IDでもっと便利に新規取得

ログイン

「K-POPの裏側」描くNetflix映画が話題のワケ

11/27 13:01 配信

東洋経済オンライン

Netflix、Amazon プライム・ビデオ、Huluなど、気づけば世の中にあふれているネット動画配信サービス。時流に乗って利用してみたいけれど、「何を見たらいいかわからない」「配信のオリジナル番組は本当に面白いの?」という読者も多いのではないでしょうか。本記事ではそんな迷える読者のために、テレビ業界に詳しい長谷川朋子氏が「今見るべきネット動画」とその魅力を解説します。

■K-POPガールズグループとして史上初の出場

 K-POPが今、なぜこれほど人気なのでしょうか。日本では第4次韓流ブームと言われ、世界的にも注目を集めています。そんな興味関心が高まるK-POP躍進の裏側をうかがい知ることができるのがNetflixのオリジナルドキュメンタリー映画『BLACKPINK ~ライトアップ・ザ・スカイ~』です。

 密着したのは韓国三大芸能事務所の1つ、YGエンターテインメント所属のJISOO(ジス)、JENNIE(ジェニー)、ROSÉ(ロゼ)、LISA(リサ)からなる4人組のガールズグループBLACKPINK。

 2020年10月2日にリリースされた初のフルアルバム「THE ALBUM」は米ビルボードのメインアルバムチャートで初登場2位を記録するなど、これまでK-POPガールズグループとして歴代最高のヒット記録を塗り替え続けています。所属元が時価総額1兆円上場で話題になった男性ヒップホップグループBTSと並んで、世界進出に成功するK-POP二大勢力と言われる立ち位置にもあります。例えBLACKPINKのファンでなくとも、勢いのあるK-POP産業の今の空気感を捉えるには持って来いの作品なのです。

 序盤戦で伝わってくるのはBLACKPINKひいてはK-POPの強み。世界的トップアーティストのセレーナ・ゴメスやラッパー界の女王カーディ・Bとの共作は話題性だけでなく、欧米のマーケットに受け入れられるスタイルを確立させていることをまざまざと見せつけてきます。

 時代のニーズに合わせて変化させるのが得意な韓国エンターテインメントの特徴を掴んでいた場面もあり、それは「K-POPって何?」の問いにBLACKPINKのプロデューサーで自身も過去にアイドル活動していたTEDDY PARK(テディ・パーク)が答えたときでした。「僕たちが韓国人だからK-POPと呼ばれるのか? 韓国語で歌っているだけでしょ」。人種や文化、言語の違いを受け入れる今のマーケットにしっかり落とし込んでいるからこそ言える言葉です。

 やや情緒的ながら、BLACKPINKを通じて世界各地で社会現象になっているK-POP人気の背景を追っていくなか、最大の見せ場はアメリカ最大規模の音楽の祭典、コーチェラ・フェスティバルにK-POPガールズグループとして史上初の出場を果たすシーンにあります。

 リサの故郷であるタイ・バンコクを皮切りに、アジア・北米・ヨーロッパの国々を9カ月かけてまわったBLACKPINKの2019年世界ツアーに同行した様子を含めてその舞台裏をカメラに収めています。BLINK(ブリンク)と呼ばれる世界中にいるファンにはたまらない未公開場面がたっぷり届けられたというわけです。

 ただし、この作品のもう1つの醍醐味はK-POP躍進の裏側を描くところにあります。音楽ドキュメンタリーにありがちなプロモーション優先度は実は低め。丁寧に残されたデビュー前のアーカイブ映像やBLACKPINKメンバー1人ひとりが語る言葉からそんな印象を持たせています。

■先の見えない下積み練習生時代

 日韓プロジェクト発のオーディション番組で一躍有名になったNiziUのようなグループ結成でデビューの切符をつかみ取るケースもありますが、BLACKPINKのメンバー4人はそれとは異なります。

 4人共にYGエンターテインメントに所属するためにオーディションを受け、デビューできるのか保証されないまま練習生として4~6年の下積みを積んで2016年8月にデビューしています。韓国芸能界では手塩にかけて長期にわたって練習生を育てますが、付いていけない脱落者の続出もよくあるのです。以前、ソウルの別のとある芸能事務所を訪れたときも、「この仕組みが韓国芸能のレベルを上げている」という話を実際耳にしました。

 「朝から晩まで寝食を共にし、1日の練習時間は14時間。13日連続でトレーニングを受けると、ようやく1日の休みをもらえる」と、メンバー自らそう語り、かつての練習生の姿も映し出されます。当時を振り返りながら、素直な気持ちをよく言葉にするロゼは「先の見えない日々が続いていた」と本音をこぼしてもいます。また客観的な視点を持つジェニーは、「ガールズグループって難しい。センターがいいとかモメ事が起こる。だけど4人の場合は皆が自分の役割を理解しているからそれがない」とタブーの話題もさらりと語ります。

 苦労話や孤独感を語り続ける彼女たちから時に影のような暗ささえも感じます。そこにはアイドルとしての夢物語よりも現実を生きる1人の人間の夢物語として見せたいという彼女たちの意思がありそうです。

 つねに沈着冷静なジスの「好きなことを仕事にできる人はそんなに多いわけじゃない。幸運に恵まれた人だけ」という言葉や、ムードメーカーのリサすらも「この先新しい若い世代に(人気を)取って代わられてもそれはそれで構わない。忘れないでいてくれればね」と話しているからです。

■韓国系アメリカ人監督が選んだラストシーン

 彼女たちの心情をうまく引き出しているのは監督の手腕も大きいはず。Netflixオリジナル作品『美味しい料理の4大要素』も手掛けた韓国系アメリカ人のキャロライン・スーが本作の監督を務めています。このドキュメンタリーに関わることになって、初めてK-POPの世界を知ったという監督の新鮮な視点が功を奏したのではないかと思うのです。

 米最大手のエンターテインメント誌『Variety』のインタビューに対して、スー監督は「彼女たちがどのようにしてBLACKPINKになったのか、そしてそれが現在の彼女たちを作り出していることを伝えるストーリーにしたいと思ったのが最初の構想段階にあった」と語っています。

 実際に彼女たちと会って話すと、予想していたものとは違っていた様子。「それがかえって面白かった。彼女たちはどうやって頂点に達したかというよりも、スタート地点にいると感じているのです」。このときのファーストインプレッションを大事にしたからこそ、彼女たちの心の内にまで入り込むことができたというわけです。

 食事をしながら20年後の自分たちについて話しているガールズトーク満載のシーンがエンディングを飾っているのですが、実はこれが最初の撮影だったことも明かしています。「進化し続けるBLACKPINKのエンディングにぴったりだった」と話す監督の言葉に大きく頷けます。BLACKPINKの光の部分と、そして闇までもあえて映し出しているのは、それだけ世界で人気が確立し、自信の表れであることを見せつけられる作品なのです。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:11/27(金) 18:16

東洋経済オンライン

投資信託ランキング

Yahoo!ファイナンスから投資信託の取引が可能に

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング