておく必要はあろう。

 そんな状況もあってか(無関係かもしれないが)、周囲から「高配当利回りの株を買うのはどうか」といった声が聞かれ、高配当株への興味は個人投資家を中心として依然根強いようだ。たしかに、配当利回りは定期利回り目的の投資家層の需給による底堅さが期待でき、何よりも配当そのものの下方硬直性(不景気でも下がりにくい性質)を持つため、長期投資や堅実なリターンを期待するならば手堅い一手のように思われる。

 しかし、結論を言えば、高配当利回り株への投資は、今の株式市場の現状を踏まえると「最悪の愚策」であり、おすすめできない投資アイデアである。

 配当利回りが高いからといって安易に手を出すと、思わぬ損失を被る可能性が高い。今回は、その理由について、定性面と定量面の双方から解説していく。

資産を7割~8割ほど溶かしてしまう事態

 まず、詳細な解説に入る前に、配当利回りの投資効果(ファクターリターン)について触れたい。以下の図は、東証一部上場銘柄について、高配当利回り株を買い、低配当利回り株(無配銘柄含む)を空売りしたロングショートのパフォーマンスの累積値である。

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図:東証一部上場銘柄の配当利回りの投資効果
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 配当データは12カ月先コンセンサス予想配当額を使用し、高低の判断は母集団内の上位下位10%(10分位分類)に該当する配当利回りの値を用いている。計測期間は過去10年で、銘柄入れ替えは各月末だ。

 前提として、直近10年程度は、配当利回りを基準に銘柄を選んで機械的にロングショートで投資をすると、資産を7割~8割ほど溶かしてしまう事態となる。大損だ。

 低配当(もしくは無配)銘柄を買って高配当株を空売りした方が圧倒的に高パフォーマンスという、身も蓋もない結果だ。特に景気後退が始まった2017年以降から足元のコロナ禍の2020年まではその逆張りの傾向が顕著であり、景気の悪化に対して底堅さを見せるという本来の性質や定説は見る影もない状態である。

「権利落ち、配当落ち」のリアル

 では、なぜこのような悲惨な状況になっているのか。まずは、定性的な側面から配当利回り株を斬っていきたい。以下のように、大きく4つの要因を解説していく。

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図:配当利回りが機能しない理由(定性面)
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 (1)「配当は落ちた分と同じだけ株価が下がる」

 これは、投資の初心者でも知っていると思われる、いわゆる「権利落ち、配当落ち」だ。配当は、企業が獲得した利益および保有する剰余金から支払われるため、支払った分だけ当然ながら企業価値は減少し、権利落ちの際には配当利回り分だけ株価が下落することになる。

 少なくとも理論的には、配当を払おうが払うまいが、投資家が得られるリターンに違いはない。むしろ、受け取り配当金は実現損益として課税対象になるので、微量ではあるがリターンが悪化すると考えるべきだ。

 ただし、これは高配当株が「魅力的ではない」という意味であって、「積極的に売るべき対象である」ことにはならない。あくまで、配当はインカムゲインとキャピタルゲインが相殺されて中立な要素である、ということだ。

 また、長期投資家の観点からすれば、投資の一部が現金としてリターンが確定することのメリットもある。配当を吐き出さずに事業投資に回しても、それが成功するとは限らないからだ。

 あくまで生み出した利益を投資家に還元するという意味では、その最も原始的な手法である配当の行為自体を否定はできず、むしろ積極的な事業展開を意図しないのであれば、溜め込んでおくよりは配当として払ったほうがよいことにはなる。しかし、これが(2)の問題点につながる。

「外国債券」でも購入したほうがよほど賢明

 (2)「成長企業は、配当支払いよりも事業投資を重視する」

 これも一般によく耳にする話だ。成長過程にある企業は、積極的に事業を拡大する必要性があることから、稼いだ利益を還元ではなく事業へと再投資することが多い。それによってキャピタルゲインが得られれば、わずかな配当金を得るよりもよほど投資効率が良いというのは正しい議論だろう。

 ただし、前述のように事業投資が成功する確約はどこにもないため、これもどちらが正しいと断じることはできない。しかし、問題は配当を払わずにバンバン事業投資をする成長企業のほうではなく、安定的に高い配当を支払い続けている企業のほうである。こちらは、企業の存在意義の自己否定に近い印象を抱かせる。

 毎年、稼いだ利益の大半を株主に配当として還元してしまうということは、もう新規に事業を拡大する余地がなく、投資先が無い(必要ない)ことと同義である。つまり、将来的な成長性が乏しい企業だと読み替えることができる。

 そのような銘柄に積極的に投資資金が流れ込んで株価を押し上げるかというと、厳しいと言わざるを得ないだろう。投資家は、将来的に事業規模や利益が数倍、数十倍に成長していく銘柄を常に探し求めている。

 一度買ったら末代までその株を売らない、と心に決めている投資家は別として、年間2~3%の払い戻し金を狙い、数十年保有して投資元本を回収すると考える投資家はほとんど存在しないだろう。キャピタルゲインによるリスクを考えれば、同じ手法なら外国債券でも購入した方がよほど賢明な判断と言える。この考えが、(3)につながる。

売られて安いだけの高リスク株…?

 (3)「インカムゲインよりもキャピタルゲインの方が大きい」

 これは、そのままの意味で年間数%程度は上にも下にも簡単に吹き飛んでしまうということだ。債券ではなく株という高リスク資産に投資する以上、そもそも配当を狙う旨味はほとんどない。

 無論、業績もよく配当利回りも高い銘柄であれば、キャピタルゲインにインカムゲインが上乗せされて一石二鳥、ということになるが、その逆に利回りが高くとも業績が悪化した銘柄をつかんでしまうと、配当などその保険にすらならないほど一瞬で消えてしまう。そして、高配当利回り株はそういった銘柄である可能性が高い、というのが次の(4)だ。

 (4)「高配当利回り=売られて安いだけの高リスク株」

 こちらは、配当に限らず昨今のバリュー投資の機能不全の全般にいえることだ。たとえば、株価が200円で配当を4円支払う銘柄の配当利回りは、言うまでもなく2%である。ここで、仮にこの銘柄の業績の悪化が懸念され、株価が半分の100円まで売られてしまった場合、同じ支払い配当額であっても配当利回りは倍の4%にまで跳ね上がる。つまり、事業リスクが高く、その後に成長性が見込めないために高配当利回り化しているだけの銘柄が存在する可能性を考慮しなければならない。

 昨今の配当利回りを始めとした割安系指標がとてつもないマイナスのリターンを垂れ流し続けているのは、一般にバリュートラップと言われる「割安・高利回りの株が実はネガティブな要因で売られた高リスク株」という状態の株が、トラップというよりむしろ大勢を占めるようになってきた可能性が高い。

 これらの要因が複合的に作用して、高配当利回り株は市場で忌み嫌われるようになってきたと考えることができる。

決して魅力的ではない

 さて、ここまでは定性的な一般論を解説してきたが、これについて定量的な裏付けをしていきたい。手法はシンプルに、銘柄を高配当利回りのグループと低配当利回りのグループに分け、両銘柄群で様々なファクターにどのような違いがあるのかを観察するだけである。

 具体的には、現在の東証一部上場銘柄について、冒頭のパフォーマンス計測と同様に配当利回りの上位下位10%(10分位)に該当する銘柄を抽出し、両者間で配当の状況、収益性、成長性、財務の平均値を比較する。

 まずは、配当支払いの状況を見る指標としての配当性向の比較だ。

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図:配当利回り水準別 配当性向の比較
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 これは当然だが、配当利回りの高い銘柄群の方が実績・予想ともに配当性向は圧倒的に高くなる。

 これ自体は特に配当支払いの積極性の高低を見ただけで問題ないような気もするが、問題はその水準だ。高配当利回り群は、実績値について100%を超えており、予想でも6割近くを配当として吐き出していることになる。

 まず、100%を超えるということは、稼いだ利益以上に配当を支払っていることになり、足元のコロナ禍で業績が傷んでいるとはいえ、これは決して健全な還元とは言えない。また、予想の6割と合わせて考えても、将来的に事業拡大へと資金を割く必要性に乏しい業種・企業と読み替えられるため、この数字だけを見ても決して銘柄として魅力的であるとはいえないだろう。

データは物語る

 続いては、成長性としての予想純利益成長率の比較だ。

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図:配当利回り水準別 予想純利益成長率の比較
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 先ほどの配当性向の印象を裏付けるかのような結果である。短期としての12カ月先はわずか(といっても10%程度)の差しかないものの、長期成長率としての3期先を見ると、大きく値が異なってくる。50%近い利益成長の差異だ。

 やはり、還元に積極的な企業は、よく言えば成熟、悪く言えば成長余地に乏しい銘柄ということがこういったデータからも見て取ることができる。

 次いで見るのは、収益性としてのROEとFCF創出力だ。

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図:配当利回り水準別 収益性の比較
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 両収益性指標ともに、低配当利回り銘柄の方が高いことが分かる。

 FCF創出力は、総資産を活用してどれくらいのFCFを稼ぎ出しているかを見る指標であり、ROEとともに資産の質(効率性)を見る側面もある。この結果は、バリュートラップ、つまり収益性が低いために株価が売られて安くなり、高配当利回り化している仮説を裏付けるものだろう。

 特に、昨今はROEなどの収益性指標は投資リターン獲得の観点で重要であり、かつ投資家からの注目度も高いことから、逆に低配当利回り群はその高い収益性が株高へとつながり、利回りが低下したとも考えることができるだろう。

高配当利回り銘柄の「危険性」

 そして最後は、財務としての自己資本比率の比較だ。

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図:配当利回り水準別 自己資本比率の比較
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 結果は、低配当利回り群の方が値は高くなる。これは、単純に負債が少なく財務が良いということもあるが、それよりも先ほどのROEと合わせて考えるとより自己資本比率の値が持つ意味は大きくなる。一般に、ROEは負債を借り入れてレバレッジを上げることで嵩上げすることが可能だが、低配当利回り群はROE・自己資本比率の双方が高配当利回り群よりも高い。

 つまり、低配当利回り銘柄は、余計な借り入れをせず、現金性の資産を多く抱えつつも、事業の成長と高い収益性を実現可能な銘柄群であるということだ。

 これらの結果および考察を踏まえれば、冒頭の配当利回りの投資効果には納得感があり、かつ高配当利回り銘柄に投資することの動機の弱さ、危険性について理解できるだろう。

 とはいえ、低配当利回り株の中にも、単純に「事業が苦しいために配当を支払う余裕がない」というグロース・トラップのような銘柄が含まれないとも限らない。

逆張り「高パフォーマンス」銘柄はこちら!

 そこで、参考までに低配当、高利益成長、高ROE、高自己資本比率の銘柄を添付した。

 ちなみに、配当利回りの逆張りと自己資本比率を組み合わせる(低配当利回り・高自己資本比率を買い、高配当利回り・低自己資本比率を売り、銘柄数の問題で10分位ではなく4分位の組み合わせ)だけでも、以下の図のような強烈なパフォーマンスを生み出すことが分かっている。

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図:配当利回り逆張り×自己資本比率 ロングショートのパフォーマンス
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 配当利回り投資の逆張りアイデアとして、参考にしていただきたい。

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低配当利回り、高成長、高収益、高自己資本比率銘柄
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マネー現代

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最終更新:12/2(水) 7:01

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