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なぜ地銀だけが再編のターゲット? 日本の金融機関全体が時代遅れに

10/25 10:01 配信

LIMO

菅政権の目玉政策の一つが地銀再編と言われています。しかし、これは地銀だけの問題ではなく、メガバンクも含めた日本の金融機関全体の問題だと筆者は考えます。にもかかわらず、なぜ地銀のみがフォーカスされて再編のターゲットになるのでしょうか。今回のコラムでは、日本の銀行全体が直面する問題について考えたいと思います。

人口減少下、銀行の数も減るのが当たり前

言うまでもなく日本では人口減少が進みます。現在の出生死亡率が変わらないとすれば、毎年約80万人減少していく計算です(下図参照、2065年の日本の人口は88百万人まで減少)。新潟市や浜松市くらいの政令指定都市が毎年なくなり、10年経てば大阪府クラスの地方自治体が消滅するイメージです。しかしながら人口増の決定打はありません。

そうした中、地銀再編が必須と言われています。もともと地銀は地方振興のために設立された銀行(第一地銀)、もしくは無尽会社であった地域金融機関(第二地銀)で、営業地盤はその銀行がある限定された地域になります。もちろん越境ビジネスも可能ですが、歴史的に営業場所が固定されていますから、地元以外で営業するのは難しいのです。

加えて、地方都市ではメガバンクの支店、信用金庫、信用組合、ゆうちょ銀行が乱立しており、人口が減れば営業基盤が徐々に小さくなる宿命を負っていました。

その観点からは、地銀の再編(=減らす)はやむなしだと思いますし、人口減少下で銀行全体の数が減っていくのは致し方ありません。さはさりながら、今は地銀を再編のやり玉に挙げるのではなく、時代に合わなくなった既存の金融機関をどうすべきかが本当の問題なのです。

銀行が地方経済を支えることは難しい

筆者はかつて銀行に勤務していましたので、地元顧客への対応がいかに重要か分かっているつもりです。勤務先だった某メガバンクの支店長は、町内会の寄り合いには必ず顔を出し、冠婚葬祭にもそつなく対応していました。当時新人だった筆者は、とてもここまではできない…と思ったものです。

待遇も悪くなく、1980年代後半の支店長には支店長車と運転手がついていました。銀行員のロールモデルが支店長だったわけです。ただし、銀行員は顧客との癒着を防ぐという理由から2~3年程度で転勤します。これは支店長も例外ではありません。ずっとそこで活躍したいと思っても居られないのが実情です。

このように頻繁な人事異動があると、地域経済に貢献しようにも時間が足りません。担当者でも支店長でも、着任して取引先に顔を覚えてもらうのに半年かかり、新規貸出案件を増やそうにも相手あってのこと。そうこうするうちに2~3年はすぐ経ってしまい、そしてまた転勤です。

これでは長期的な関係は築けませんし、いきおい目先の数字を追いかけることになります。もちろん、数字よりも人材育成や組織づくりに努める支店長さんもいることは事実ですが、ほとんどは営業目標を追いかけて後任に託すわけです。

本来は地方銀行であれメガバンクであれ、地元経済を振興し、融資を通じて企業を育てたり救ったりしたいと考えていると思います。しかしながら今は経済停滞期。地方企業を応援しなければ、という理由だけで貸せるはずはありません。地方にしか根を持たない地銀(及び地域金融機関)は、経済成長鈍化と人口減で活躍する場が減り続けているのです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)はさらなるハードル

さらに、日本の銀行にとっての大きなチャレンジはDX(デジタルトランスフォーメーション)ですが、これにはかなり時間がかかると思います。

多くの銀行では、いまだに印鑑がないと本人確認に支障をきたします。すでにネット銀行の一部は印鑑を廃止していますが(個人取引)、複製可能な印鑑を本人確認資料とするメガバンクや地銀に、明るい未来はないと言っていいでしょう。実際、先日、某メガバンク支店で筆者がキャッシュカードの再発行を依頼したら、印影確認だけで30分もかかっていました。

加えて、ネット銀行にはATM利用通知や入出金通知が即時電子メールで届くサービスも行っています。一部の大手銀行は同様なサービスを展開していますが、全ての銀行が同水準ではありません。今や後発のネット銀行の方がメガバンクや地銀の利便性をはるかに上回っているのです。

この程度のサービスは個別の強化策を取ればいいだけの話ですが、取引のすべてがデジタル化されるDXでは、業務や事務手続きを全面的に見直す必要があるのです。地銀再編問題は、それができる体力(=収益力)が銀行全体に残されているかどうかと、DX化ができた後に顧客がその銀行に残っているかどうかが真の問題なのです。

金融テクノロジーの進化は予想がつかない

時代の変化と技術革新のスピードが凄まじく上がっている現在、金融テクノロジーの進化には予想がつきません。35年前に筆者が初めて配属されたメガバンクの支店にはコピー機がありませんでした。稟議書は手書きです。当然、ネットバンキングなんて考えられませんでした。

しかしその後、書類作りはパソコン作業になり、ネット取引は当然のこととなり、今はスマホだけでほとんどの銀行取引ができる時代です。このように、過去の延長に未来はなく、未来は突然やってくるものなのです。

つまり、今は地銀再編云々を議論している場合ではなく、むしろ銀行業務を開放して異業種の自由な参入を促し、ガラガラポンをしないと日本の金融の未来は暗いと思います。既存の銀行ビジネスに慣れきった世代の経営者が、テクノロジーの進化について行けないのは当然のことなのですから。

LIMO

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最終更新:10/25(日) 22:25

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