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キャンピングカー「普段使いは無理」は大誤解だ

10/31 13:21 配信

東洋経済オンライン

 「新車が売れない」と自動車メーカーが嘆く中、キャンピングカーが売れている。

 キャンピングカー製造販売業者の団体、日本RV協会がまとめた「キャンピングカー白書2020」によれば、2019年の国内生産台数は6445台。この10年間で約1.6倍という好調ぶりだ。さらに輸入車や中古車を含めた2019年の販売総額は526億2,577万円となり、10年前の2.4倍にもなっているのだ。

 「キャンピングカーが人気らしい」ことは、すでに広く知られていることだろうと思う。だが、旧来のレジャーのスタイルと比べても、あまりに現実離れしていて(と、思い込んでいて)、自分がオーナーになることが想像しにくいという人はまだまだ多い。

 本連載ではそんな「視野の外」に置かれがちなキャンピングカーについて、紹介していこうと思う。

■意外とお手頃なキャンピングカー

 キャンピングカーというと、大きくて豪華で1000万円以上するもの、というイメージはないだろうか。「富裕層の遊び車」だという印象があるせいか、ひところは販売店に「キャンピングカーに見えない車が欲しい」などというリクエストも寄せられたと聞いたことがある。

 実際のところはどうなのか。そのイメージは半分当たっているし、半分外れている。事実、2000万円に迫る高額商品もあるにはある。だが、今最も売れている人気車種の中心価格帯は500万円台なのだ。

 それでも「遊びの道具に500万円も出せない」という声が聞こえてきそうだが、売れている商品の特徴をよくよく観察すると、人気上昇中の理由が見えてくる。

 まず、ごく基本的なことだが、キャンピングカーにはベースとなる車両がある。キャンピングカーメーカー(ビルダーという)は、トヨタや日産、ホンダといった自動車メーカーから座席などのないスケルトン状態の市販車両を仕入れ、寝泊まりできる状態に改造してキャンピングカーとして販売する。

 現在人気のキャンピングカーは、主にトヨタ・ハイエースや日産・NV350を始めとする、ワンボックス車ベースのものが多い。それも車の内部をキャンピングカー仕様にしただけで、外見は元のワンボックスのままだ。

 このように、バンを改造したタイプをバン・コンバージョン、略して「バンコン」という。

 これらのベース車両はご存じの通り、配達や商用車としてよく使われている。サイズに注目すると、車種にもよるが、車幅1.7m前後、全長5m前後と決して大きくはない。一般的なコインパーキングや月極駐車場の枠内に無理なく収まるサイズなのだ。車種を見ると典型的な商用車だと思われがちだが、サイズ的には大きめのワゴン車(トヨタ・アルファードや日産・エルグランドなど)と大差ない。つまりどういうことか。

1. 日常的に駐車しておく場所に困らない(一般的な駐車枠に入る)
2. 出先で駐車場に困るほどの大きさではない
3. 運転も慣れれば何とかなるサイズ
 扱いやすいサイズ=普段使いできる、ということ。遊びのときにはキャンピングカーに、常日頃は自家用車として活躍してくれる、というオン・オフ兼用できるところが、人気の秘密なのだ。

■国土の小さい日本に最適なバンコン

 サイズの話題が出たのでもう1つ、日本独自の事情についてお話ししておきたい。

 かつてキャンピングカーと言えば、欧米産の巨大な車両をイメージすることが多かった。もちろん日本製にも大型のものはあるし欧米製でも小型のものはあるが、なぜ、欧米製は大きく、国産は小さいのか。それには社会インフラの違いが関係している。

 ご存じの通り、アメリカは国土が広い。一部の大都市圏を除いて、広大な大地が広がっている。ヨーロッパでも都市と都市の間隔は広い。1日走っても1軒の店にも出会えない、なんていうこともある。誰も通らないところでガス欠になったら命とりだし、食料も数日分は蓄えて移動する必要がある。おのずと、キッチンやバス・トイレを完備しておく必要があり、車両は大きくなる。

 一方、日本は国土が狭い。少し走ればスーパーマーケットやコンビニも(減少傾向にはあるが)ガソリンスタンドもある。おまけに全国各地に温泉が湧いているからシャワーもいらない。極端な話、快適に寝られる装備さえあれば、キャンピングカーとしては十分。だから普段使いと兼用できる小さなサイズでカバーできるというわけだ。

 ではもう少し人気のバンコンについて見てみよう。

 前述のとおり、バンコンのベースとなるのは貨物輸送や商用に使われる車だ。

・軽バン →スズキ・エブリイ、ホンダ・Nvanなど
・小型バン →トヨタ・タウンエースや日産・NV200など
・1t積みクラスのバン →トヨタ・ハイエースや日産・NV350など
 車種が多岐にわたる分、価格もさまざまである。軽バンベースなら200万円台~、小型バンベースなら250万円~。1t積クラスでも300万円台~600万円あたりがおおよその予算感だ。

 いずれにせよ、運転席後ろの「荷室」を「居室」になるように、ビルダーが改造を施している。

 具体的には、

1. 生活用の電気をまかなうためのサブバッテリー
2. 居室専用の暖房設備・FFヒーター(エンジン停止中も暖房が使える)
3. 乗車中は椅子席、就寝時にはベッドになるシートなどを装着する
 これらの装備のおかげで、エンジンをかけっぱなしにしなくても暖房(あるいは冷房)が使えたり、ゆったりと体を伸ばして寝られたりする。事実、キャンピングカーのベッドの寝心地は、シートをリクライニング状態に倒して仮眠するのとは雲泥の差である。

 もちろん、荷物の積載性も計算されているし、座席数も確保されているので、荷物を積んだり家族を乗せたりという、普段使いに不自由はない。キャンピングカーを普段使いする、という発想は決して無理な考えではないことは、販売実績の数字が物語っている。

■忙しい人こそ乗ってほしい

 「キャンピングカーなんて買ったところで、長期休暇なんて取れないし……」

 キャンピングカーショーの現場で、そんな声に出合うこともある。私はそんな人にこそ、購入をお勧めしたいと常々思っている。

 考えてもみてほしい。通常、家族旅行をするとき、どんな手順を踏むだろうか? 

 家族のスケジュールを確認。

 行き先を決めたら、宿を探して予約。

 交通機関の予約やチケットの手配をする。

 旅行の何日も前から計画して、手続きをせねばならない。

 キャンピングカーなら「思い立ったら即出発」が可能だ。目的地だって思いつきで決めてもいい。旅先で気が変わっても、行き先を変更するのも、予定を切り上げて帰ってくるのも自由自在である。せっかくいつでも持ち出せる「1部屋」があるのだから、こまめに出かけたくなる。「こんな高い物買って、年に何回使うの?」は、大抵の場合、杞憂なのである。

 キャンピングカーが売れていることを受け、受け入れ施設も増えている。日本には数え切れないほどの温泉があり、各地それぞれに食べ物のバリエーションも豊かだ。ほんの数時間足を延ばすだけで、見たことのない景色、食べたことのない食べ物に出合える。新幹線の止まらない土地に、隠れた魅力がある。それが日本という国だ。その魅力に気づいた人こそが、キャンピングカーを手に入れているのだ。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/31(土) 13:21

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