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「お酒で現実逃避する人」が見逃す不都合な真実…科学的にも「やけ酒はダメ酒」だった

10/24 16:11 配信

東洋経済オンライン

「週末の疲れた心と身体を癒やすには、やっぱりお酒!」と考える方には残念な情報かもしれません。なんと近年の研究で、「アルコールを常習するとイヤな記憶を消す能力が下がる」ことがわかりました。では、私たちが普段お酒を飲むときに感じる「なんとなく楽しい気持ち」は何だったのか?  科学的見地から見た飲酒の正しいメリットとデメリットを、明治大学法学部教授の堀田秀吾氏による新刊『図解ストレス解消大全』から一部抜粋・再構成してお届けします。

 仕事のあとに飲むビールが好き、という方は多いと思います。自分へのご褒美もかねてグビグビと飲めば、何とも言えない多幸感に包まれ、気持ちが落ち着くものです。

 古来から「酒は百薬の長」と呼ばれるように、先人たちもお酒の有効性を肌身に感じていたのでしょう。なんでもこの言葉は、紀元前3世紀末頃の漢書に登場し、『塩は食べ物のなかで最も重要。酒はどんな薬より効果がある上に宴会には欠かせない。鉄は農業に必要なものの基本』と書かれていたとか。古今東西、お酒の魅力は変わらないのでしょう。

■「やけ酒」こそストレスの原因

 「酒は百薬の長」。だからこそ、イヤなことがあったり、むしゃくしゃしているときにお酒を飲むことで、ストレスを解消したくなる――という人は多いのではないでしょうか? 

 ところが、東京大学大学院の松木則夫・野村洋の研究では、「やけ酒をするとイヤな記憶や気持ちがかえって強くなる」ことが判明しています。お酒を飲むと楽しくなって気持ちもふわふわしてきますが、飲み続けるとそうとは限らないのです。

 研究では、ネズミに電気ショックを与えたあと、アルコールを注射し、どういう行動になるかを調べました。すると、ネズミは電気ショックのことを忘れるどころか、電気ショックの恐怖を強め、臆病になってしまった……つまりイヤな記憶が強化されてしまったのです。

 さらにアメリカ国立衛生研究所のホームズらの研究結果によると、「アルコールを常習するとイヤな記憶を消す能力が下がる」ことが報告されています。先の研究と合わせると、お酒を飲んで楽しくなったとしても、実際にはイヤな記憶が強化され、消却することが困難になるだけというわけです。

 「イヤなことがあったから今日はとことん飲んで楽しくなってやろう!」「付き合っていた人と別れてショックから立ち直れない……お酒を飲んで気を紛らわせよう」。そう心に誓ったところで、脳は正直です。飲んでいる最中は楽しくなれるかもしれませんが、お酒に頼りすぎると、かえってイヤなことや忘れたいことをズルズルと引きずる体質になってしまう可能性が高まるのです。

 ストレスから逃れるためにお酒を飲む行為は、逆効果どころか自分を苦しめるだけです。「酒は百薬の長」だと思って飲んでいたら、実は「酒は万病の元」だった……では、笑うに笑えません。徒然草の作者である吉田兼好も「酒は百薬の長とはいえど、よろづの病は酒よりこそ起れ」とお酒に対する注意喚起を忘れていないほどです。

 ちなみに、カリフォルニア大学の研究に、「メスにフラれたオスのハエは、アルコールの入った餌を好んで食べるようになった」という結果もあるほど――。ハエですらショックを紛らわすためにお酒に身を任せてしまう……皆さんは理性ある人間ですから、「やけ酒はダメ酒」だということを覚えておいてください。

■飲酒にはメリットもある

 だからといって、私は「お酒を飲むな」と言うつもりはありません。むしろ、適量さえ守れば、お酒はクリエイティビティを生む、良薬になる一面を持ちます。

 イリノイ大学のジャロスツらが行った実験では、アルコールの創造性向上を示唆する結果が明らかになっています。まず、21歳から30歳の男性40人をアルコールを摂取した20人のグループと、摂取していない20人のグループに分け、パソコンの画面に映し出された言葉の問題について、各問1分間の制限時間内で答えを入力するという課題をやってもらいました。結果、正答数については両者に違いはなかったものの、アルコールを摂取したグループの方が回答が早く、また洞察に富んだ回答をしていたのです。

 この実験では、摂取した被験者20人に、血中アルコール濃度が0.075%に達するまでお酒を飲んでもらいました。というのも、アメリカで定められている血中アルコール濃度の法的制限値は、基本的に0.08%。州によってはもっと厳しいところもありますが、0.08%の運転で違反となるのが一般的です。

 なお、日本の法的制限値は、呼気1リットル中のアルコール濃度0.15ミリグラム以上0.25ミリグラム未満で酒気帯びに相当します。個体差こそあるものの、体重60キロの男性の場合、アルコール度数5%の缶ビール350mlで、血中濃度0.03%に達すると言われています。日本の方が断然厳しいんですね。

 話を戻しましょう。先のイリノイ大学の0.075%に照らし合わせると、缶ビール1~2本くらいがクリエイティビティを生むお酒の適量と言えそうです。

 アイデアを思いつく“ひらめきの瞬間”には、耳の少し上にある脳内の上側頭回という部分が活発に動いていて、その動きを活発にするためにリラックスしている状態で出る脳波“アルファ波”が大量に出ていると言われています。

 散歩中やシャワー中、トイレにいるときにアイデアが湧きやすいのは、リラックスしていることでアルファ波が出やすくなっているために、ひらめきやすいというわけです。

■ストレス解消につながる飲み方

 適度な飲酒によって生じるリラックス作用が、上記したような創造性を向上させる。さらには、ふだん、脳のワーキングメモリは必要な情報と必要ではない情報を取捨選択しています。アルコールを摂取するとその働きが鈍って、ふだんは捨てられてしまう情報が拾われるようになるため、これまでになかったような情報の組み合わせ、つまり新しい考えが得られると言われています。

 お酒を飲むと、「なんとなく楽しくなる」という人もいると思います。たしかにお酒が入った状態で人と話すと、気持ちが高揚してきます。しかし、それはお酒の力ではなく、人と話すことで心身の安定や心の安らぎを感じる物質・セロトニンが分泌されるからです。

 お酒を飲む人は、人と楽しい話をすることをメインディッシュに考え、お酒を飲むこと自体をサイドディッシュにすることが肝要です。私の周りにいる仕事ができる人たちは、皆さん、お酒が好きだけど“お酒に飲まれない人”ばかりです。お酒に飲まれてしまうと、自分のやる気や元気を損なうような、ストレスを生む出すだけの飲み方になってしまうので気を付けてください。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/25(日) 8:14

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