■米ドル/円は安値圏でのレンジ変動にとどまっている
米ドル/円は、依然、安値圏でのレンジ変動にとどまっている。
前回のコラムで指摘していたように、103.50~105.50円というレンジの脱出が前提条件なので、ブレイクがない限り、これからのトレンドを計り知れない。断定的な判断は誰でもできないが、円高傾向の継続を有力視するのが、どうやら市場の主流な見方のようだ。
もっとも、米ドル全面安の流れにおいて、円高の傾向を特別視すべきではないだろう。
株高の進行が鮮明になっている中、「リスクオンの円高」云々も事実ではない。なにしろ、主要な外貨のうち、円はむしろ一番弱い方であり、それは、ドルインデックスと米ドル/円の値動きを比較すれば一目瞭然だ。
■なぜ、「リスクオンの円安」が見られていない?
主要な外貨と言えば、一般的にユーロや英ポンド、豪ドルが挙げられるが、コロナショックが起こった3月高値と見比べればわかるように、ユーロと豪ドルは、現状、米ドルに対して、かなり高い水準に位置している。英ポンドも、3月高値以上をキープしている状況だ。
対照的に、米ドル/円は11月6日(金)安値で測っても、3月安値(つまり円の高値)から2円以上の差があったから、円高云々が誇張されるべきではないというわけだ。
ゆえに、円高より米ドル全面安の方が、目下、市場のテーマである。
米ドル全面安の流れにおいて、主要な通貨のうち、比較的、弱い円だけを挙げて円高とはやすのは適切ではなく、また健全な見方ではなかろう。
米ドル安の懸念が「ホンモノ」だとすれば、円高懸念があっても、目先なお杞憂と言えるわけも、そこにある。
そもそも、歴史的な世界緩和ムードの中、また米国株が史上最高値を継続的に更新している中、「リスクオンの円高」はあっても限定的で、継続されるわけはなかろう。
むしろ、逆に聞きたいのは、なぜ、「リスクオンの円安」が見られていないか、である。
ただし、こういった疑問に答えるのは困難ではない。前述のように、米ドル全面安なので、米ドル/円における円安が進まない原因はほかならぬ、米ドル安の本流に対抗できないからである。
また、視点を変えれば、円安の流れが維持される、という答えも見つかるかと思う。
■主要クロス円では「リスクオンの円安」が見られている
言ってみれば、米ドル全面安の中、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における円安トレンドは継続しており、これから一段の進行があり得る。
主要クロス円の値動きに照らして考えると、「リスクオンの円安」が確認されているのではないかと思う。
ユーロ/円、英ポンド/円、豪ドル/円の三大クロス円の値動きから、共通の変動リズムを見つけた。
9月に入って、いったん頭打ちし、その後、調整波を形成していたが、足元でそろって従来の流れ、すなわち、外貨高・円安のトレンドへ復帰していたと見る。
調整波動のパターンはそれぞれであったが、調整完了、また円安の流れに復帰したことは共通であることを重視すれば、「リスクオンの円安」を自然な流れと認定できる。
もっともポピュラーな調整パターンを示したのは、ユーロ/円と豪ドル/円だろう。
ユーロ/円、豪ドル/円は、9月に入ってから反落し、10月末まで反落を続けたが、典型的なジグザグ型調整波動を完成させ、11月9日(月)の大陽線をもって、いったん子波bのトップをブレイク(ユーロ/円は再打診に留まっている)した。よって、ここから10月安値を更新しない限り、再度9月高値をトライする可能性が高まる。
英ポンド/円は、やや変調だった。
EU(欧州連合)離脱問題が絡み、9月22日(火)まで、ほぼ一本調子で下落を果たしたが、3月安値を起点とした全上昇幅の半分押しにとどまり、また、再度140円の心理的大台の打診を果たしたから、ここから8月末高値へ再度接近しても自然の成り行きと思われる。
要するに、米ドル全面安の中、主要な外貨のうち、比較的弱い円が売られやすく、また、すでに売られやすいことが確認されているから、「リスクオンの円高」は事実ではなく、円高は、やはり杞憂だと言える。
■とはいえ、米ドル/円103.50円割れは警戒されるが…
とはいえ、米ドル全面安の流れが強ければ強いほど、米ドル/円の103.50円割れが、なお警戒されるだろう。
やはり米ドル/円の一段下落が想定され、3月安値へ再度接近することも十分あり得る。
この場合、主要クロス円における乱高下が生じ、外貨高・円安の流れは変わらないとしても、一時的な振れ幅の拡大や円高方向への振れも警戒される。
しかし、仮にそのような値動きがあっても、主要クロス円におけるメイン基調は変わらないと思う。
言い換えれば、米ドル全面安なので、米ドル安が主因でもたらされた円高があっても、リスクオンの環境の中、円のみ独歩高になる局面は想定されにくい。むしろ、主要な外貨のうち、円が比較的「出遅れ」ているのが、より鮮明になってくるのではないかと思う。
こうなると、途中の振れ幅が拡大されても、メイントレンドとして、主要クロス円における外貨高・円安の傾向が維持されるはずである。市況はいかに。
13:30 執筆
ザイFX!
最終更新:11/28(土) 14:01
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