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「長生き」したいなら室温18度以上!冬の死亡率最低が北海道である理由

10/29 6:01 配信

ダイヤモンド・オンライン

 冬になると、ほかの季節に比べ、インフルエンザなどの感染症や脳心血管疾患などのリスクが増し、死亡率が高くなる傾向にある。しかし、日本最北の北海道は、全国で最も死亡率が低いのだ。その要因は、日本ではあまり重要視されていないが、「冬の室温」にある。(ジャーナリスト 笹井恵里子)

● 冬の死亡率が最も低い都道府県は 日本最北の「北海道」

 夏と比べ、冬の死亡率が最も高い県はどこだと思うだろうか。

 冬の死因の6割を占めるのは、脳心血管疾患や呼吸器系疾患である。というと、寒冷な地域で脳梗塞や脳出血、肺炎などを発症して死に至るというイメージがあるかもしれない。つまり、日本最北端に位置する「北海道」では、冬の死者が増えそうだが、意外にも夏と比べて冬の死亡率が最も低い都道府県が北海道なのだ。

 北海道をはじめ青森県や秋田県、新潟県、石川県、山形県など寒い地域は、暖かい季節と比較して冬の死亡率が10~15%程度の増加。一方で、比較的温暖なはずの栃木県では、夏よりも冬の死亡率が25%も高くなる。そのほか愛媛県、静岡県、鹿児島県など、やはり暖かい地域では冬の死亡率が20%も上昇している。

 国別に見ても同様の傾向で、寒い国と暖かい国では2倍程度、死者数に違いがある。例えば、ヨーロッパで寒冷なフィンランドは冬の死亡率は10%増程度だが、温暖なポルトガルは28%も死者が多くなるのだ。

 「原因は家の寒さです」

 慶應義塾大学理工学部の伊香賀俊治教授が指摘する。

 「寒い県ほど家を暖かくする対策がとられ、室温が保たれていることが影響しているのです」

 「室温」と「健康」の関係をいわれても、ピンとこないかもしれない。しかし実は“寒さ”に関する法規制がないのは、先進国の中で日本くらいなのだ。

 日本エネルギーパス協会代表理事で、海外の住宅事情に詳しい今泉太爾氏はこう話す。

 「諸外国では過度な寒さは基本的人権を侵害しているという認識があり、だいたい18~21度の最低室温に関する基準や規制があります。英国では18度以下の賃貸住宅には解体命令が出ますし、寒い家に住んでいる人の保険料は病気の発症リスクが上がるため掛け率が上がりやすい。例えば刑務所であっても、過度な寒さは人権問題となるので、設計段階から暖房計画をきちんと考えます」

 日本には「耐震」に関して、世界で類を見ないほどの厳しい基準がある。一方で「室温」には長らく目が向けられてこなかった。旧厚生省医系技官として8年間勤務したことのある東京都立大学名誉教授の星旦二氏は、「これまで住宅は経済の観点ばかりから見られていた」と嘆く。

 「質ではなく戸数が優先されてきました。県ごとにこれだけの死亡率の差が生まれたのは、家と健康を結びつけて考えなかった国の責任でしょう。ヒートショックやシックハウスの対処も大幅に遅れ、住宅ローンが終わる頃には資産価値のない住宅がその後ゴミの山となっています。国民は健康負債と資本負債に翻弄されているといっても過言ではありません」

● WHOは冬の室内温度 「18度以上」を強く勧告

 冬場の暖房の効いた居間と、冷えたままの廊下やトイレなどとの温度差は、戸建の場合で15度ほどあるという。

 夜中に目が覚めて温かい布団から抜け出し、トイレに行こうとして心筋梗塞や脳梗塞を発症して死亡するケースも少なくない。急激な温度変化は体にかなりの負担をかけるということだ。

 それでは室内を何度にしたらいいのか。

 それはずばり、18度以上だ。

 実際、WHO(世界保健機関)は2年前に、「冬の室内温度として18度以上」を強く勧告している。18度を下回ると循環器疾患、16度を下回ると感染症などの発症や転倒、怪我(けが)のリスクが高まると指摘しているのだ。

 ぜひ室温計を置いて確かめてほしい。実は国土交通省が国内の平均年齢57歳の住居2190戸を冬季に調査した結果、各部屋の平均室温は

 居間:16.8度
 寝室:12.8度
 脱衣所:13.0度

 であることがわかった。

 なんと居間では6割、寝室や脱衣所に至っては9割の家が18度に達していなかったのだ。暖房を使ったとしても、断熱性能が高い最新住宅(2016年以降の建築物)でないと冬場に18度にはなかなか達しない。

 室温が18度に達しないと具体的にどの程度の“負の影響”があるのか、伊香賀教授らの長年の研究によってさまざまなことが明らかになっている。

 例えば、高血圧発病確率。夜中の0時の時点で居間の室温を18度以上に保てていた人の高血圧発病確率に対して、18度未満の家に住む人は高血圧を6.7倍も発症しやすいという結果。発病確率でなく死亡確率で見ると、夜間室温が9度未満の室内環境で生活している人は、9度以上の室内環境で生活している人よりも4年間で循環器疾患で死亡するリスクが4.3倍高くなることがわかった。

 「これらの研究は年齢や性別、職業、喫煙、飲酒、食事の味付けなどはすべて調整してあります」と伊香賀教授。

 つまり、“室温のみ”で、ここまでの差が出てしまうということだ。

● 最も簡単な断熱方法は 窓にプチプチ状の緩衝シート

 室温によって「睡眠の質」も変わることがわかっている。

 「睡眠計による調査を行うと、暖かい家では入眠がスムーズで、熟睡時間が延びます。逆に寒い家では、夜間頻尿リスクが上昇します。就寝前の23時時点の居間の室温が18度の群を1とすると、12度未満の住宅では1.6倍、過活動膀胱(頻尿)の症状が多く出ます。この研究は泌尿器国際医学誌『Urology』に今夏掲載されました」(伊香賀教授)

 18度どころか「12度」を下回ると、よりはっきりと心身に悪影響を及ぼすことも明らかになっている。数十年にわたり「家の寒さと死亡率の関係」を地道に調査し、その結果を分析した「英国の室温の指針」では、12度を下回ると血圧上昇や心血管疾患リスクが高まるとされている。12度以下の環境で寝ている子どもの喘息(ぜんそく)の発症率が高いという報告もあるのだ。

 先に紹介した国土交通省の調査では約55%の家の寝室が13度未満だが、伊香賀研究室が石川県のある町の280世帯を調査すると75%の家で寝室の室温が13度を下回っていた。そして寒い家は暖かい家と比べて「寝つきが悪い」と感じる確率が2.2倍、中途覚醒する確率が2.3倍高くなっている。

 それでは室温を健康的に保つにはどうしたらいいのかというと、ポイントは「住宅の断熱性」だ。断熱とは文字通り“熱を断つ”ことで、冬は外へ逃げていく熱を、夏は内側へ入ってくる熱を断つ。

 日本の住宅では、壁の中の柱と柱の間に、断熱材を詰めるケースが多い。住宅の断熱性を確実に高めるためには、この質と厚みをグレードアップさせ、壁だけでなく床や天井などに詰める改修工事が有効だが、その場合数百万円の費用が必要になる。

 「手っ取り早く、そしてできる限りコストを抑えて断熱性を高めるには、窓を二重にする『内窓』がお勧めです」と前出の今泉氏は言う。

 内窓は1カ所につき数万円程度で取り付けることができる。

 しかしこの場合も、住宅内のすべての窓に内窓を入れればそれなりのコストがかかってしまう。そこでまずは日中過ごす時間の長いリビング、または睡眠の質を高めるために寝室だけでも見直してみるといい。

 それも難しい人は、割れ物の梱包に使うようなプチプチ状の緩衝シート(気泡緩衝材)を窓につけると多少は効果がある。ペラペラのシートタイプはNG。気泡のような“動かない空気”が断熱性を高めるのだ。

● 脱衣所の室温は 「家の寒さ」が表れやすい

 さて、現在の自分が住む住宅の断熱性能がどの程度あるのか、判断する方法がある。

 それは脱衣所の室温を測ることだ。脱衣所の室温は廊下とほぼイコールで、積極的に暖房されない場所、つまり「家の寒さ」が表れやすい場所といえる。

 WHOが冬の室温を18度以上と勧告したのは、決して居間に焦点を当てているわけではなく、住宅内の「すべての部屋」に対する勧告である。ちなみに、海外は日本とは住宅設計が異なるため、浴室が住居の隅に追いやられておらず、脱衣所や浴室で日本のように寒さを感じない造りになっている。

 例えば20時頃、あなたの家の脱衣所の室温は、何度を示すだろうか。

 最後に伊香賀教授らが大阪府の千里ニュータウンで80世帯を対象に、「脱衣所の室温と要介護の関係」を調査した結果を紹介しよう。

 脱衣所の平均室温を比較すると、「12度の群」と比べて、「14度の群」は健康寿命が4歳延伸していたというのだ。たった2度の違いでそれほど大きな影響が出ることに私も衝撃を受けた。

 伊香賀教授はこう言う。

 「寿命を終えるまでに男性は9年、女性は13年の自立できない、要介護の期間があるとされます。今よりも2度、暖かい家に住むことで、その期間が4年短くなる、つまり男性なら要介護の期間が9年から5年、女性なら13年から9年に短くなると考えてください」

 部屋を暖かくする方法として内窓やプチプチ状の緩衝シートの取り付けのほか、エアコンをはじめとする暖房器具を使用する、窓には厚手の素材のカーテンを垂らすなどの方法もある。今年の冬は昨年よりも暖かく、を心がけたい。

ダイヤモンド・オンライン

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最終更新:10/29(木) 12:16

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