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レヴォーグ1強に見た和製ワゴンの残念な衰退

10/29 6:11 配信

東洋経済オンライン

 スバル・レヴォーグがフルモデルチェンジで2代目となった。初代レヴォーグの発売は2014年。それまでスバルの中核を担ってきたレガシィの車体寸法が大きくなりすぎ、国内の交通事情に合わなくなったことで、代替モデルとしてワゴン専用車「レヴォーグ」が開発されたという背景がある。

 10月15日にデビューした新型レヴォーグは、先進安全/スポーティ/ワゴン価値を大きく進化させた。発売以来、人気を博しているレヴォーグは、流行りのミニバンやSUVに対抗している唯一の国産ステーションワゴンといえるだろう。なぜ、ステーションワゴンはレヴォーグ1強という状況になったのか、そこからステーションワゴンの衰退について考察する。

 最初に新型レヴォーグで強化されたポイントをおさらいしておく。スバルの先進安全と言えば、運転支援機能「アイサイト」だ。新型レヴォーグでは、従来型のアイサイトを進化させた新開発の高度運転支援システム「アイサイトX」を搭載する。

 新たに広角のステレオカメラ(フロントウィンドウ上端に設置された左右2個のカメラ)と、3D高精度地図やGPSに加え準天頂衛星(みちびき)を採用し、見通しの悪い交差点などでの衝突回避や、車線維持機能の向上と自動車専用道路上で渋滞時のハンズオフを実現したことは大きなトピックだ。

 スポーティについては、スバル独自の水平対向4気筒ガソリンエンジンを新開発し、動力性能・燃費性能ともに改善。2016年にモデルチェンジをしたインプレッサから採用しているスバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)もようやく投入でき、操縦安定性と乗り心地の両立に貢献している。

 ワゴン価値については、パワーリアゲートを新採用し、大容量のサブトランクを設けるなど、使い勝手をより高めた。

■少ない競合車と堅調な受注台数

 スバルは、レガシィでもステーションワゴンを中心に人気を集めた。その価値を国内用として受け継いだレヴォーグ(レヴォーグに4ドアセダンの設定はない)は根強い支持層があり、8月20日の事前予約から正式発表の10月15日まで約2カ月弱で、8290台に及ぶ受注をしたという。初年度販売計画は月販2200台であり、その2倍近い台数(事前受注合計は約2カ月であったため)に達したことになる。

 ところで周囲を見回してみると、レヴォーグのようなステーションワゴンの日本車は、トヨタのカローラフィールダーやホンダのシャトル、そしてマツダ6くらいしかない。かつては、クラウンやセドリックなどにもステーションワゴンがあり、その時代は4ドアセダンも堅調だった。

 1994年にホンダ・オデッセイが登場してミニバンブームとなり、それから約20年が過ぎて今はSUV(スポーツ多目的車)ブームだ。その25年ほどの間に、セダンとステーションワゴンが数を減らした。ステーションワゴンは、大人5人と荷物を積んで遠出のできるクルマとして永年重宝されたが、その価値がミニバンやSUVに取って代わられたのである。

 一方で欧州車は、セダンとステーションワゴンが根強い人気を保っている。もちろん、SUVも販売台数を増やしているが、それによってセダンやステーションワゴンが廃れてしまうことはない。あくまで中核は、セダンとステーションワゴンの構図がある。

■欧州から見るステーションワゴンの存在価値

 ドイツ車では、メルセデス・ベンツやBMW、アウディなどの中核車種にセダンとステーションワゴンがきちんと設定されている。ドイツには速度無制限区間のアウトバーンがあり、時速200kmを超える速度で移動することもあるので走行性能が優先され、安定性と快適性を両立した背の低いステーションワゴンには、長距離移動を短時間で済ませられるという利点がある。

 ポルシェのカイエンやマカン、あるいはBMWのXシリーズのように、高速走行が得意なSUVもあるが、ステーションワゴンのほうが高速道路で安心と考える消費者が多いことも理由だろう。

 一方、欧州でも英国やフランスは、高速道路に時速130kmの制限があり、ドイツに比べれば超高速性能にそれほど懸念はなさそうだ。とりわけフランスは夏のバカンスでの長期移動に適したミニバンのようなマルチ・パーパス・ヴィークル(MPV)の人気が昔から高かった。

 アメリカは、日本同様にミニバンやSUVへの人気を高める傾向がある。アメリカの制限速度は州によって異なるが、おおむね日本に近い感覚でいいだろう。

 ミニバンやSUVという代替車種の登場により、国内のステーションワゴンは数えるほどになった。それでもレヴォーグが新型を迎えられた背景になにがあるのだろう。

 スバルは、レガシィが登場する以前、レオーネ時代の1972年に商用のエステートバンに初の4輪駆動車を追加した。ここからスバルと4輪駆動の歴史が始まる。アメリカジープに代表されるような悪路走破の車種ではなく、商用車とはいえ乗用として世界初の4輪駆動車となった。そして1975年には、乗用車での4輪駆動車が加わる。

 さらに2代目レオーネに替わった1981年に、ツーリングワゴンと名付けた4輪駆動のステーションワゴンが登場した。ツーリングワゴンでは、屋根を途中で一段盛り上げ、商用バンと差別化した独特なスタイルも話題になった。ここからリゾートエクスプレス(郊外への高速移動)の価値を明確に打ち出し、スバルのツーリングワゴンという、実用性を兼ねながら高速走行も満たす価値が人々を魅了していった。

 スバルが語るツーリングワゴンの価値とは、「より遠くまで、より早く、より快適に、より安全に」というグランド・ツーリング思想にある。

 ツーリングワゴンは、レオーネの後のレガシィ、そしてレヴォーグに至るまで40年近い歴史を積み上げ、グランド・ツーリング思想は世代を超えて受け継がれている。スバルの高性能車の象徴であるSTI(スバル・テクニカ・インターナショナル)仕様とともに、スバリストと呼ばれる熱心なスバルファンの支持を得ているのである。

■他社にはない価値が築いた1強体制

 ツーリングワゴンがここまで高い支持を得た背景には、4輪駆動だけでなく、リゾートエクスプレスといわれるように高速走行を実現するターボエンジンとの組み合わせが、安全に速く走ることへの後ろ盾となったことはいうまでもない。この取り合わせは、新型レヴォーグにも継承され、ボンネットフードに開くエアダクトは、ターボエンジン搭載の象徴である。

 それに対し、他社のステーションワゴンは、実用性という価値以上に何か魅力を与えたり、訴求したりしてこなかったといえる。それによってミニバンやSUVに主役の座を奪われたともいえる。ステーションワゴンを選ぶ意味を打ち出せなかったのだ。

 しかし、将来的な高齢化社会を見据えると、大勢で乗れて荷物も運べる実用性でもミニバン・SUVとステーションワゴンでは価値が変わってくるのではないだろうか?  乗降が楽であったり、荷物の出し入れが楽であったりするステーションワゴンが、再び脚光を浴びる可能性はあると思う。ミニバンやSUVは、座席位置が高くなるし、SUVの荷室は床が高いから重い荷物は持ち上げにくい。

 ステーションワゴンとして盤石の人気を保持するレヴォーグだが、気になる点もある。それは、電動化がなされなかったことだ。スバルには、e-BOXERと呼ぶハイブリッドシステムがあり、インプレッサやSUVのフォレスターに搭載されている。しかし、新型レヴォーグには採用されなかった。

 搭載された新開発の水平対向4気筒ターボエンジンは、環境性能を高めたが、燃費の向上はわずかでしかない。燃費性能や環境性能が求められる今、なぜハイブリッド車がないのか? 

 その理由として、「ツーリングワゴンの顧客が長距離を走り切れることを重視する」という考え方がある。付け加えてレヴォーグが国内専用車であることも要因だ。電動車両の導入や二酸化炭素排出量規制(燃費規制ともいえる)に罰則がない日本では、電動化に向けた強制力が働かない。

 発表会で開発責任者は「新型レヴォーグで九州まで旅をしたい」と期待を述べた。これは顧客の長距離移動への期待を自らも体験しようという思いがあるのだろう。

 しかし、ガソリン満タンで1000kmに及ぶ道程を一気に運転し続ける人がどれほどいるだろうか?  また、安全運転という視点から長距離移動では、途中で休憩をはさむことが推奨される。その間に給油もできるし、電気自動車(EV)であれば充電の時間があるはずだ。

 しかも排ガスゼロを目指し、気候変動を抑制する取り組みは、規制や罰金の有無に関係なく、世界共通の目標であるはずだ。永年ツーリングワゴンを愛するスバリストが、実は環境破壊者の一員であるとしたら、世間の冷たい視線を受けることになりかねない。ここにスバルの次世代へ向けた企業姿勢の一貫性に欠ける、足元の利益追求の姿が浮かび上がる。

 「より遠くまで、より早く、より快適に、より安全に」というグランド・ツーリング思想は、EVを採用することで低重心化の余地が生まれ、より綿密な4輪駆動制御も可能になるはずだ。適切な休憩をはさみながら充電して移動すれば、現在のエンジン車以上の本質的価値を生み出せる。そこが見えないスバルは、いずれ熱烈なファンを失いブランド力を落としかねないと心配している。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/29(木) 7:51

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