IDでもっと便利に新規取得

ログイン

資生堂、銀座の「スゴい旗艦店」が担う重大使命

10/25 6:01 配信

東洋経済オンライン

 パネルの前に立ち、「色校正プレート」と呼ばれるシートを持って、自分の顔写真を撮る。すると、「ファンデーションバー」というコーナーで30色のファンデーションの中から最適な3色が提示され、客が試すことができる。その時間は、わずか1分ほどだ――。

 化粧品大手の資生堂は7月、東京・銀座に「SHISEIDO グローバル フラッグシップ ストア」をオープンした。主力ブランド「SHISEIDO」の初となる旗艦店で、最先端のデジタル技術を生かし、同ブランドの訴求を一層強化する役割を担う。ファンデーションバーは「色が多すぎて、どれが自分に合うかわからない」(20代女性)という化粧品選びの悩みに、デジタル技術で応えた例の1つだ。

■グロスをパネル上の自分に試し塗り

 サービスの要となるのが、入店時に手渡される「S CONNECT」と呼ばれる紅白2色のリストバンド。チップが内蔵されており、「ファンデーションバー」のようなデジタル体験の結果などが記録される。

 「MAKE ME UP」というコーナーでは、リストバンドをかざして手元の枠に商品を載せると、パネルに価格や色、使い方などの情報が表示される。

 気になった化粧品があれば、「シミュレーター機能」を使うことにより、合成技術でグロスなどを塗った自分の顔が、パネル上に映し出される。今まで化粧品を試すときは、肌に直接塗って色合いを確認したり、美容部員にメイクをしてもらう必要があった。一方、MAKE ME UPではパネルに映った姿を見るだけで済む。

 購入を検討した商品は、パネルに表示された「カートに入れる」ボタンを押して確保し、最後にレジで欲しい商品だけを選べる。デジタル技術を生かすことで、実物を体感できる実店舗のよさを残しながらも、商品の入ったかごを持つ煩わしさが取り除かれているのだ。

 これまでも化粧品メーカーは、テナントの1つとしてデパートなどに入居する一般店舗とは別に、独自色の強い旗艦店を出店してきた。狙いは店舗の内装や体験型のサービスを通じて、自社ブランドの世界観を浸透させることだ。人通りが多く、アパレルなど各業態の高級ブランドが集まる銀座や表参道に、各社の旗艦店が居並んでいるのはそのためだ。

 ただ、化粧品市場は新型コロナの影響を受けた外出自粛により、顧客がメイクをする機会が減少し、厳しさを増している。資生堂の2020年1~6月期決算は売上高4178億円(前年同期比26.0%減)、営業利益は34億円の赤字(前年同期は689億円の黒字)に転落した。

 そんな時期に資生堂が旗艦店を出店した目的の1つは、2020年に予定されていた東京オリンピックの開催などによる、インバウンド需要の取り込みだった。コロナ禍でその目論見は外れたが、同社の岡田美樹氏(プレステージブランドマーケティング部)は、旗艦店が「新しいカウンセリング方法を試す場になっている」と話す。

■美容以外の分野を開拓する役割も

 「ALIVE with Beauty」を掲げ、内側からの美にもこだわりを持つSHISEIDOブランドでは、美容だけでなく食事や運動などの提案も目指している。この旗艦店で提供される「スキンケアレッスン」では、肌診断の結果に合わせ、その人に合ったエクササイズ動画や料理レシピを提供している。

 このレッスンを受けた客に限り、茶葉やアロマオイルを購入することができる。新しいカウンセリングを試す「トライアル店舗」としての役割を持っているのだ。オープンした旗艦店には全国から屈指の美容部員が集まっており、同分野に関する教育を特別に受けているという。岡田氏は「旗艦店で成功体験を作り、それを水平展開できている」と、旗艦店の重要性が揺るがないことをにじませる。

 実際、化粧品各社の間では、最先端の技術を用いた旗艦店のオープンやリニューアルが相次いでいる。

 同じく化粧品会社でEC(ネット通販)主体のオルビスは7月、表参道に旗艦店「SKINCARE LOUNGE BY ORBIS」をオープンした。オルビスは売り上げの通販比率が77%(2020年1~6月期)とECに強い一方で、店舗などにおいて「商品の正しい使い方を伝えきれていなかった」(オルビス・マーケティング戦略部の小椋浩佑氏)という悩みがあった。

 そこで、店舗の蛇口から洗顔に最適とされる人肌の温度のぬるま湯が出るようにするなど、正しく効果的なスキンケアを体感してもらえるように工夫した。

■化粧品だけでなく「将来の体型予測」まで

 8月にリニューアルした化粧品会社・ファンケルの旗艦店、「ファンケル銀座スクエア」は、化粧品だけでなく健康に関する体験型設備が充実している。同社の売上高の38%はサプリメントや青汁などの健康食品(2020年3月期)だ。実際の体験を通じて、美だけではなく健康面の新しい発見をしてもらうことが狙いだという。

 同店舗では最新機器「3D動作分析センサー」を使い、将来の体型を予想した3D画像を確認することができる。センサー付きのベルトなどを装着し、数秒の動作をいくつか測定すると、2~3分で将来の体型を予想した3D画像が出る。また、現在の体の歪みや筋肉の硬さも数値化してくれる。

 また、ファンケル執行役員の馬見塚陽子氏は、「情報発信の場としての重要性がより高まっている」と話す。ネットでの生中継で商品を紹介・販売する「ライブコマース」を旗艦店でも行っているのだ。旗艦店は全国から優秀な人材が集まっていることや、店舗が自由に使えることなどから、ライブコマースに最適な場所になっているそうだ。

 新型コロナの影響で予想外の苦戦が続く化粧品各社。今後は新たな旗艦店での取り組みを事業に落とし込み、いち早く収益に還元できるかどうかが、各社の明暗を分ける要素の1つとなりそうだ。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:10/26(月) 9:42

東洋経済オンライン

投資信託ランキング