IDでもっと便利に新規取得

ログイン

「朝ドラ次期ヒロイン」杉咲花の知られざる決意

11/29 7:01 配信

東洋経済オンライン

 「女優をしていて感じるのは、自分との戦いで、基本的に孤独と向き合っています」

 インタビューの途中、“仕事をしていて最高と感じる瞬間とは?”という問いに対し、予想もしなかった答えが彼女から返ってきた。

 しかし、この答えは、若くから数々のドラマで主演という大役を担ってきたからこその、偽らざる本音にも聴こえた。彼女は、その孤独の先にある、かけがえのない時間の醍醐味を語ってくれた。

 「お芝居をしていると、普段の生活では抱けないような感情に出会えたり、キャストだけではなくスタッフさんを含め、いろいろな役割に特化した才能を持った方々との出会いがあったりします。もともと、みんなでひとつの作品に向かって努力をするのが好きなので、その時間が今、いちばん楽しいです」

 新型コロナ感染症の影響で、人々はさまざまな価値観や多様な生き方に揺れている。11月30日から放送されるNHK連続テレビ小説『おちょやん』でヒロインを演じる杉咲花は今、作品を通して、何を届けようとしているのかーー彼女の挑戦心と決意に迫った。

■日本の朝は、朝ドラから始まる

 人気女優への登竜門として注目されてきたのが、NHK連続テレビ小説(朝ドラ)だ。最近では有村架純や土屋太鳳、永野芽郁など、今をときめく若手女優たちが“朝ドラ”出演後に全国区でより知名度を上げ、飛躍している。杉咲花にも『おちょやん』のヒロインが決定したときは、特別な感情が芽生えた。

 「“朝ドラ”は『とと姉ちゃん』に出演させていただいていますが、その前後にもオーディションを受けていて、いつかヒロインをやりたいという思いがずっとありました。「自分には縁がないのかな」と思う一方で悔しさもあったので、今回 『おちょやん』で千代をやらせていただくことになって、本当にうれしかったです。

 毎日、朝ドラを観ている方々にとっては、生活の一部のような存在になっている場合もあると思います。そんな作品に携わらせていただけることが光栄です」

 杉咲花が演じる『おちょやん』のヒロイン、竹井千代は明治の末、大阪の南河内の貧しい家に生まれ、小学校にも満足に通わせてもらうことができず、9歳のときに、道頓堀の芝居茶屋に女中奉公に出される。そこで華やかな芝居の世界を目にしたことで女優を志し、芝居の世界に飛び込んでいく。

 杉咲花にも共通している女優を目指す物語。彼女が女優を志した原点には、どのようなきっかけがあったのだろうか。

 「小さい頃からドラマが大好きで、1クールの間に放送しているドラマを全部見るくらい夢中だった私は、女優の志田未来さんに憧れてこの世界に入りました。大好きな作品、そのほとんどに志田未来さんが出演されていたんです。それで自分もお芝居をやってみたいなと思ったのがきっかけです。ちょっと千代と似ているのかな、と思う部分ですね」

 作品の中で千代には、戦争、離婚など険しい試練がどんどん降りかかってくる。負けずに前を向いて進んでいくヒロインは、不死鳥のように女優として復活を果たし、「大阪のお母さん」として絶大な人気を獲得する。杉咲は台本を読んだり演じたりするうちに、『おちょやん』という作品自体が、自身にとっての大きなモチベーションになっていることに気づいたという。

 「いろんな人と出会っていろんな場所に行く千代ですが、どこにいっても周りの人たちから愛されます。最初はキツイ対応をされることもありますが、諦めずにまっすぐ向き合う千代の人柄が、すてきだなと感じます。

 自分が落ち込むところや悲しい姿を人の前で見せないところが、すごいなとも思うし、不器用だなとも思います。でも、自分の力で立って進んでいこうとする人だからかっこいい。自分と似ているかどうかは……どうでしょう まるで違うということはないです (笑)」

■コロナ自粛をどう過ごし、作品へ活かしたのか

 2020年春、新型コロナウイルスの感染拡大は、エンターテインメント界にもかつてない危機をもたらした。テレビ番組の制作は中断、新作映画も公開できない状況が続いた。実際『おちょやん』の現場は、クランクインしてから数日間、撮影の途中で自粛期間に突入したという。この時期をどんな心境で過ごし、逆境を乗り越えようとしていたのか。

 「自粛期間があって、台本を読む時間がものすごくありました。不安だった関西弁を練習したり、台詞をどんどんと覚える時間があり、自分にとってはすごく良い時間になりました。撮影データを監督が送ってくださり、千代の子ども時代を演じる毎田暖乃ちゃんのお芝居もたくさん観ることができたりして。

 もし自粛期間がなければそういうことはできなかったと思うと、千代と向き合う時間を得られたことで、より現場に入るときの心持ちができたように感じています」

 今回、杉咲花は大阪の喜劇の女優を演じる。文学界や映画界において、「喜劇」はさまざまな解釈で作品化されている。喜劇王チャールズ・チャップリンは「人生は近くで見れば悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」という言葉を残している。

 今作の撮影期間中、杉咲花は初めて生で大阪の喜劇を鑑賞した。その際、出演者が舞台に登場するシーン、その姿勢に触れ、改めて喜劇の奥深さを実感したという。

 「お客さんたち、みんなに楽しんで笑ってもらって今日を終わるんだというような空気感に鳥肌が止まらなかったんです。人を楽しませるために一生懸命に向き合われている姿にすごく感動しました。実際にコメディー的な要素があるドラマを撮影していて、笑ってもらうのはめちゃくちゃ難しいと感じています。

 監督によってはカットを全然かけないで、シーンが終わった後のアドリブを楽しんでいるときもあり、頑張ってアドリブを言ってみたりするのですが、びっくりするぐらい現場がシーンとすることもあって。ものすごく落ち込むのですが、つぎ頑張ろうと思うぐらいにメンタルが強くなってきているのも感じています」

■杉咲花が描く、理想の女優像とは

 1961年に放送が始まり、日本の朝に、その時代が求めるテーマを描いてきたNHKの連続テレビ小説“朝ドラ”は、昭和から平成、令和へとつづく半世紀以上にわたって、テレビの「朝」を彩ってきた。

 明るく元気な女性の一代記、逆境の中でもたくましく生き抜いていく女性像、社会の一線に出て働く女性の生きざま、時代とともに変化する多様なヒロインと家族の物語を紡いできた。そんな大役を、どのように受け止めているのか。

 「自分の中では、どの作品をやらせていただくときにも愛情を持ってやることに変わりないと思っています。ヒロインだからといって気負いすぎず、一番大事にしないといけないことは女優としてちゃんと立つことなので、そこだけをちゃんと考えるようにしています。

 特にこういう時期ですし、苦しい思いとか大変なことがみんないっぱいあると思うんですが、「あとちょっと頑張ってみるか」とこの作品を観て、きっと思ってもらえるんじゃないかと思っています」

 “朝ドラ”のように長い期間、ひとつの役を演じられる機会は多くはない。そんな『おちょやん』を終えた後、杉咲花が目指す「理想とする女優像」を最後に聞いてみた。

 「いい緊張感を持って、”必要”以上の”期待”を突破できる女優になりたいですね。どんな女優というよりも、現場での立ち居振る舞いや姿勢を大切にしているので、演じるときは新鮮な気持ちを忘れずに取り組んでいくことを目標にやっています」

 答えがひとつではない時代。ありのままの自分で、これからも歩む。

 厳しい時代の荒波に流されず軸を持って生きていく杉咲花の言葉は、今を生きる女性の「等身大の生き方」の道標にも感じた。

(写真/安田健示 スタイリスト/井伊百合子 ヘアメイク/秋鹿裕子(W))

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:11/29(日) 14:36

東洋経済オンライン

投資信託ランキング

Yahoo!ファイナンスから投資信託の取引が可能に

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング