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「1いいねで〇〇」で超絶バズった作品の舞台裏

10/24 10:21 配信

東洋経済オンライン

 ツイッターやインスタグラムなどへの投稿が爆発的にバズるなど、クリエイターにとってSNSは重要な活動の場となりつつある。イラストレーターのおおのたろうさんも、その威力を感じている1人だ。

今年4月11日、赤ちゃんのイラストと同時に、「1いいねにつき1日成長する赤ちゃん 365いいねごとに誕生日が来ます」と投稿したところ、猛烈な勢いでいいねがつき、なんと初日で13歳まで成長。その後の反響もすさまじく、なんと18日には700歳を超えるほどいいねが集まるほどに。2カ月間の投稿で約29万いいねを集めた、この「赤ちゃん」が大人になっていく様子は書籍『きみの中のぼく』となって発売もされた。

 イラストだけでなく、「GIFゲーム」などをほぼ毎日投稿しているおおのさんがブレイクしたきっかけはなんだったのだろうか。

■「GIFゲーム」がバズる

 イラストレーターとして活動していたおおのさん。もともとツイッターは利用していましたが、ある時作品用のアカウントを開設し、毎日作品を投稿するようになったという。

 趣味で気楽に作れる作品、頭の隅に浮かんだネタのような投稿をしていましたが、前々から好きだった顔ハメ看板を題材にした「顔ハメ看板GIFゲーム」を投稿したところ、フォロワーさん何人かが反応してくれ、コメントでの交流も盛んになりました。調子に乗ってシリーズ化して、毎日顔ハメ看板GIFゲームを投稿するようになったのです。

 その流れで作ったのが「赤ちゃんにおむつをはかせてあげよう」というGIFゲーム。これがツイッターで大反響を得て、話題になりました。自分の作品を通してフォロワーさんたちと一緒に遊ぶ、それは学生時代に友達に作品を見せては一緒に楽しんでいたあの頃と一緒。それからもGIFゲームを作り続け、200以上のゲームを発表しました。GIFゲームが新たな仕事につながり、遊べる広告としてさまざまな企業とのコラボ作品も生まれました。

 こうした活動を続けている中、「1いいねにつき1日成長する赤ちゃん」が大反響を巻き起こす。活動の幅を広げようと考えていたのに、世の中がコロナ一色になった今春のことだ。

 僕の仕事にも影響が出て一時期はすべての仕事がストップしていました。こりゃ大変だ~と思いつつも、その期間は、世の中的に仕方がないし、この期間でしか味わえないことをやろうと当時3歳の息子との時間をゆっくり過ごしていました。

 一方で、こんなときでもできることはあるだろうと作品は作り続けて投稿していました。そんな時、ツイッター上で「1いいねにつき〇〇」という投稿が流行っているのを知りました。

■「自分ならどんなものを作るのか?」と考えた

 はじめはツイッターの仕組みを利用して作品の結果が変わる、というのが面白いとはたから見ていただけでしたが、自分ならどんなものを作るかな、と考えた時に思いついたのが「1いいねにつき1日成長する赤ちゃん」でした。

 投稿するとみるみるうちに「いいね」数が増えて、大きな話題になり、数々のテレビやネットニュースで取り上げていただきました。約2カ月投稿を続けて物語を終え、最終的に「きみの中のぼく」として1冊の本になりました。

 無計画ではじめたこともあって、最初はどんどん増えるいいね数に対して、僕もそのときの思いつきで投稿していきました。新しく物語を考える時間がない中で、確実に参考にできるのは自分の人生経験だけでした。しかし、そのおかげでリアルな描写が読者の共感を得て、多くの方に親しんでもらえる物語になったのだと思います。

 ヒーローに憧れていたこと、専門学校に入学したこと、ボロボロの家に住んでいてビー玉が転がっていたこと(笑)、パン屋さんでアルバイトしていたこと、妻との出会いが専門学生時代だったこと。ちょこちょこと実体験を織り交ぜております。

 僕自身、絵の仕事をやってきた10年の中で葛藤や失敗も沢山ありました。しかし、作品の中で描いたように人生には1日1年同じ時間はない。過ぎた時間が無駄だと思える時間だったとしても、その後の自分の生き方によって、いつからでもいいようにつなげていくことができる。

 この作品を描いているうちに、そんな思いが伝わればいいなと思いました。結果、僕の過去の体験を作品につなげられたことが、自分にとっても救いとなりました。

 ツイッターに投稿し続けるコツは、「自分が楽しいと思えることを題材にすること」だといいます。

 好きだからこそ考えたくなる、それを伝えたくなる。その気持ちを自分自身が素直に発見して、発信することが大切だと思います。

 形式的なことでいえば、作品や投稿に連続性を持たせると続けやすい。たとえば、1つのキャラクターがいて、その日ごとにアイテムを変えてみたり、投稿する日が何の日か調べて、それに合ったシチュエーションを加えてみたり。1つのモチーフに対して、毎日バリエーションを変えて楽しむのがいいと思います。

■無理して続けない、完璧を求めない

 投稿していく中でフォロワーさんからの反応をもらえることも続ける上での励みになります。楽しんでくれている、待ってくれている人がいるという存在はとても大きいです。

 コメントからヒントを得て生まれる作品もあったりするので、自分1人だけで続けることに加えて、見てくれている方に向けて投稿を考えることも刺激になります。

 そして、最も大事なことは、無理して続けようとしない、完璧を求めないこと。「毎日続ける」というところでは、とても大事なことなのではないかと思います。

 完璧を求めすぎると一度で力を使い果たしてしまい、次に動く力が無くなって最後には続けることもできなくなってしまう。そんな経験が僕にもありました。

 まずは失敗してもいいし、失敗をしたとしても、気軽に超えられるハードルが超えられればよしとして、最低限の反省をして次に生かす。ちょっとずつ、ちょっとずつ改良していくと、不思議と技術もあがりますし、要領もつかめてきます。

 完璧というのは自分の中の頭の中にだけ存在するのもの。自分が作ったイメージだけで完結するよりも偶然や寄り道がいい結果をもたらすことのほうが多い。そうわかったときに、僕は完璧を求めるよりも、変化していくことや、そこから生まれるフォロワーさんとの関係性を楽しむことのほうが自分にとっても実りがあると思うようになりました。

■3日坊主でもまた挑戦すればいい

 好きだったことを無理に続けようとして嫌いになってしまったら元も子もないので、まずは続けるためにするのではなく、なんとなく投稿してみて楽しかったら次の日も投稿してみて、1日1日が気づけばつながっていくのが理想なんじゃないかと思います。

 3日坊主になってしまったとしても、別の新しいものに挑戦してみたり、それがまた3日坊主であっても、そうやって絶えず何かアクションすることで自分の中に色んな「3日坊主コレクション」ができて、ある日突然、点と点がつながるように、自分なりの最良の方法が見つかることも多いです。僕自身がそんな点と点がつながって今があります。

 3日坊主も続ければ「3日坊主のプロ」になれるわけです。色んなことを3日試してその結果を投稿していくとか(笑)

 僕も、作品アカウントをはじめたときはフォロワー十数人でした。毎日続けていくと、不思議なもので時折誰かの心に深く届いたり、そこから広がって多くの方に見てもらえるものになったりと、その積み重ねが今につながっています。

 SNSの面白いところはそういった「好き」がつながっていくところです。今でもどうやったら面白い投稿ができるかな? 今の時期に投稿したら楽しんでくれる作品はなんだろう? と試行錯誤しながら投稿しています。

 ときには流行に乗っかることも大事だと思っています。僕はあまり流行に敏感な人間ではありませんが、流行りにはその時代のその一瞬にだけ生まれる不思議なパワーがあると思っていて、その強力な流れに自分なりの表現を置いてみることで、作品の新しい可能性を発見できたり、新しく見てくれる人が増えたりする機会にもなります。

 ただし、何にでも便乗するのではなく自分がいいと思ったものにする。
表面的な大きな流れを見つつも、深海にもぐるように自分にしかできない表現を模索しながら発信していくことが大事だと思います。

 とにかく「これいいかも!?」と思いついたことはすぐにやってみることが一番だと思います。思いっきりすべってしまうこともありますが、それはそれで学びにもなるしネタにもなるし、それらの経験はすべて次の作品に活かすことができます。

■SNSでは作家が試行錯誤する様子が見られる

 これまで自らの好奇心の赴くままに挑戦を続けた結果、作品がバズったり、その作品が書籍化するなどしているおおのさん。今後はこれまでやっていないことにも挑戦したいという。

 特にこれまで制作していない大きなオブジェや巨大壁画、100人入れる顔ハメ看板、電車のラッピング、公園の遊具といった大きな場所を使った仕事をしてみたいです。個展も久しくできていないので開きたい。

 いろいろ挑戦して、失敗して、学んで、成長していきたい。コロナで変わった世界では、これまで以上にどんどん新しい道を開拓していかなければいけないと思います。普通にしていても壁がどんどん迫ってくる(笑)。ならば余計に挑戦していくしかない。逆を言うと挑戦しやすい時代でもあると思います。

 作家が試行錯誤する過程を見られるのも、SNSで作品を発信するいいところかもしれません。辛いこと、楽しいこと、嬉しいことを共有できて、いかせる場所だと思います。今後も、自分のそんな七転八倒な姿を面白がってもらえたらなによりです。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/24(土) 10:21

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