IDでもっと便利に新規取得

ログイン

東大に受かる子がやっている「数学」勉強のコツ

10/25 11:11 配信

東洋経済オンライン

東京大学受験指導専門塾「鉄緑会」が手掛ける年度版問題集シリーズの『2021年度用 鉄緑会東大数学問題集 資料・問題篇/解答篇 2011-2020』を担当し、長年東大数学入試を分析してきた、鉄緑会・蓑田恭秀氏が、「数学勉強法」を紹介する。

■東大に受かる生徒・落ちる生徒

 私は、東大受験指導専門塾「鉄緑会」で21年間数学を教えてきました。鉄緑会は、東京・大阪・京都などに校舎を構える塾で、2020年度の東大合格者数は515人、そのうち最難関の理科三類については定員100人中59人を占めています。

 鉄緑会で長い間中高生を見ていると、東大に受かる生徒、受からない生徒の特徴がよく見えてきます。そのうちのいくつかを紹介し、そこから数学の正しい勉強の仕方について探っていきたいと思います。

 世間で「数学は暗記か」という命題が取り沙汰されることがありますが、答えはイエスでもあり、ノーでもあります。というのは、この質問への答えは学習フェーズにもよるし、解く問題にもよるからです。

 入試数学の基礎を学んでいくフェーズでは暗記の割合が大きいでしょう。たくさんの公式が出てきて、それを適用する練習をさらにたくさんしなければなりません。そこにオリジナリティーを発揮する余地はありません。

 これはスポーツでも同じです。野球でもテニスでも柔道でも水泳でも体操でもゴルフでも、まずは基本の「型」を徹底的に身に付けることから始まります。それには長い時間がかかります。

 数学の勉強でも同じです。数学の論理展開にも、答案の書き方にも、一定の「型」があり、それを逸脱した答案というものは、オリジナリティーなどというものではなく、単に相手にされないだけです。どんなに素晴らしい解法も、どんなに斬新なアイデアも、数学の答案である以上、基本的な「型」は同じです。まずはこのことをしっかり意識しましょう。「自己流」はダメです。

 もちろん、無機的に暗記するというより、「基本動作を何度も何度も繰り返し、自分の身体に覚えさせる」という意味合いのほうが強いです。

 ただ、それだけで東大入試を突破できるかと言えば、さすがにそんなことはありません。

 「型」だけで対応できる問題ももちろん出題されはしますが、一定以上のレベルの入試問題について言えば、そのような問題では受験生の間で差はつかず、そうでない問題で差がつくわけです。「型」を身に付けるのは、差がつくレベルの問題に挑戦するための必要条件にすぎず、それだけでいいなんてことは絶対にありません。

■定石 vs 思考力

 たまに、「数学はパターンを暗記すれば大丈夫だ」と言う人がいます。その意図もわからなくもないのですが、それと同時に、そう言い切るための根拠も薄いと思います。何を「パターン」と呼ぶか、何を「暗記」と呼ぶか、その場で必要なアイデアがどれくらい浮かぶか、などの人による部分、そして目標とする大学の入試問題のレベルによる部分の両方ともが大きすぎるからです。

 入試における数学では、新しい問題にぶつかったときに「それまでの経験・知識をどのように応用するか」という部分が大切になってきます。したがって、中高6年間の学習の中のどこかのタイミングで、「型を身に付けるフェーズ」から「型を応用するフェーズ」に学習姿勢を切り替える必要があるのです。

 それがうまくいかない人は受験勉強で苦労します。「身体に覚えさせること(その場では考えないこと)」と「それを組み合わせること(その場で考えること)」との区別がつかず、いつまで経っても低学年時の学習の仕方を引きずってしまうのです。そのような人は頑張っても頑張っても成績が伸びず、「こんなに頑張ってるのになぜ伸びないんだろう?」「自分はダメなんじゃないか」と落ち込んでしまいます。

 新しい問題にぶつかったときに適切な解法が浮かぶかどうかは、どれだけの解法を覚えてきたかではなく、どれだけ自分の頭で考えてきたか、そしてどれだけ数学的な頭の動かし方ができるようになっているかによります。

 考え方をしっかり理解したうえで、繰り返して身体に染み込ませる。そうして自分のモノになったものだけが、試験本番で追い込まれたときに真価を発揮します。

 「数学的な頭の動かし方」をせず、解けなかった問題について解答を読んで理解し覚えようとする勉強。これが最もやってはいけない勉強です。覚えようとすることは、理解することを放棄することにほかなりません。

 覚えればどうにかなるだろう、という考えの人は、新しい問題に対して試行錯誤をしたがりません。そんなことをしている暇があったら、模範解答を読んで理解して覚えたほうがいいと思ってしまう。そして覚えようとして、思考停止に陥る。そうしている間にも新しい問題はどんどん出てくる。ひとたびこの「覚える病」にかかってしまうと、そこから抜け出すのはなかなか難しいです。

 いちばん厄介なのは、そういった勉強法でも、一定の達成感を得られてしまうことです。「〇時間勉強した」「〇問やった」というのは、このような勉強法をしている人にとって甘い響きのする言葉です。それが実質的な成長を伴ったものでなかったとしても。でもそれでは何の意味もないのです。結局大事なのは、「何をやったか」ではなく、「何をできるようになったか」なのですから。

 数学ができる人ほど、具体的な状況で調べてみたり、答えが出ても特殊な場合で検算したり、別の方法でチェックしたりといったことをいといません。一方、数学が苦手な人ほど、答えを急ぐ余り、よくわからずに一般論を振りかざして的を外した答案を書き、少し違う視点から見れば明らかに間違いだとわかる答えを書いて平然としています。

 自分の頭で考える時間を長く取ってこなかった人は、その分模範解答とにらめっこする時間が長かったのだと思いますが、模範解答は基本的に、このような実験や試行錯誤を経たうえで答案用に体裁を整えた“よそ行き”のものです。

 模範解答の作成者も、そこに書いてあるとおりに考えたのではありません。そのことを知らずに模範解答を一生懸命理解しようとするだけでは、数学はできるようにはなりません。その裏にある、(時にもっと泥臭い)解法のアイデアにたどり着くまでの考え方を探る努力をしなければなりません。

■人に教えることをイメージする

 そう言われても実際にどうすればいいのかわからない、という人もいるでしょう。そのときに最も大事なことが、

 「人に教えることをイメージして勉強する」

 ことです。問題を解き終わり、理解したと思っても、そこで終わらず、その問題を一から人に説明できるかを試してみてください。その際の相手としては、自分よりも少し下のレベルの人をイメージしてください。自分よりも数学が少し苦手な“架空の後輩”などを頭の中に住まわせておいて、その後輩に向かって説明するイメージです。

 こんな話があります。戦後すぐくらいの時代に東大合格者について調べたところ、圧倒的に(下の兄弟がいる)長男・長女が多かったそうです。一人っ子よりも割合として高かったことから、「家のリソースが集中するから」という説は否定され、結局「長男・長女は下の子に教える過程で学力が上がるのだろう」という結論に至ったそうです。

 すべての問題についてこれを行うのが時間的に厳しい場合であっても、少なくとも自分が解けなかった問題や理解が完全でないという感覚がある問題については行うべきです。そしてここは絶対にごまかしてはいけません。理解があやふやであること自体は構いません。

 また戻ってきてトライすればいいのです。しかし、自分の理解度に関しては、真摯に、実直であってください。「今後いつ出題されても絶対に解ける」と思えるようになってはじめてその問題を完全にわかった、と言っていいのです。

 『本田宗一郎という生き方』(宝島社)という本に、次のような一節があります。本田宗一郎とは、世界的自動車・オートバイメーカーである本田技研工業(Honda)の創業者です。

何事も自分でやってみないと気のすまない性格だった宗一郎は、後に仕事の成功と失敗についてこのように語っている。

「人生は見たり、聞いたり、試したりの3つの知恵でまとまっているが、多くの人は見たり、聞いたりばかりでいちばん重要な“試したり”をほとんどしない。試した場合には必ず失敗がつきものだ。しかしそれを恐れていては成功のチャンスはやって来ない。」
発明王・エジソンは「天才とは1%のひらめきと99%の努力である」という言葉を残したが、宗一郎は「成功は99%の失敗に支えられている」と語った。それは抽象的な精神論ではなく、「この道がだめだということを明らかにしたという意味で、失敗は企業に対する成果がある」という考えに基づくものであった。

 最後の部分は数学の勉強でも当てはまります。結局ダメだった考えを、ダメだったからと言ってすぐに捨てて、模範解答に書いてあるものだけを理解しようとする人がいますが、その方法は短期的にはいいかもしれませんが長期的には成長につながりません。

 ダメな手法も含めて試行錯誤してはじめて、見込みのある手筋とそうではない手筋の違いがだんだん見えるようになってきて、試験の場においても短い時間で指針を決めることができるようになるのです。

また、河合塾の大竹真一先生による「先生方のための徹底入試対策講座」第63回にも、以下のような記述があります。ネットに公開されています。

 この「1題で1題分以上の力をつける」というフレーズに、強く共感します。受験までに解ける問題の数は限られているわけですから、「今目の前にある問題から最大限のものを抽出し、吸収しよう」ということをつねに意識して勉強すべきです。

■「環境」の違いは入試にも左右する

 冒頭に述べたとおり、鉄緑会は昨年度の東大入試において理科三類の定員100人中59人を占めるなど、毎年高い実績を挙げています。手前みそながら、東大受験のノウハウに関してはわれわれの右に出る団体はないと自負しております。

 私自身は九州の出身で、中学・高校時代は鉄緑会のことをまったく知りませんでしたが、東大入学後、はじめはアルバイトとして鉄緑会で働き始めました。それから長い間大学受験業界に携わってきた今、鉄緑会の生徒と昔の私のような地方の生徒との間にどのような違いがあるかを考えると、それはやはり「環境」です。

 インターネット時代になり、情報格差はかなりなくなってきたとは言え、普段一緒に過ごす友人や先生から直接受ける刺激には計り知れないものがあります。

 東大を身近に感じ、意識の高い人材が数多く集まっている場があるという点に関しては、都市部はやはり有利と言えるでしょう。

 そうは言っても、地方であっても身近に尊敬できる人はいるはずです。実際に私もそうでした。自分でさまざまな本を読んで刺激を受けるだけではなく、そうやって仕入れた知識を共有する仲間がいました。友人や先生との会話の中で、新たな知見を得たり発見があったりするものです。自分だけでは到底到達できなかった高みに達することができたと感じています。

 勉強していく中で、疑問に思ったことや何だかモヤモヤすることがあれば、ぜひ周りの人に聞いてみてください。

 長くなってしまいましたが、数学を勉強していくうえでのアドバイスと、それを実践するための注意点を述べてきました。これを読んだ皆さんが、数学を楽しく勉強することができ、結果的に入試でもよい結果を残されることを祈っております。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:10/25(日) 11:11

東洋経済オンライン

投資信託ランキング