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日本版のアニメも参考、映画「家なき子」の魅力

10/26 13:11 配信

東洋経済オンライン

 たとえどんなに過酷な境遇に置かれても、明るい未来を信じて誠実にがんばればきっと幸せがやってくる――。

 どんな困難にも負けず進み続ける少年レミの姿が心を打ち、世界中で愛されてきたフランスの児童文学『家なき子』。これまで幾度となく映画化・アニメ化されてきた名作を、現代にも通じる感動のドラマとして実写映画化した作品が『家なき子 希望の歌声』(11月20日より全国公開)である。

 メガホンをとったのはフランス人監督のアントワーヌ・ブロシエ。彼は物語における「心の絆」と「信じること、信じ合うことの大切さ」に着目し、作品に深みをもたらすとともに、子ども時代のキラキラした夢やときめきを感じさせる物語を紡ぎ出した。

■世界的な児童文学を実写化

 主人公は11歳の少年レミ。貧しいながらも、田舎の農村で優しいママと幸せに暮らしていたレミの運命は、長い間パリへ出稼ぎに出ていた父・バルブランの帰宅により急変する。バルブランはレミに「お前は10年前にパリで、高級な産着にくるまれ捨てられていた赤ん坊だ」と告げ、旅回りの老芸人ヴィタリスに売り飛ばしてしまう。

 だが、情の深い親方ヴィタリスに歌の才能を見いだされたレミは、犬のカピ、猿のジョリクールらと親交を深めながら、懸命に旅を続ける。さまざまな出会いや困難が渦巻く冒険の果てに、レミは運命の出会いを果たす――。

 フランスの作家エクトール・アンリ・マロが執筆した児童文学『家なき子』は、新聞で連載後、1878年に出版され、時代を超えたベストセラーとなる。日本でも1903年に翻訳されて以来、現在に至るまで多くの子どもたちに愛されてきた。

 日本では過去三度アニメ化されたこともあり、「家なき子」と聞けばアニメ版を思い出す人も多いかもしれない。

 特に「あしたのジョー」の出崎統監督が手がけた、東京ムービー新社(現トムス・エンタテインメント)製作による日本版アニメシリーズ「家なき子」(日本では1977年~78年に日本テレビ系列で放送)は、1980年代にはフランスやイタリアをはじめ世界各国に輸出されており、世界中の多くの子どもたちにも愛されている。本作のメガホンをとったブロシエ監督も、幼い頃に日本版アニメ「家なき子」を鑑賞していたひとりだった。

■スピルバーグ的視点で「家なき子」を解釈

 もともとブロシエ監督に「家なき子」の映画化を薦めたのは彼の妻だったという。当初、その企画にピンと来なかったというブロシエ監督だったが、「スピルバーグ的な視点から読んでみて」と力説する妻の説得を受け、「大好きな監督であるスピルバーグが、いかに悲しい物語を子どもたちの目と無邪気さを通じて鮮やかに描くか。ひどくつらい現実に魔法のような一面を与え、時代ものの作品に壮大さを授けるかを思い出した」という。

 そこで彼は過去に映像化された「家なき子」の数々をチェックしたという。そこで改めて感銘を受けたのが、ブロシエ監督が幼少期に観ていた日本版アニメシリーズの「家なき子」だった。

 「興味深いことに、日本のアニメが最も原作に忠実な解釈をしているんだよ。プロットだけでなく、細部をハッキリ見せたアート・ディレクションもね。一部の人にとって、レミの帽子に巻かれた飾りや、(猿の)ジョリクールの衣装といったものは、懐かしい記憶を呼び起こすんじゃないかな」と語るほどに、日本版アニメはブロシエ監督にインスピレーションを与えたという。

 レミを演じるのは、400人以上のオーディションの中から選ばれたマロム・パキン。撮影当時11歳だった彼は、本作が映画初出演となる。そのけなげさと勇敢さ、無垢なかわいらしさは観客を魅了する。パリ・オペラ座合唱団でボーイソプラノの歌手としてトレーニングを受けていたこともあるマロムは、劇中で美しい歌声を披露。その澄み切った歌声が響き渡るシーンは、一服の清涼剤ともいうべきシーンとなっている。

 レミの才能を見いだし、導いていく初老の旅芸人ヴィタリスには、『あるいは裏切りという名の犬』『八日目』などフランスを代表する俳優、ダニエル・オートゥイユが務める。撮影中、マロムに「カメラを見るな」「失敗したテイクがあっても気を落とすな」と集中するためのアドバイスを与え続けていたといい、まさに劇中のヴィタリスとレミのような良好な関係性を保っていたという。

 また、夫が拾ってきた赤ん坊のレミに愛情を注ぎ、11歳になるまで育ててきたバルブラン夫人には『8人の女たち』『スイミング・プール』のリュデュヴィーヌ・サニエを配役。さらに足が不自由な娘を笑顔にしてくれるレミに好意を抱き、彼に優しく接するイギリスの貴婦人、ハーパー夫人役には、『冷たい水』『カップルズ』のヴィルジニー・ルドワイヤン、少年時代を回想する老いたレミ役には『ニュー・シネマ・パラダイス』のジャック・ペランなどフランス映画界を代表するキャストが集まっている。

■古いカメラレンズを使って美しい景色を表現

 またレミと友情を育む忠犬カピ、キュートな猿のジョリクールといった旅の一座を演じる、サーカスで芸の訓練を受けたボーダーコリーのダークネス、タレントとしての経験豊富なオマキザルのティトら、動物たちの「名演」も注目だ。

 劇中では、レミが幼少期を過ごした村や、一座と旅するフランスの美しい風景を壮大なロケーション撮影で表現。フランス南部のオクシタニー地方、オーブラック地方、タルヌ県など、これまで映画ではめったに撮影されてこなかった地域での自然の景色が楽しめる。

 また、撮影にはアメリカのクラシック映画の撮影に使われた古いレンズを使用しており、シネマスコープの大画面で、まるで絵はがきのような美しい景色を堪能できることも大きな魅力だ。

 数奇な運命に翻弄されるレミの波瀾万丈な人生には、いくつもの壁が立ちはだかる。だがそんな困難な状況でもレミはしっかりと前を向いて歩み続ける。そんなレミのひたむきな姿、まなざしはきっとわれわれの胸を熱くさせることだろう。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/26(月) 13:11

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