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「オタクは結婚できない」という大いなる誤解

10/29 8:21 配信

東洋経済オンライン

 「オタク」というとどんなイメージを持ちますか? 

 「女性にモテない」「服装がダサい」「人の目を見て話せない」「家に引きこもっている」など、少し前までオタクに対するイメージはネガティブなものが多かったことは事実です。

 しかし、今や、オタクは未婚男性に限りません。当然ながら女性のオタクも存在しますし、既婚者にもオタクは存在します。そもそも、オタク人口全体が増加しています。

 20~50代未既婚男女を対象として、「オタクを自認する」割合を2015年国勢調査の人口と掛け合わせて、オタク人口を推計試算してみました。結果、20~50代のオタク人口は約1430万人、これは当該全人口6180万人の23%に相当します。

■オタク市場は無視できないレベルにまで成長

 当然、10代にも60代以上にもオタクは存在するので、オタク人口総数はもっと多いでしょう。男女比は、男53%、女47%とほぼ半々です。未既婚も未婚44%、既婚56%とやや既婚のオタクのほうが人数は多いのです。

 もちろん、未婚人口より既婚人口のほうが絶対人口は多いので、男性オタクの有配偶率は45%(同年齢層の国民全体は60%)、女性オタクの有配偶率は55%(同70%)と、オタクのほうが非オタクの人たちより有配偶率は低くなります。しかし、オタクだからといって結婚できないとか、恋愛ができないというのは言いすぎであることがわかります。

 オタク人口増加と連動して、今や「オタク市場」は無視できないレベルにまで大きく拡大しました。矢野経済研究所の調査によれば、オタクによるアニメ市場は3100億円、アイドル市場は2550億円、マンガ市場は4425億円、オンラインゲーム市場に至っては、1兆1000億円を超える規模にまで成長しています(いずれも2019年推計)。

 比較のために、菓子統計に基づく2018年のスナック菓子市場は4361億円、チョコ市場は5370億円ですから、いかに「オタク市場」が大きいものかおわかりいただけると思います。

 ちなみに、アイドル市場というと、すぐ思い浮かぶのは秋元康氏が手がけたAKB商法があります。握手券や総選挙投票券と抱き合わせたCD販売の手法は、賛否はあれど市場を活性化したのは確かです。事実、全盛期の2012年にはシングルCD年間売上ランキングのトップ10の上位5曲をAKB48が独占していた時代もありました。

 アイドル市場を構成するのは、主に楽曲売り上げやライブチケット代、それと物販と言われるアイドルグッズ売り上げで、上記2550億円市場はそれらの売り上げだけを計上しています。しかし、アイドルオタクの消費はそれら直接消費だけにとどまりません。

 実は、彼らが最もお金をかけているのは、「交通費」と「宿泊費」などの間接消費のほうです。人気のアイドルのライブ公演は全国津々浦々で開催されますが、彼らはその公演を追っかけ、全国ツアーについて回ります。

 そのための費用が、CDやチケット代より結果的にいちばん費用をかけている項目なのです。むしろ、アイドルオタクは、旅行好きな人たちより、旅費にお金をかけている人たちと言えるのです。

■オタクは日本経済にも貢献している

 これは、アイドルオタクに限らず、野球やサッカーの応援オタクの人たちにも共通して言えます。よって、アイドル市場規模は2550億円といっても、それはアイドルへの直接消費だけで、彼らが実際に日本経済に貢献している金額は5000~6000億円にも達すると見込まれます。

 ところで、オタクの興味関心領域は、アイドル以外にも、アニメ・マンガ・ゲーム、コスプレ・鉄道・筋トレ・パソコンなどなどさまざまです。既婚者が半分を占めるオタクですが、では、没頭する分野の違い、いわゆるオタク属性の違いによって、「結婚できる・できない」の差はあるのでしょうか? 

 そこで、各オタクの分野ごとに、有配偶率を算出してみました。まず、男オタクから見ると、全体の有配偶率と変わらないのは「車・バイク」「コスプレ」オタクの人達です。前者は納得できますが、「コスプレ」オタクの有配偶率が高いのは意外でした。

 しかし、そもそもコスプレイヤーとは自らをモデル・被写体として衆目を集める趣味であって、そういう意味では自分自身に自信を持っている男性と考えられるのかもしれません。

 反対に、男性オタクで有配偶率が低いのは、1位「同人誌」29%、2位「アイドル」34%、3位「アニメ」「マンガ」の40%でした。とはいえ、ほとんどのオタク分野で有配偶率は50%以上です。案外、男性オタクは結婚しています。

 一方、女性オタクを見ると、なんと「鉄道」「パソコン」オタクが女性全体を上回る有配偶率となっています。いかにも男性オタクが多いイメージの強い趣味ですが、そうした女性オタクの絶対数が少ないがゆえに、逆にモテるのかもしれません。結婚するためにオタクになるわけではないですが、これは興味深い結果です。

 反対に、有配偶率が低い女性オタクとは、1位「アイドル」39%、2位「野球・サッカーチームの応援」45%、3位「アニメ」47%となっています。男女とも、「アイドル」や「アニメ」にハマるオタクは有配偶率が低いようです。

ところで、「未婚は既婚より幸福度が低い・男性は女性より幸福度が低い」という話は、この連載でも何度かご紹介していますが(なぜか自己肯定感が低い日本の未婚男性の実像)、未婚のオタクの幸福度はどうでしょうか? 

■オタクの幸福度は意外と高い

 未婚者全体と未婚のオタク、及び比較対象として現在恋人のいる未婚者とで、それぞれの幸福度を比較してみました。未婚者全体の幸福度と比較して、オタクの幸福度は、男性ではどの年代も10%も高くなっています。

 これは、現在「恋人がいる未婚者」の幸福度とほぼ遜色なく、年収ベースでも平均年収以上の500万円の年収の未婚者よりもオタクの幸福度のほうが上回ります。つまり、男性に関して言えば、「オタク=幸福」と言ってよいと思います。これは、女性オタクの場合もほぼ同様で、オタクの幸福感は高いと言えます。

 「未婚は不幸である、男の未婚はなおさら不幸である」と断じてしまうのは間違いです。未婚であろうと、恋人がいなかろうと、何事か打ち込めるオタク的趣味があれば、十分幸せなのです。

 ちなみに、個々のオタク属性によっても幸福度は異なります。男女共通して全体の幸福度より約1.2倍幸福度が高いものは「アイドル」「プロレス」「野球・サッカーチームの応援」の3つです。これらに共通するのは「誰かを支える」という気持ちです。

 既婚者の幸福度が高いのは、「家族や子どもがいるから」という要因があります。高い収入があるわけでも、何か他人より秀でた能力があるわけでもなく、むしろ自己有能感は低いにもかかわらず、既婚者は「あるがままの日常」の中に幸せを感じている人が多い。それは、家族や子どもを自分が支えている、応援しているという満足感によるものなのでしょう。

 家族や子どものいない未婚のオタクも、アイドルやプロレスラー、好きなスポーツチームを応援することで満足を得ています。ある意味それは「擬似家族・擬似子育て」とも言えるのではないでしょうか。

 親は、自分の子の大学授業料や生活費がどんなに高額でも、それを無駄な出費だとは思いません。アイドルオタクがアイドルのためならお金を消費するのも同様でしょう。むしろ惜しみなく注ぎ込みます。そこに何かの見返りを求めることもありません。

■非オタクの未婚男性も幸福度は高い

 お金をかけたからといって、そのアイドルが売れるとも限らないし、そのチームが優勝するわけではありません。しかし、そうしたいのです。経済的合理性や効率性などはどうでもいい話です。未来に確実な成功や報酬が約束されていなくてもいいのです。

 むしろ、不確実な未来を一緒に喜びたいのです。理屈やリスクではなく思わず行動してしまうこと。それこそがオタクの幸せの正体なのかもしれません。

 余談ですが、何1つオタク的趣味を持たない非オタクの未婚男性の中にも、とても幸福度の高い人たちがいます。それは、常に恋愛相手がいる3割の「恋愛強者」の男たちです。

 世間的に彼らはオタクとは呼ばれませんが、見方を変えれば「恋愛オタク」と言えます。時間も手間も惜しまず、恋愛相手に対して喜んでもらいたいと行動しています。高級レストランをごちそうしたり、高価なプレゼントを買うこともまったく無駄だと思いません。

 興味関心領域が違うだけで、人は皆「何かしらのオタク」なのであり、「オタク」でいさせてくれる対象がある人のことを「幸せ者」と呼ぶのでしょう。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/29(木) 8:21

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