20億回再生にたどり着くための「基本のキ」
(文 マネー現代編集部) YouTuberの世界的なスターは、ここ数年の間、2010年以降に生まれた世代、アルファ世代のなかから現れている。なかでも、雑誌『Forbes』が2年連続で「世界でもっとも稼ぐYouTuber」と認めたライアン・カジくん(9)は、推定年収30億円超(2019年度)、これまで最多再生回数を記録した動画は、実に20億回以上再生されているトップクリエイターのひとりだ。
ライアンくんのチャンネルの仕掛け人は、父であるシオン・カジさん。15歳まで日本の福島で育った日本人だ。中学の頃、渡米し、コーネル大学でサイエンスエンジニアリングの修士号を取得、その後建築家としてキャリアを築いていた人物だ。
その彼が、いまや2700万人ほどの登録者数をもつ計9つのチャンネルを、自ら経営するプロダクションで日々運営するに至ったのは、ライアンくんの一言がきっかけだったという。このほど発売の『マンガでわかる YouTuber養成講座』は、世界のトップYouTuberを生んだシオンさんが、チャンネル開設からの5年余りを振り返りながら、これまでのノウハウをマンガとテキストで解説した書籍だ。
YouTubeチャンネルを始めるための基本中の基本から、チャンネルをきっかけにして、ビジネスに結びつけるブランディングをどう組み立ててきたのか、その実際まで、トップYouTuberの仕掛け人ならではのエッセンスが詰め込まれている。第1章のマンガ+解説を、無料公開!
最初にはじめたRyan’s Worldの前身、Ryan Toysreviewは、いわゆる「オモチャ」レビューです。チャンネル開設にあたって、「誰に向けて何をやるのか」は、どれだけ考えてもよいくらい考えるべきテーマです。
私たちが「オモチャ」を選んだ理由は、ターゲットとして考えていた未就学の子どもたちの興味を自然にそそる題材だったこと、それに何より、ライアン自身が興味をもっていたのが理由です。
このほか、その時点で注目されているチャンネルの内容に目を向けてみるのも良いでしょう。当時は、「オモチャ」や「人形劇」などのトピックが流行していて、子どもユーザーが急増していたのも大きな理由でした。
面白さは「最初の5秒」で決まる
YouTubeでは、視聴者はひと目でいろんなサムネイルを含む画面を見ています。いま見ている動画の脇や下部には、「次の動画」(関連動画)が表示されています。
視聴者は、意識するしないにかかわらず、関連動画のサムネイルを眺めていて、いま見ている再生中の動画の途中だろうとお構いなしに、面白そうな動画があったら、すぐにそのサムネイルをタップ(またはクリック)して、新たな動画を見始めます。私の感覚では、最初の5秒で「あ!」と、惹き付けられない動画は、すぐに他の関連動画に移られてしまう、と感じています。
詳しくは後に説明しますが、YouTubeには、いろいろなアルゴリズムを駆使して、ユーザーの滞在時間を最大にする仕掛けが張り巡らされているようです。関連動画も、その仕掛けの一つです。動画同士の関連が、どんなロジックで弾き出せれているのか? これまでの経験から、イメージとしては下図のようなつながりがあるように感じています。
この考え方でいけば、少し関連性があって、少し違うトピックも盛り込める。そんなテーマを、チャンネルの軸に据えるのがおすすめ、ということになります。上図でわかる通り、「オモチャ」の場合なら、「オモチャレビュー」「人形劇」「フィギュアコレクション」などのトピックがアルゴリズムによって、おすすめされる=関連動画として選ばれるはずです。
チャンネルの更新頻度は、なるべく高くしたいものです。しかも更新ペースは、できるだけ変わらず継続できるのが望ましい。目指すペースは、週2~3回の更新です。私はスタート時点で、この更新頻度をなるべく高めようと考えて、1本あたりの制作費をなるべく抑えようと考えました。
そこで、ライアンとロアン(妻)に提案したのが、1本あたり25ドル、という制作費でしたが、二人には即座に「もっとリッチなほうがいい」と反論されました。最初の数本だけ、頑張りすぎてかなりの予算で撮影したものの、これが続かず、その後の動画の出来が、あからさまにばらついて見える、というのは避けたい。画面をパッと見て、「あ、ライアンの動画だ」と気付いてもらえるような、シンプルでいて印象的なパターンで撮影できるのが理想です。
私はこの「パターン」を、視聴者がライアンの家に遊びに来たように感じられる視線で撮影することにしようと考えました。ライアンと同じくらいの目線で、ライアンを追っていくような画面です。これで、ライアンと同じ年齢層の子どもたちと、その両親の層へ向けて動画をつくろうと考えたのです。
チャンネル名がウケなかったらすぐ替える
YouTubeでは、「ブランドアカウント」という言葉がよく使われますが、カスタム名でチャンネルをつくることは、ブランドアカウントを作成して新しいチャンネルをつくり、このチャンネルに自分のGoogleアカウントをリンクさせることと同じ意味を持ちます。
YouTubeには、YouTuberにとって重要な仕様変更、メインテナンスなどのYouTubeコミュニティのニュースや、現在の登録者数、視聴回数、総再生時間などがわかるダッシュボード、さらに細かい分析ツールが揃っているチャンネルアナリティクス、収益受取額の表示ツールなどがセットされているYouTube Studioという機能が実装されています。
ここでぜひ知っておいてほしいのは、チャンネルスタート直後は特にアナリティクスの反応をよく観察しながら、チャンネル名への反響が鈍い、と感じたなら、即座に変える決断をしたほうが良い、ということです。チャンネル名は、YouTubeのアルゴリズムにとって、わかりやすい名前であることが重要です。
これにプラスして、前述のとおり、ユーザーが見つけやすい名前であることを目指してください。チャンネル名は、YouTubeコミュニティの誰もが、試行錯誤しながらいろいろと変えています。
機材についてですが、はじめは高価な機材は必要ありません。撮影はスマートフォンで十分です。私たちの場合、最初の1~2年はiPhoneで撮影していました。
実際にユーザーが、どんなふうにYouTubeを視聴しているか、を想像すると、ほとんどがモバイル端末ではないか、と考えられます。アナリティクスでは、視聴端末の種別も分かるのですが、私たちの場合は、実際にスマートフォンとタブレットが8割近くを占めています。
ほとんどのユーザーがテレビと比べて小さな画面でチャンネルを見る、ということを意識してください。紹介系のチャンネルであれば、紹介するものをなるべく大きく撮ること、チャレンジ系なら、画面に映り込むモノや要素をなるべく少なくして、何をしようとしているのか、動きが伝わる絵を大きく撮ること。結局、伝えたいことに近づいて、なるべく大きく撮る、ということだけを、まず心掛けるべきです。
「照明」よりも「音声」のほうが大事
iPhoneに限らず、最近の機種であればスマートフォンには、人の顔を認識してオートフォーカスする機能や、自動露出機能が備わっているので、とっさのチャンスを逃さず撮影したり、室内から室外へ移動しながら撮影したりするような場合でも、ピントや露出を気にすることなく、撮影に集中することができるので、まずは「大きく撮る」の一点に集中して、スマホで撮影してみることをおすすめします。
絵の仕上がりを左右するのは照明なのですが、動画を見る時、ほとんどの人は、照明が少しくらい悪くても我慢するのに、音声が劣悪だとすぐに見るのをやめてしまいます。これまで出会った、多くの映像のプロフェッショナルが言うことです。
前述の通り、iPhoneで撮影を始めた私たちは、なるべくライアンに近付いて絵を撮りながら、同時録音をしていました。スマホでもカメラでも、内蔵マイクを使う場合は、話者から1m以内で音を拾うように心掛ければ、比較的きれいに声を録音できるはずです。
それより離れて撮影を行う場合は、より上級な機材を揃えたほうが安心です。マイクが向いている方向の音だけを録れる(指向性がある)ガンマイク(1万円~)なら、自然騒音をカットして話者の声だけを拾うことができます。
最高の音質となると、映画やテレビで使われているブームマイクや、ワイヤレスピンマイクが必要になりますが、照明と同様、これらも余裕が出てから検討すれば十分だと思います。
マネー現代
最終更新:11/25(水) 10:01
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