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「1物件1法人スキーム」、銀行はどう見破るのか《楽待新聞》

10/28 19:00 配信

不動産投資の楽待

5年ほど前から有名になった「1物件1法人スキーム」。物件を購入するたびに新規法人を設立し、法人ごとに異なる銀行から融資を受けることで一気に規模を拡大させるという手法で、「1物件1銀行スキーム」とか「1棟1法人スキーム」とも呼ばれています。

既存の債務を隠して新たに融資を受けるスキームであることから、発覚すれば一括返済を求められるなどのリスクもあるこの手法。当然、銀行も警戒していますが、不動産投資家からすると短期間で規模を拡大できるという有用な面もありました。現在、コロナの影響はまだまだ大きいといえますが、今後投資のチャンスが出てくる可能性はあり、その際に1物件1法人スキームを思い出す不動産投資家もいるかもしれません。

そこで今回は、改めて1物件1法人スキームの問題点を説明しつつ、銀行がこのスキームをどのように防いでいるのかについて、現役銀行員の立場からご説明したいと思います。

■1物件1法人スキームとは?

1物件1法人スキームとは、個人の不動産投資家が投資物件ごとに法人を設立し、別々の銀行から借り入れを行うことで、銀行に借入の全体像を掴ませずに規模を拡大していくという資金調達手法です。

通常、個人の不動産投資家が銀行から借入を多額に行おうとした場合、銀行は個人信用情報を確認し、多額の債務者であると判断すれば貸出を渋る、もしくは全く貸出を行わないという対応を取ることができます。

しかし、1物件ごとに法人を作り、法人ごとに別の銀行から借入を行えば、不動産投資家としての個人・法人を合算したトータルでの借入額は、現在の銀行における情報共有の仕組みでは分かりません。

この仕組みを悪用し、個人の信用を何倍にも拡大させる方法が1物件1法人スキームなのです。

■銀行は簡単に見破れない?

もし1物件1法人スキームが発覚し、それが悪質だと判断された場合には、銀行との信頼関係が崩れ、銀行からの新たな借入は難しくなると思われます。そして、銀行に「嘘」をついて多額の融資を引き出していた場合には、既存融資の一括返済を求められる可能性も十分にあり得るでしょう。

さまざまなメディア等で取り上げられて有名になったこともあり、銀行も1物件1法人スキームを警戒しています。そのためこのスキームは、最近あまり話題には上らなくなってきています。

では、銀行は1物件1法人スキームをどのように見破っているのでしょうか。方法は主に次の3つです。

1. 確定申告書で、他の法人(銀行の知らない法人)からの給与収入がないかを確認する

2. 当該法人と同一の所在地に他の法人が存在しないかを調査する

3. 1物件1法人スキームが発覚した際、関与した税理士・会計士をチェックしておき、他の案件に関与していないかを確認する

以上のようなことを銀行は調査しています。

逆に言えば、法人を作ってもそこから収入を得ず、自分には関係ない住所に法人を作っていき、税理士・会計士から情報が漏れないようにすれば、1物件1法人スキームを見破ることは簡単ではないでしょう。現役銀行員の立場からすれば残念なことですが、悪意をもって1物件1法人スキームを活用する不動産投資家の「嘘」を見破ることは、現実的には難しいと言えます。

ただし、情報はどこから漏れるか分かりません。税理士や会計士の口から漏れることもあり得ますし、本人がうっかり飲み屋で口を滑らせるかもしれません。もしくは、銀行に渡す書類を間違えて、別法人の存在が発覚する可能性だってあるのです。

■1物件1法人スキームが見破られた場合

不動産投資家が、既に借入を行っている銀行から1物件1法人スキームを見破られた場合には、銀行は虚偽の報告を受けていることになりますので、銀行の請求失期事由(銀行が請求すれば期限の利益を喪失させることが可能な条項)に該当します。

すなわち銀行は、借入人である法人に対して一括返済を求める権利を有していることになります。もちろん、連帯保証をしている個人に対しても同様に返済を求めることが可能です。

不動産投資家個人にとって、1物件1法人スキームは、少ない資力で「勝負をかける」ことができるスキームかもしれません。しかし、見破られた場合には失うものが多いということを忘れてはいけません。この点をしっかりと認識し、1物件1法人スキームの甘い誘惑には決して乗らないことを筆者としてはお勧めします。

不動産投資の楽待

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最終更新:10/28(水) 19:00

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